仰天!「おつり」を知らない子ども急増のリアル スマホ社会は「慣れ親しんだ言葉」まで駆逐する
スマホ社会の現代日本。
若者たちは黙々と動画やゲームの画面と向かい合い、用事は絵文字を含む超短文メールを素早く打つばかり。
時間を割いて他人と会って話すのは「タイパが悪い」とすら言う彼らと、「生きた」日本語の距離がいま、信じられないくらい離れたものになっています。
言い換えるならそれは、年配者との間の大きなコミュニケーションの溝。
「日本人なのに何故か日本語が通じない」という笑えない状況は、もはや見過ごせませんが、「その日本人同士と思うところが盲点」と、話すのは、言語学者の山口謠司氏。
『じつは伝わっていない日本語大図鑑』と題された一冊には、日本人ならハッとする指摘が満載。
その中から、会話が通じない「落とし穴」になりがちな日本語の興味深い例を紹介してみましょう。
いま、「おつり」を知らない子どもたちが大勢いるそうです。
「おつり」という概念がわからないのはもちろん、現金そのものも見たことがない子さえいる、というのです。
まさかと思う方も多いかもしれませんが、しばらく前に、朝のNHKテレビ『あさイチ』でも、おつりを知らない子どもたちの急増問題を取り上げて、現状を伝えていました。
たとえば、ある小学校の2年生の教室。
先生が「100円で48円のガムと32円のアメを買いました。おつりはいくらかな?」と尋ねると、生徒たちは皆キョトンとして、「先生、おつりって何?」と口々に聞き返してくる――。
また、小銭硬貨を「何だ、こんなもの」とばかり、近所の川にジャラジャラと投げ捨てた男の子とか、持たされているカードを駅の改札で「ピッ」とすれば電車はタダで乗れると思っている女の子の例など、次々と飛び出してくる母親たちの証言――。
スマホやタブレットの普及により世の中全体でキャッシュレス化が進み、そもそもそうした子どもたちの若い親世代が、カード決済やコード決済を駆使し、電子マネーを当たり前のように使用しているため、買い物でも、「『おつり』を数えて出す」という行為をわが子に見せる場面も少ないのでしょう。
大半の日本人が、ほぼ一人一台、スマホなどのデバイス機器を携えるようになっている現代日本。そうした背景が、「おつり」というごく近しい言葉を消滅危機に向かわせているのは大変興味深いことです。
と同時に、「おつり」のSOSにとどまらず、社会や家庭に本来あった豊かな直接コミュニケーションの機会を、恐ろしいほどのスピードで減少させている「スマホ社会」が日本語に与える影響は、これからもっともっと大きく深くなっていくのではないかという懸念を持たずにはいられません。
(2024.1.13東洋経済オンライン山口 謠司 より抜粋)
〈ことば〉黙々と…黙ってなにかをし続けるようす。
溝…①水を流すために掘ったところ。
②人と人間に生まれるへだたり。
盲点…①視神経が網膜を貫いている部分。
②気がつかないでうっかり見落としてしまう部分。
指摘…それと示すこと。
満載…①車や船に荷物をたくさん載せること。
②新聞、雑誌などに、ある記事をたくさん載せること。
概念…ことばの意味、内容。
キョトンと…目を見開いてぼんやりしているようす。
証言…あることがらを証明するために体験した事実を話すこと。
決済…代金、証券、商品などを受け渡して、売買取引を終えるこ
と。
駆使する…思いのままに使いこなすこと。
1筆者は「スマホ社会」と「『生きた』日本語」の距離が離れ
ている例をいくつか上げています。次の①~④はどちらの例になります
か。
① 用があるときは絵文字を含む超短文メールを打つ。
② 時間を割いて人に会い、話す。
③ 買い物に行ったとき、おつりを数えて出す。
④ 小銭硬貨の価値がわからないため、近所の川にジャラジャラと投げ捨て
た。
⑤ カードを駅の改札で「ピッ」とすれば電車はタダで乗れると思ってい
る。
2「時間」を使った慣用句です。次の( )に入るものを、選択肢から選びな
さい。ただし、動詞の形が変るものもあります。
