お勉強314:ICIで進行してもあきらめてはいけない、我々にはSABR(剣)がある!

非小細胞肺がん(NSCLC)・メラノーマに対して
PD-1抗体(ニボかペンブロ)が効かなくなった症例に
効かなくなった部位にSABRをしてその効果を見た報告。

筆者たちは前提条件として
・ICIはよく効くが、耐性化のため 効かなくなる人の方が多い
・免疫療法の併用(イピニボとか)や
 ケモとの併用が模索されているが、副作用は増える
・SABRとICIの相乗作用の研究が進んでいる
・SABRとICIの併用でアブスコパル反応(AR:abscopal response)
 が報告されている
・SBRTは副作用が少ない
・SBRTがオリゴプログレッションに有効という報告
 が相次いでいる。SABRで治療変更せず
 そのまま行ける患者もいる。
・TKIやケモでのSABR併用の報告は結構あるが、ICIの報告は少ない。

→ということでICI(単独)で進行した人にSABRしてみました。

研究方法としては2017年9月から2020年8月までに
NSCLCやメラノーマで治療していた18歳以上の患者で
5個までの進行が確認されていたが、
メリットがあると考えてICIが継続されていた患者
(以前の治療ライン数は考慮せず)

PS3以上、
シュード/ハイパープログレッション疑い
重篤な自己免疫性疾患
SABRに影響すると思われるRT歴

は除外。

SABRは1~5の対象病変に行い
2個以上の照射対象外のARを判定する部位があれば決めておく。
(進行していない部位の病変を評価する、という意味合いだと
 個人的には読み取ったが、違うかもしれない)
照射対象病変はすべて進行した病変
対象臓器としては
・症状があるところ
・臓器、リンパ節、骨病変が望ましいとされた

照射はICIと並行して行い、VMATで7Gy×5Fr
最低1Frごとに1.5日は明ける変則的なスケジュールで行った。
脳転移や再照射、耐用線量の問題があるときは
8Gy×3Frを用いた。
65ccより大きい場合は部分照射を用いた。

ICI(ニボかペンブロ)はSABR中も使用し
さらなる進行、許容できない毒性、
そのほか医学的な理由がない限り続行
ただし、またオリゴプログレッションで
同様のストラテジーが取れる場合は3回まではOKとし
この進行はPFSにはカウントしなかった。

画像評価はSABR後2か月、その後は3ヶ月おきに行った。

腫瘍反応はCR/PRを有効と判断(すべての病変部で判断)
ARは2カ月後に30%以上の縮小が治療前に決められた
照射野外の部位に起こった場合ARありと判断。
PFS/OS/局所制御、次治療までの期間も評価

以下の点について効果を層別化して検討
・組織型(肺扁平上皮癌・肺非扁平上皮癌・メラノーマ)
・転移が5個以上か、そうでないか
・PD-L1の発現率(50%以上、1~49%、1%以下)
・前治療数
・照射部位数

解析患者は50人
うち32が男性、32人が5か所以上の転移
前治療数中央値は2 ペンブロが27人、ニボが23人
ICI投与中央回数は6サイクル
25人がICIprimary refractory
主なSABR部位はリンパ節と肺
サイズの中央値は2.5㎝ 
非照射部位のサイズ中央値は1.9㎝
31人は結局1回しかSABRの治療を受けなかった。
(逆に言うと、19人複数回受けている)

結果として
観察期間中央値32.8ヶ月で
15人CR 12人PR 5人SD 残りが進行
ARは40人で評価された。
うち65%で二か月後の評価としてARが確認された
(要するに30%以上縮小した)
照射された部位の局所コントロールは84% うち54%がCR

次の治療までの中央期間は13ヶ月
(要するにICI進行から中央値1年は引っ張れる)
16人のみ新しい全身治療が必要だった

※見れる方はスイマーズプロットが図として
 載っているので必見です。効いている人は本当に効いている!

最終フォローアップ時で4人の患者がICI完遂し
治療無しで病気が制御されていた。15人はICI継続中

PFS中央値は14.2ヶ月2年PFSは35%
(二年ぐらいでプラトー気味)
ARが起こった患者のPFS中央値はは21.2ヶ月で
起こらなかった人はたった3ヶ月(優位差有)

「SABRしてからの」OS中央値は37.4ヶ月で2年OSは60%

※ICIで進行した後としては非常にいい生存曲線 

病期が進行しやすい要素としては
primary refractory、ARがないこと
死亡のリスクが高いのは(背景因子もあると思うが)
扁平上皮癌、男性、G2以上の毒性、転移が多いこと

副作用として多いのは疲労
G3以上の副作用は3人に見られ
1人は腎炎、2人はトランスアミナーゼ上昇で
を中断する必要があった
(照射野外臓器なのでICIによるものと筆者らは述べている)
治療関連死は無し

既報のPEMBRO-RTに比べ
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/fullarticle/2738064
・転移が多い
・治療ライン数が多い
・ICI不応になった群の症例
だったにもかかわらずPFS/OSのSABRからの中央値が
14.2/37.4ヶ月、というのは非常にpromissingと述べている

※個人的にも極めて同意。しかも転移すべてではなく
 進行した部位しかあてていない…

今後の課題として
Fr/dose、ICIをSABRとコンカレントにするのか
を上げている。

リミテーションとして
・5個まで、といっているがほとんど1か所の進行のみ
・セレクションバイアス
・ペンブロとニボ両方使っている
・組織型がそろっていない
・iRECISTではなくRECISTを使っている
・ARの定義自体決まったものがないので、
 我々の定義を他の試験と比べることができない
・治療中の腫瘍・血液サンプルがない
・ORRは全病変で定義してARは最大2病変、というあいまいさ


結構衝撃的な結果。

ただし、そもそもICIが良く効くNSCLCやメラノーマが
対象という前提をよく覚えておく必要がある。

これからICIもTKIもオリゴプログレッションにSABR
というのは標準治療になってくると私は予言します。

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