韓国で高まるJ-POP熱 チケットは即完売、禁じられた音楽はいま
「♪知らず知らず隠してた 本当の声を響かせてよほら」。昨年末の紅白歌合戦にも出場したYOASOBIがソウルで昨年12月、2日間にわたって開いた初の韓国公演。4千人超のファンらで満席となった会場に、ヒット曲「群青」を大合唱する若者らの声が響き渡った。 当初コンサートは1回だけの予定だったが、チケットは発売開始後わずか1分で完売。追加公演が決まったが、そのチケットも1分で売り切れた。 4年前からファンだという大学生の権寧炫(クォンヨンヒョン)さん(23)は普段からJ―POPをよく聴くといい、YOASOBIは「ユーチューブで偶然見つけた」。会社員の韓在弼(ハンジェピル)さん(25)は「以前は『日本の歌手の歌を聴いている』というと、マイナーで恥ずかしい雰囲気があってSNSに上げられなかったが、今はそんな雰囲気はなくなった」と話す。 (中略)
戦前や戦中の日本に植民地支配された時代に、日本語や日本文化の受け入れを強制された韓国。戦後長らく日本の音楽やドラマなどの大衆文化の流入は厳しく制限されてきた。だが1987年の民主化を経て、90年代には日本文化に触れる若者が増加。特に韓国でヒットしたのがロックバンドの「X JAPAN」だった。海賊版のテープが出回り、韓国語講師の女性(43)は「隠れてX JAPANやSMAPの音楽を聴いていた」と当時を振り返る。 日本の大衆文化の開放については国民の意見が二分されていたが、98年に当時の金大中(キムデジュン)大統領が「日韓共同宣言」で日本の大衆文化の段階的な開放を宣言。2004年に日本語の音楽CDが全面開放された。 「日韓ポピュラー音楽史」などの著書のある北海道大学大学院の金成玟(キムソンミン)教授は、「市民レベルではすでに文化交流が進んでおり、90年代には文化を禁止する正当性がなくなっていた。大衆が主導した文化開放だった」と指摘する。
韓国の若者がJ―POPを支持する理由について、金さんは、90年代に日本の音楽に親しんだ世代を親に持ち、「罪悪感」がない点を指摘する。またSNSの普及に加えて、J―POPそのものの魅力や独自性も大きいという。アイドルグループ中心のK―POPと違い、「例えばアコースティックギター1本で勝負するあいみょんなどは、今の韓国にはない新鮮で魅力的な音楽に映っている」と話す。
(2024年2月14日朝日新聞ソウル=太田成美 )
〈ことば〉紅白歌合戦…毎年年末にNHKテレビで放送する音楽番組。
響く…音があたりに伝わって広がる。
植民地…ある国の政治的、軍事的侵略によって支配され、従属さ
せられた地域。
強制…権力、威力、腕力などによって当人の意志に関わりなく、
無理に何かをさせること。
海賊版…著作権者の許可を得ないで複製、販売された書籍、映
画、音楽など。
段階的な解放…時期を置いて少しずつ制限をなくしていくこと。
正当…正しいこと。
支持…ある意見やものごとのあり方などなどに賛成して、そのあ
と押しをすること。
1 韓国人が日本の音楽や文化に触れるきっかけになったのはいつ、どんなこ
とがあったからですか。
2 最後の段落で「罪悪感」という言葉が出ました。当時の韓国人が「罪悪
感」を持ったのはなぜですか。
3 今の韓国の若者がJ-POPを支持する理由について、金成玟(キムソンミン)
教授は3つあげています。それはなんですか。
4「響き渡る」の「渡る」にはいろいろな意味があります。次の文はどの意
味で使われていますか。あとの選択肢から選びなさい。また、「響き渡
る」はどの意味ですか。
① 昔からの田畑が人手に渡ることになった。
② 会社の運営について、5時間にわたって話し合った。
③ 踏切を渡ったら右に曲がってください。
④ ドーバー海峡を泳いで渡る計画を立てた。
⑤ 彼の功績は多くの人に知れ渡っている。
[選択肢]a. 間を隔てているものを越えて向こう側に行く。
b. 広い範囲のすみずみまで及ぶ
c. ものや権利が他人のものになる。
d. 橋、通路などを通って向こう側に行く。
e. 時間、期間がずっと続く
*もう一度読んでみよう。
「♪知らず知らず隠してた 本当の声を響かせてよほら」。昨年末の紅白歌合戦にも出場したYOASOBIがソウルで昨年12月、2日間にわたって開いた初の韓国公演。4千人超のファンらで満席となった会場に、ヒット曲「群青」を大合唱する若者らの声が響き渡った。
当初コンサートは1回だけの予定だったが、チケットは発売開始後わずか1分で完売。追加公演が決まったが、そのチケットも1分で売り切れた。
4年前からファンだという大学生の権寧炫(クォンヨンヒョン)さん(23)は普段からJ―POPをよく聴くといい、YOASOBIは「ユーチューブで偶然見つけた」。会社員の韓在弼(ハンジェピル)さん(25)は「以前は『日本の歌手の歌を聴いている』というと、マイナーで恥ずかしい雰囲気があってSNSに上げられなかったが、今はそんな雰囲気はなくなった」と話す。
(中略)
戦前や戦中の日本に植民地支配された時代に、日本語や日本文化の受け入れを強制された韓国。戦後長らく日本の音楽やドラマなどの大衆文化の流入は厳しく制限されてきた。だが1987年の民主化を経て、90年代には日本文化に触れる若者が増加。特に韓国でヒットしたのがロックバンドの「X JAPAN」だった。海賊版のテープが出回り、韓国語講師の女性(43)は「隠れてX JAPANやSMAPの音楽を聴いていた」と当時を振り返る。 日本の大衆文化の開放については国民の意見が二分されていたが、98年に当時の金大中(キムデジュン)大統領が「日韓共同宣言」で日本の大衆文化の段階的な開放を宣言。2004年に日本語の音楽CDが全面開放された。 「日韓ポピュラー音楽史」などの著書のある北海道大学大学院の金成玟(キムソンミン)教授は、「市民レベルではすでに文化交流が進んでおり、90年代には文化を禁止する正当性がなくなっていた。大衆が主導した文化開放だった」と指摘する。
韓国の若者がJ―POPを支持する理由について、金さんは、90年代に日本の音楽に親しんだ世代を親に持ち、「罪悪感」がない点を指摘する。またSNSの普及に加えて、J―POPそのものの魅力や独自性も大きいという。アイドルグループ中心のK―POPと違い、「例えばアコースティックギター1本で勝負するあいみょんなどは、今の韓国にはない新鮮で魅力的な音楽に映っている」と話す。
〈こたえ〉
1 1987年の民主化
2 戦前や戦中の日本に植民地支配された時代に、日本語や日本文化の受け
入れを強制された歴史があるから。
3 ①90年代に日本の音楽に親しんだ世代を親に持ち、「罪悪感」がないか
ら。
②SNSの普及。
③J―POPそのものに魅力や独自性があるから。
4 ① c ② e ③ d ④ a ⑤ b 響き渡る… b
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