① わざわざ忙しい時間を( )訪ねたのに、教授は学会でいないだなん
て。
② プレゼンの時間が( )いるというのに、パソコンがフリーズしてし
まった。
③ 前の奏者が長引いて時間が( )ので、私たちの演奏の開始時間が遅
れることになった。
④ 機械のトラブルで時間を( )ため、次回の納品は未定です。
⑤ 忘れ物をしたが、取りに帰る時間が( )。
選択肢: 要する、迫る、押す、割く、ない
3 短縮形
①タイパ: 「タイムパフォーマンス」の略で、かけた時間に対して得られた
効果や満足感を指します。仕事やプロジェクトにおいて、時間対効
果を評価する際に使われます。
②コスパ: 「コストパフォーマンス」の略で、投資したコスト(費用)に対して
得られた利益や効果を意味します。商品やサービスの選択時に、コ
ストと利益のバランスを考慮する際に使われます。
これらの短縮語は、ビジネスや日常生活で頻繁に使われており、効率的な
コミュニケーションに役立ちます。 (Microsoft Bing)
2の②「プレゼン」はプレゼンテーションで、企画や意図をわかりやすく
説明することです。パソコンはパーソナルコンピューター。言うまでもあ
りませんね。
*もう一度読んでみよう。
スマホ社会の現代日本。
若者たちは黙々と動画やゲームの画面と向かい合い、用事は絵文字を含む超短文メールを素早く打つばかり。
時間を割いて他人と会って話すのは「タイパが悪い」とすら言う彼らと、「生きた」日本語の距離がいま、信じられないくらい離れたものになっています。
言い換えるならそれは、年配者との間の大きなコミュニケーションの溝。
「日本人なのに何故か日本語が通じない」という笑えない状況は、もはや見過ごせませんが、「その日本人同士と思うところが盲点」と、話すのは、言語学者の山口謠司氏。
『じつは伝わっていない日本語大図鑑』と題された一冊には、日本人ならハッとする指摘が満載。
その中から、会話が通じない「落とし穴」になりがちな日本語の興味深い例を紹介してみましょう。
いま、「おつり」を知らない子どもたちが大勢いるそうです。
「おつり」という概念がわからないのはもちろん、現金そのものも見たことがない子さえいる、というのです。
まさかと思う方も多いかもしれませんが、しばらく前に、朝のNHKテレビ『あさイチ』でも、おつりを知らない子どもたちの急増問題を取り上げて、現状を伝えていました。
たとえば、ある小学校の2年生の教室。
先生が「100円で48円のガムと32円のアメを買いました。おつりはいくらかな?」と尋ねると、生徒たちは皆キョトンとして、「先生、おつりって何?」と口々に聞き返してくる――。
また、小銭硬貨を「何だ、こんなもの」とばかり、近所の川にジャラジャラと投げ捨てた男の子とか、持たされているカードを駅の改札で「ピッ」とすれば電車はタダで乗れると思っている女の子の例など、次々と飛び出してくる母親たちの証言――。
スマホやタブレットの普及により世の中全体でキャッシュレス化が進み、そもそもそうした子どもたちの若い親世代が、カード決済やコード決済を駆使し、電子マネーを当たり前のように使用しているため、買い物でも、「『おつり』を数えて出す」という行為をわが子に見せる場面も少ないのでしょう。
大半の日本人が、ほぼ一人一台、スマホなどのデバイス機器を携えるようになっている現代日本。そうした背景が、「おつり」というごく近しい言葉を消滅危機に向かわせているのは大変興味深いことです。
と同時に、「おつり」のSOSにとどまらず、社会や家庭に本来あった豊かな直接コミュニケーションの機会を、恐ろしいほどのスピードで減少させている「スマホ社会」が日本語に与える影響は、これからもっともっと大きく深くなっていくのではないかという懸念を持たずにはいられません。
〈こたえ〉
1 スマホ社会…①、④、⑤
「生きた」日本語…②、③
2 ① 割いて ② 迫って ③ 押した ④ 要する ⑤ ない
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