アイデア出し・企画書・企画会議[まとめ前編]〜出版までの行程を見てみよう(9)
崖っぷち作家のニジマルカです。
「出版までの行程を見る」9回目です。
今までを振り返ってまとめていきます。
8回目はこちら。↓
出版までの行程
出版までの行程はこんな感じです。↓
1.アイデア出し
2.企画書づくり
3.企画会議
4.執筆
5.推敲・改稿
6.校正
7.イラスト・デザイン
8.印刷
9.告知・宣伝
10.発売
今回は1〜3、まとめ前編です。
1.アイデア出し
受賞作を出したら、次からは、編集部に企画を出していくことになります。
企画が通らない限り、次の作品を書くことはできません。
だいたいの企画づくりは、数行のアイデアを担当編集者(担当さん)に投げるところから始まります。
数行のアイデアとは「〇〇が△△して□□する話」といった簡単なものです。
ですが、このアイデア段階で却下される場合も多いです。
担当さんを4層程度のフィルターだと捉えるとわかりやすいでしょう。
どこかのフィルターにひっかかれば、企画書の段階まで進めないイメージです。
フィルターはこんな感じです。↓
1.新しさやウリがあるか
2.出版社やレーベルに合っているか
3.市場での実績があるか
4.担当さんの好き嫌い
それぞれ簡単に見ていきましょう。
【フィルター1:新しさやウリがあるか】
企画には、基本的に新規性が求められます。
今までの類似作とは違う、新しいワード、フレーズ、センテンスなどがあった方がいいです。
新しいアイテムや要素名、やり方などでもいいですね。
実際のところ、新しすぎたり、新規性でスベると、古臭い作品より売れないのですが、編集部は常に新しい領域を探しています。
ですので、本当に新しくなくてもいいですが、新しそうに見える工夫は必要です。
続いてウリですが、ウリとは読者がその本を手に取る理由です。
何を期待してこの本を買うのか、一点に絞って打ち出しましょう。
「主人公とイケメンの恋愛」なのか、「主人公の派手な立ち回り」なのか、「主人公が成り上がっていく様子」なのか、はっきりさせます。
おいしいところをたくさん入れるより、一点突破を考えた方がいいです。
【フィルター2:出版社やレーベルに合っているか】
出版社やレーベルには打ち出しているイメージがあります。
その出版社らしさ、レーベルらしさのことです。
レーベルの場合は、レーベルカラーとも呼ばれます。
編集部は出す本をセレクトして、レーベルカラーを守っています。
ですから、たとえば「高校生の恋愛」がメインのレーベルなら、「ドロドロの不倫」みたいなアイデアは、いくら面白そうでも却下されます。
多少はレーベルカラーと違うアイデアを出してもいいですし、そういう戦略が上手くいく場合もありますが、あまりにハズレていると通してくれないでしょう。
【フィルター3:市場での実績があるか】
実績とは、同じような作品が過去に売れたかどうかです。
ジャンルによっては、ほぼ売れない地雷のようなテーマがあったりします。
誰が挑戦しても、だいたい爆死するのですね。
そういった地雷を踏んでいるアイデアはだいたい通りません。
何が地雷かは、毎月出る本の売上を追いかけていけば、自然にわかるようになります。
(ほぼ売れないので)
【フィルター4:担当さんの好き嫌い】
担当さんも人間なので、多少の好き嫌いはあります。
ですが、ほとんどの場合、好き嫌いで却下されることはない印象です。
却下されるのは、だいたい1の新規性フィルターに引っかかっているからです。
自分では「新しい」と思っても、編集者から見ればズレているのですね。
編集者の方がズレていることもあり得ますが、基本的には編集者の方が正しいと考えた方がいいです。
ですので却下されたら、素直に考え直しましょう。
2.企画書づくり
アイデアがOKなら、企画書の形に落とし込んでいきます。
企画書に盛り込む内容は、だいたいこんな感じでしょう。↓
1.タイトル
2.あらすじ
3.ウリ
4.キャラ表
5.プロット
簡単に見ていきます。
【タイトル】
企画書に書くタイトルは、もちろん仮タイトルですが、できれば最初から市場で勝負できるタイトルを考えた方がいいです。
市場で勝負できるタイトルというのは、
読者の欲望を新しい形で満足させてくれそうなタイトル
です。
読者は本を読んで、自分の欲望を満たそうとしていますが、その欲望を今までなかった新しい方法で満たしてくれることを望んでいます。
ですから、それを端的に表現したタイトルが、良いタイトルだと言えるでしょう。
【あらすじ】
企画書の段階では、ざっくりとどんな話か伝わればいいです。
ですが、あらすじがカバーに印刷されるような本の場合、あらすじは売上に直接影響する最重要項目となります。
市場向けのあらすじは、話の内容を要約したものではありません。
「この本を買うとどう得するのか」を読者に示すためのものです。
プロの作品でも、そこを間違えているあらすじを見かけることがあります。
あまりにももったいないことです。
あらすじの良し悪しで、下手すると何千部の違いが出ます。
【ウリ】
その作品の新規性やウリを、箇条書きなどで書いておきます。
「この本はこういう理由で売れます。だから出した方がいいですよ」と伝えるのです。
もちろん編集者はプロですから、それを頭から信じたりはしません。
ですが、まったく勝算がないと思われない方がいいでしょう。
【キャラ表】
登場人物は一覧にしておきます。
年齢や境遇などを書いておけばいいです。
一発で性格がわかるようなセリフを書いておくのもいいですね。
【プロット】
私がいるエンタメジャンルでは、長編はだいたい4〜5章構成、好みでプロローグ、エピローグがつく感じです。
プロットは、章ごとに何が起こるかわかればいいです。
あまり詳しく書かないのがコツです。
詳しく書きすぎると、編集部の人たちにツッコむ材料を多く与えることになります。
分量はまちまちでしょうが、A4用紙1〜2枚で収められるといいですね。
3.企画会議
企画書ができて、担当さんからOKが出れば、企画会議にかけてもらいます。
会議の結果は担当さんが電話やメールで知らせてくれます。
通れば、執筆へ。
通らなければ、
1.直して再提出
2.今回は諦める
のどちらかになります。
担当さんが、他の編集者の反応などを見て、どちらにした方がいいか教えてくれます。
素直に担当さんの判断に従いましょう。
諦めるなら最初のアイデア出しに戻ります。
おわりに
出版までの行程を見る9回目「まとめ前編」でした。
次回は「まとめ中編」です。↓
それではまたくまー。
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