リモートワーク=社員がサボる、は思い込みである理由とは? イベントレポート「OFFICE PASSセミナー」

日本経済新聞社は全国200カ所以上の加盟シェアオフィス/コワーキングスペースの自由席が利用できるサービスOFFICE PASSをこの4月にスタートしました。
最近では働き方改革を推進している企業の方に利用を検討いただくことが増えてきましたが、リモートワークにこれからチャレンジする、という皆さんも多く、運用に関する疑問が多く寄せられてきました。
これらの疑問や不安を解消すべく、OFFICE PASSを使っていただいている企業や柔軟な働き方を社員に認めている企業の方の生の声を聞くセミナーを開催しよう、というのが今回の企画の発端です。

登壇者は、OFFICE PASSを部署で利用、自身は共働き子育てのため「定時で帰る」を実践しているオプトの近藤彰幸さん、WAA(Work from Anywhere and Anytime、働く場所と時間を選択できる制度)を導入しているユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの伊藤征慶さん、東京テレワーク推進センターの事業統括責任者としてさまざまな企業へのアドバイスも行っているパソナの湯田健一郎さん。モデレータは日経でOFFICE PASSを担当する小林がつとめました。

オプトの近藤彰幸さん。マーケティングマネジメント部で部門の仕組みづくりを担う。激務といわれる広告業界ながら、共働き子育てのため定時の18:00終業を実践中。

ユニリーバ・ジャパンの伊藤征慶さん。広報部門の責任者として、人事や総務と連携し、試行錯誤しながらWAAの構築と発展に奔走してきました。

パソナの湯田健一郎さん。自社のテレワーク推進サービス「LINK WORK事業」のシニアマネージャーを務めつつ、クラウドソーシング協会の事務局長、東京テレワーク推進センターの統括責任者、厚労省の委員など9枚の名刺でテレワーク&パラレルワークを実践中。


Q. なぜテレワークを導入したのですか

伊藤 ユニリーバではまず経営ビジョン「より生き生きと働き 健康でそれぞれのライフスタイルを継続して楽しみ 豊かな人生を送る」が策定され、そのビジョンを実現するための施策として、WAA立ち上がりました。そういう順番だったので、WAAは経営陣の強力なバックアップを受けながら、人事・広報・総務が連携をして構築を進めることができました。

近藤 私たちの仕事は顧客を訪問したり、場合によっては先方に座席をいただくなど、お客様先に密着して支援をするスタイルです。社員によっては1日に3社を渡り歩くメンバーもいます。そうすると会社の席より外のいろいろなところに拠点があったほうが業務にフィットすると考え、私のチームにOFFICE PASSを導入して、会社の外でも働ける環境を整えました。メンバーからはとても好評で、活用が進んでいます。
オプトでも「自分の未来と、個客の未来の、重なるところへ。」をビジョンに定めました。顧客のありたい未来の実現をお手伝いする際に、自分たちもありたい姿で仕事をするのはビジョンとも合致していると思っています。

Q. どこでも働けるとサボれる、という考えがありますが・・・

伊藤 WAAを使えば午前中だけ働き午後は休むといった働き方もできるし、ランチ休憩の時間も自由にとることができます。ただ、ユニリーバは成果主義をとっており、年末には年初に設定した業績目標を達成できたかできないかのシビアな評価が待っています。サボっていると大変なことになるのです。WAAを始めるときにはサボる社員が出てくるのではという懸念がなかったわけではありません。でも、そこは性善説に立ち、「心配を信頼に変えよう」と呼びかけ取り組んできました。

近藤 同じですね。弊社にはストレッチ目標を作る文化があり、高い目標を達成することで個人の評価は上がります。サボっていれば当然、パフォーマンスは上がらず評価は下がります。これが大きく効いています。また逆に働きすぎのリスクもあるので、週に1回は必ずコミュニケーションをとり、成果と時間のバランスが正常な範囲か、疲れが出ていないかなどを対面でチェックしています。

