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【能登半島地震】2次避難で2万5千人分のホテルなど確保 北陸や三大都市圏で

奥能登おくのとみちひらいた麒山瑞麟きざんずいりん和尚おしょうらぬ人はおそらく、地元じもとにはいまい。
石川県輪島市曽々木いしかわけんわじましそそぎ珠洲市真浦すずしまうらあいだ海沿うみぞいには通行つうこう難所なんしょがあり「能登のとおやしらず」とばれた。むかし人々ひとびとなみせる絶壁ぜっぺき岩伝いわづたいに、うみにしてカニのような横歩よこあるきですすんだが、いのちとす人もえなかったという。
 江戸時代えどじだいちかくのてらの8代住職だいじゅうしょくである麒山和尚がみち建設けんせつ決意けついし、まずは托鉢たくはつ行脚あんぎゃ資金しきんつのった。10ねん工事こうじて、道は完成かんせいした。いまでも功績こうせきをたたえるまつりがひらかれている。(藤平朝雄、渋谷利雄著『能登燦々百景百話』)
 かつての麒山和尚きざんおしょうのように、道の開通かいつういの日々ひびが続く。能登半島地震のとはんとうじしんによる道路どうろ寸断すんだん能登各地のとかくちのこり、まだ2千人以上せんにんいじょう孤立状態こりつじょうたいにあるとく。
 断水だんすい停電ていでんがなかなか復旧ふっきゅうしないのは道路寸断どうろすんだんのせいでもあろう。被災地ひさいち施設しせつらしてきたお年寄としより30人が昨日きのう自衛隊機じえいたいき愛知ああいち避難ひなんした。病院びょういんでの診察しんさつ施設しせつはい方向ほうこうという。環境かんきょうきびしい能登のと心身しんしん疲弊ひへいさせいたるのをふせぐため、高齢者こうれいしゃらに安全あんぜんうつってもらう。これから本格化ほんかくかするようだ。
 さきほんによると、麒山和尚は道の建設けんせつがったさい、ひたすらすわるのもぜんなら、人々の救済きゅうさいささぐのも禅とかんがえたという。能登のとあせながすのも支援しえんなら、はなれたところうのも支援。へいたんでないみちともあゆみたい。               (2024年1月12日中日春秋)
   
 


〈ことば〉和尚…てら住職じゅうしょくそう
     絶壁…切り立ったがけ
     托鉢行脚…僧がおきょうとなえながら家々いえいえまえで米やお金を
          もらい、諸国しょこくたびすること。
     資金を募る…ひろびかけて、ある目的もくてきのために金銭きんせんあつめるこ
           と。
     功績…あることのためにげた、すぐれたはたらき。
     経る…直接ちょくせつではなく、ある過程かてい段階だんかいとおる。
     寸断…長くつづいているものをこまかく切ること。ずたずたに切るこ
        と。
     疲弊…①心身しんしんつかれてよわること。 ②経済けいざいなどが悪化あっかしてよわるこ
        と。
     本格化…本来ほんらい格式かくしき様式ようしきそなえるようになること。
     ひたすら…そのことだけに集中しゅうちゅうする様子ようす
 


1 麒山瑞麟和尚は、何をした人ですか。
2禅について、麒山瑞麟和尚はどう考えていましたか。
3「麒山瑞麟和尚を~知らぬ人は恐らく、地元にはいまい。」の「ぬ」「ま
  い」は「ない」と同じく否定の助動詞です。
  1) ない      例)明日は会社へ行かない
  2) ず/ぬ/ん/ね   例)なかなか眠れにいたが、知ら間に寝入って
             いた。
            知らせを聞いて、行かばなら()と思った。
  3) まい(否定の推量)…そうしないだろうという判断を表す。
           例)あの約束、彼女は忘れたわけではあるまい
  4) まい(否定の意志)…そうしないつもりだという意志を表す。
           例)同じ失敗は二度と繰り返すまい
* 冒頭の「麒山瑞麟和尚を~いまい。」の「まい」は、上の3)、4)のどち
 らですか。また、この文をわかりやすく書き直しなさい。



*もう一度読んでみよう。

奥能登に道を開いた麒山瑞麟(きざんずいりん)和尚を知らぬ人は恐らく、地元にはいまい。
石川県輪島市曽々木と珠洲市真浦の間の海沿いには通行の難所があり「能登親しらず」と呼ばれた。昔、人々は波が押し寄せる絶壁を岩伝いに、海を背にしてカニのような横歩きで進んだが、命を落とす人も絶えなかったという。
 江戸時代、近くの寺の8代住職である麒山和尚が道の建設を決意し、まずは托鉢(たくはつ)行脚で資金を募った。10年を超す工事を経て、道は完成した。今でも功績をたたえる祭りが開かれている。(藤平朝雄、渋谷利雄著『能登燦々百景百話』)
 かつての麒山和尚のように、道の開通を祈る日々が続く。能登半島地震による道路の寸断は能登各地に残り、まだ2千人以上が孤立状態にあると聞く。
 断水、停電がなかなか復旧しないのは道路寸断のせいでもあろう。被災地の施設で暮らしてきたお年寄り30人が昨日、自衛隊機で愛知に避難した。病院での診察を経て施設に入る方向という。環境の厳しい能登で心身を疲弊させ死に至るのを防ぐため、高齢者らに安全な地に移ってもらう。これから本格化するようだ。
 先の本によると、麒山和尚は道の建設に立ち上がった際、ひたすら座るのも禅なら、人々の救済に身を捧(ささ)ぐのも禅と考えたという。能登で汗を流すのも支援なら、離れた所で寄り添うのも支援。平たんでない道は共に歩みたい。    
 
 


〈こたえ〉
1奥能登に、(托鉢行脚で資金を募り、)10年を超す工事を経て道を作った。
2 ひたすら座るのも禅なら、人々の救済に身を捧(ささ)ぐのも禅
3 3)まい(否定の推量) 
奥能登に道を開いた麒山瑞麟和尚を知らない人は恐らく、地元にはいないだろう。



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