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木村花さんの事件から考えるべき2つの課題〜恋愛リアリティ番組とSNSの自由〜

大好きなプロレスラーがプロレスの事故等ではない形で22年の人生に幕を閉じました。原因は不明とされていますが、ネットでの誹謗中傷に心を痛め、自ら幕を閉じたと考えられています。

誹謗中傷をしたのはSNS上での匿名群衆、誹謗中傷のきっかけを生んだのが恋愛リアリティ番組「テラスハウス」であったとされています。

この痛ましい"事件"から日本・世界の産業界は、2つの大きな課題を改めて考えないといけないと思います。

1.世界を魅了する日本発の恋愛リアリティ番組の毒薬性

「テラスハウス」は恋愛リアリティ番組と呼ばれるジャンルの番組となります。僕と同世代以上は「ねるとん」や「あいのり」と同ジャンルと聞くとイメージが付きやすいかもしれません。

恋愛ドラマとドキュメンタリーの中間(ややドキュメンタリー寄り)くらいの設定で、若い男女の恋愛模様をリアルに描くものが「恋愛リアリティ」と呼ばれています。

実はアニメと並ぶ日本発で世界に人気のあるジャンル

日本では上述した「ねるとん」の頃(実はもっと前から)、恋愛リアリティ番組を制作してきた歴史があり、その最新版とも言えるテラスハウスは、日本発で最も世界で楽しまれているコンテンツとして成長していました。

世界的な人気があるため世界的なプラットフォームであるNetflixでは続編が作られ続け、木村花さんの訃報は英BBCのトップニュースになり、米国でもツイッタートレンドの1位となり続けました。

恋愛リアリティに頼る動画配信サービス

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しのぎを削る動画配信サービスたちにとって、今恋愛リアリティ番組は成長の原動力になっています。それぞれの動画配信サービスがオリジナルの番組や独占配信に力を入れています。

リアル故に個人批判・人格否定に繋がりやすい毒薬

恋愛リアリティの魅力は、演出だけでは表現しきれない出演者たちの素の部分が見え隠れするところです。

もちろん演出がゼロではないのですが、リアルさを重視しているため、視聴者はそのことを忘れ、自分の期待と逸れたりすると、出演者を個人攻撃をしたり、場合によっては人格否定に至るケースもあります。

Amazonのバチェラーでも出演者が大炎上する事件が起きましたが、今回はその炎上がきっかけで、木村花さんの精神をすり減らし、このような事件が起こったと考えられています。

日本の御家芸であっても見直しが急務

テラスハウスを始めとする恋愛リアリティ番組は日本発で世界を魅了してきたジャンルであることは間違いありません。

しかし、このような危険性を常にはらんでおり、そしてついに事が起きてしまいました。事が起きてからでは全てが遅いわけですが、今からでも出演者を守る方策や演出の見直し、そもそもジャンルとしての継続性についても議論されるべきではないでしょうか。

一時のビジネス的なインパクトはあるにせよ、長期での事業の継続性を考えると、もっと安全に楽しめるコンテンツを生み出すべきだと思います。

2.SNSでの誹謗中傷対策

SNSでの攻撃はあらゆるチャネルで。そして実母にも及んだ。

もし恋愛リアリティ番組がどれだけセンセーショナルでもSNSでの攻撃がなければこのような事件はなかったかもしれません。

ツイッターだけでなく、インスタグラム、YouTubeでも攻撃は続き、木村花さんの母(元レスラーであり発信を続けていた)のツイッターアカウントにも執拗に誹謗中傷を続けるユーザーも多くいました。

指殺人の規制はまだない

日本よりも先に韓国でも元KARAのク・ハラさんや、元f(x)のソルリさんが同様にSNSでの誹謗中傷で自死しており、自殺ではあるものの「指殺人」と呼ばれる社会問題となっています。

ついに日本でも最悪な形で「指殺人」が起きてしまったと言えます。

「指殺人」が行われてもツイッター、インスタグラム、Youtubeなどの海外プラットフォームは全く規制は行われておりません。

ツイッター社は、丁度先週リプライ機能に制限をつけるテストをはじめましたが、遅すぎたのかもしれません。

海外プラットフォーム規制は国が一枚岩に

恋愛リアリティ番組の規制よりも海外プラットフォーム規制は大きな難題です。巨大プラットフォームを動かすためには、まずは日本の政治・産業で一枚岩になって主張をする必要があります。

今まさに消費者庁でデジタル・プラットフォームでの問題点を洗い出している最中ですが、国内のプラットフォームへの働きかけだけでは不十分であり、今回の事件を強い教訓に世界に発信していく必要がありそうです。

https://www.caa.go.jp/notice/entry/019969/

最後に1ユーザー、1プロレスファンとして思うこと

実は昨年、プロレスとテラスハウスは日本が世界に誇る素晴らしいコンテンツとした連載に執筆協力をしていました。そのことは今も事実だと思います(執筆時、たまたま木村花さんがテラスハウスに出ることが既に内定していたそうです)。

しかし、今回テラスハウスとプロレスが結びついた先に最悪の事件が起きてしまいました。まだまだ日本のネット文化・規制が、そのようなコンテンツに対応できるレベルになかったせいかもしれません。

プロレス界の宝、日本コンテンツ界の宝、そして1人の命が奪われてしまったこの事件を悔やんでも悔やみきれません。

今はただ、この"事件"のこと、それが起きてしまった背景のことを広くの方に伝え残し、そしてSNSでの書き込みを自戒することが今できることだと思っています。

追記:サイバーエージェントが迅速な対応

5.27にサイバーエージェントがABEMAでの番組出演者向けに誹謗中傷などの被害に関する相談窓口を設置を発表しました。警察や弁護士事務所とも連携が可能ということです。素早い対応は、他プラットフォームも見習うべき点だと思います。





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