戦闘機の輸出にどう出る「平和の党」 武器輸出の拡大に支持層は……
「『平和の党』が金看板」。そう掲げているのは、公明党のウェブサイトです。その公明党が、自民党から日英伊3カ国で共同開発する次期戦闘機の輸出を認めるように求められています。でも、支持層のことを考えると、簡単には受け入れられないようにみえます。
第2次安倍晋三政権が武器輸出をめぐり、原則禁止から、条件を満たせば輸出を認めるという方針転換をしたのは2014年4月のこと。「防衛装備移転三原則」を新たに閣議決定しました。
武器輸出を進めようとする動きは前年の13年から出ていたため、13~15年の3年間、毎年春の郵送調査(朝日新聞による)で武器輸出を拡大することの賛否を尋ねています。
質問は、当時の状況について「日本は武器の輸出を原則として禁じてきたが、最近は認めるケースが増えている」と前置きしたうえで聞いています。
この間、回答者全体でみると、「賛成」は14%→17%→14%と推移。圧倒的に多い「反対」は71%→77%→80%とだんだんと増えました。
♯
13年調査ではほかに、「憲法第9条があったから非核三原則や武器輸出の原則禁止の政策がつくられ、軍事の分野が強くなることへの歯止めになった」という意見をとり上げ、「その通りだと思うかどうか」質問しています。
結果は「その通りだ」が69%、「そうは思わない」が25%でした。「平和国家」という理念の具体的な表れの一つが、武器輸出の原則禁止だという見方がかなり支持されていたことが見て取れます。
いまの国会でも、次期戦闘機を共同開発する英国、イタリア以外の第三国に輸出できるようにすることについて質疑が交わされています。
岸田文雄首相は、輸出解禁について「日本にとって好ましい安全保障|環境《
》をつくるうえでも重要だ」と強調しています。それでも公明党側は「大きな方針転換」だとして、輸出の必要性を国民にわかりやすく説明するよう求めています。
公明党は1964年11月に結党し、今年で60年。自民党との連立もこの秋で「四半世紀」になります。そうした中、どこまで原点にこだわり続けることができるのか、輸出問題の決着の行方を注視したいと思います。 (2024年3月6日 朝日新聞 磯田和昭)
〈ことば〉
金看板…世間に対して堂々と誇る主義、主張。
閣議決定…内閣がその職務を行うために開く非公開の会議で決まること。
推移…時がたつにつれて物事の状態が変わっていくこと。
四半世紀…1世紀は100年。半世紀は50年。四半世紀は25年。
注視…注意して見ること。
1 2行目の「日英伊」とは、日本の他にどの国をさしますか。♯よりあとの
段落から探しなさい。
2 武器輸出を進めようとする動きはどのように進んできましたか。次の
「 」に適する言葉を入れなさい。
・日本の憲法に、武器は「作らず、持たず、持ち込まず」という原則があ
り、永く守られてきました。しかし2014年4月「 ① 」が閣議決定さ
れ、今回新たに日英伊3カ国で共同開発する「 ② 」の輸出を認めるこ とが求められています。
3 ♯には、次の文章が入ります。グラフを見て、( )に数字を入れなさい。
15年調査で「賛成」の割合を支持政党別に見ると、自民支持層でも( ① )%
とそれほど多いわけではありません。「反対」は( ② )%でした。自民と 連立を組んでいる公明の支持層は「賛成」が( ③ )%と少なく、「反対」が ( ④ )%に達していました。
4 公明党の「原点」とはなんですか。
*もう一度読んでみよう。
「『平和の党』が金看板」。そう掲げているのは、公明党のウェブサイトです。その公明党が、自民党から日英伊3カ国で共同開発する次期戦闘機の輸出を認めるように求められています。でも、支持層のことを考えると、簡単には受け入れられないようにみえます。
第2次安倍晋三政権が武器輸出をめぐり、原則禁止から、条件を満たせば輸出を認めるという方針転換をしたのは2014年4月のこと。「防衛装備移転三原則」を新たに閣議決定しました。
武器輸出を進めようとする動きは前年の13年から出ていたため、13~15年の3年間、毎年春の郵送調査(朝日新聞による)で武器輸出を拡大することの賛否を尋ねています。
質問は、当時の状況について「日本は武器の輸出を原則として禁じてきたが、最近は認めるケースが増えている」と前置きしたうえで聞いています。
この間、回答者全体でみると、「賛成」は14%→17%→14%と推移。圧倒的に多い「反対」は71%→77%→80%とだんだんと増えました。
♯
13年調査ではほかに、「憲法第9条があったから非核三原則や武器輸出の原則禁止の政策がつくられ、軍事の分野が強くなることへの歯止めになった」という意見をとり上げ、「その通りだと思うかどうか」質問しています。
結果は「その通りだ」が69%、「そうは思わない」が25%でした。「平和国家」という理念の具体的な表れの一つが、武器輸出の原則禁止だという見方がかなり支持されていたことが見て取れます。
いまの国会でも、次期戦闘機を共同開発する英国、イタリア以外の第三国に輸出できるようにすることについて質疑が交わされています。
岸田文雄首相は、輸出解禁について「日本にとって好ましい安全保障環境をつくるうえでも重要だ」と強調しています。それでも公明党側は「大きな方針転換」だとして、輸出の必要性を国民にわかりやすく説明するよう求めています。
公明党は1964年11月に結党し、今年で60年。自民党との連立もこの秋で「四半世紀」になります。そうした中、どこまで原点にこだわり続けることができるのか、輸出問題の決着の行方を注視したいと思います。
〈こたえ〉
1 英はイギリス(英国)、伊はイタリア
2 ① 21 ② 72 ③ 6 ④ 89
3 ① 防衛装備移転三原則 ② 次期戦闘機
*防衛装備移転とは武器を輸出すること。
4 平和の党であること。
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