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雨上がり  ニケと歩けば

明け方の強風はすさまじいものでした。
とぐろを巻いて暴れている生き物みたいでどこかで何かが壊れる音、台風の時のような木々のざわめきは、最近では珍しい様相でした。

ニケはピンと耳を立てて何の音だろうと一生懸命探しています。
ほんの数分の事でしたが「これで春が近づいた!」と妙に納得して明るくなるのを待ちました。

「空はまだまだ灰色で、これからもあの強風が生まれそうな空気の湿りもあり、散歩は少々ためらいましたが、ニケのその気!に負けて、外に出ました。

山は静かでいつもの散歩道にはだれもいません。
鳥も町猫も、どこかで身を隠しているのでしょう。

しばらくすると箒と塵取りを持ったご婦人三人が飛ばされた葉っぱを丁寧に掃きだしました。

それが習慣と言えばそうですが、毎日毎日同じようなことをするのに疑いなしのような様子を、ボーっと見ていると、ニケが草むらから、こちらを見ています。

生きている限りいろんなことに出くわして、日常は壊されてしまうのが常ですが、その状況に馴らされて、もとには戻らなくてもそれが普通になっていく。

同じように見えている、木々の様子ももちろん確かに違っています。
同じような一日を過ごせる日々があることは本当は当たり前ではなくて、
奇跡に近いことなのかもしれません。

公園から出る時、お気に入りの草むらをニケは必ず寄っていきます。
雨で湿った草の中、小さなスミレの花を見つけました。

きれいな紫の花は未だ、雨に濡れて頭を垂れていますが、きっとお昼には顔を上げることでしょう。

今日は短めの散歩でしたが、満足したのかストーブの前で暖を取っているニケもきっと昨日の彼女ではなさそうです。

今日もいい日にしましょう!



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