湯田 テレワーク推進センターにも「上司の目が届かないとサボるのでは」という上層部の懸念がありなかなか導入できない、といった悩みがたくさん寄せられています。本当にサボっているかどうかをチェックしたいなら、定期的にPCの画面キャプチャをとれるツールを使い2カ月やってみることを勧めています。それでサボっているのが判明すればやめればいいし、うまくまわるのなら制度導入を進めればよい。ただ、サボる人はオフィスにいてもサボっているのが実態だとは思います。シティバンクはコールセンター業務に携わる全員が在宅勤務ですが、これは在宅でも成果が上げられると認められているから。リモートワークはオフィスにいなくてもパフォーマンスを発揮できる人のためのオプション、という考え方もありますね。


Q. リモートワークする際のコミュニケーションツールは何を使っていますか?

近藤 slackを活用しています。社員が草の根的に利用を始めて普及しました。ホワイトボード機能もあるオンラインのミーティングツールも利用しています。社員自ら便利なツールを自発的に見つけてはシェアする文化ができてきました。

湯田 スケジューラの使い方を変えることは働き方を変えるのに有効です。「会議が多くてテレワークができません」というような企業には、会議の予定だけではなく自席での作業などすべての予定をスケジューラに入力することをまず勧めています。その人が1日、何をしているかわかるようになるので、席にいる時間に話をしにいったりするようになり、会議をわざわざ開く必要が減ってくるんです。

Q. どんなテレワークの使い方をしていますか?導入することでどんな効果が生まれましたか?

伊藤 WAAは社員500人のうちの8割が対象で、頻度としては月に1-2回という社員がもっとも多く、次が週に1-2回です。たとえば広報の私の部下は記事のチェックの仕事を集中してまとめて行いたいときなどWAAを使って自宅で作業しています。一方で長期間の利用例もあります。年末年始の約1カ月を海外にいる両親のもとで過ごすためにWAAを活用している社員もいます。

成果という観点でいうと、WAAを始めて残業時間は10-15%減りました。WAAとの関連性は実証できませんが、導入以降、会社の業績は上がっています。個人のモチベーションと生産性は上がっているとは思います。通勤ラッシュは非常にストレスを生んでいます。WAAを使ってそれを避けられるだけでもモチベーションがアップすると同時に、「働き方を自分で選んで決めている」という自己決定感はより幸福度を高め、結果として生産性の向上につながっていると思います

Q. 導入後、うまく運用していく秘訣はなんでしょうか。

湯田 一般的にテレワークを導入している企業の1人あたり売上高はそうでない企業よりも200万円高いといわれていますが、たとえば1時間あたりの売上高はどう変わったか?などわかりやすい指標で前後を比較してみるのがよいと思います。導入後は成果の報告が求められることが多いので、とにかく自社に合った指標を見つけて可視化することお勧めしています。ある大企業では導入2カ月後と8ヵ月後同じ内容のアンケートを社員に回答してもらいました。2カ月後は集中力がアップした、ワークライフバランスが整った、という回答が多かったのが、8ヵ月後は仕事の仕方や発想の方法が変わった、との回答が増えた、という事例もあります。

近藤 オプトでも従業員サーベイを実施しており、そのスコアは定点でチェックしています。私は、限られた時間の中でどれだけのパフォーマンスを上げられるかが勝負だという考え方ですが、それでも「定時で帰る」働き方を始める前は周りから非難されるのではないかと不安でした。ところが実際に始めてみると、多面評価の際にもそのような指摘を受けることはまったくなく、私の杞憂に終わりました。導入前にはいろんな懸念点があると思いますが、まずはメリットをとりにいくという意思を持って進め、問題は出てきたときにしっかりと向き合うのが大事だと思います。
実際にOFFICE PASSの利用を始めてみて、社員が顔を合わせる機会が減ることでノウハウが集まりにくくなっているという指摘がメンバーからありました。そこで、週1回は必ず集まって話し合う場を作ることになりました。これからも運用しながらブラッシュアップをしていくという姿勢で進めていきたいと考えています。

Q. これからリモートワークに取り組みたい企業の方へのメッセージをお願いします!

近藤 リモートワークをすると帰属意識が希薄になるのでは、という懸念があるようですが、私の場合は逆でした。自由な働き方をさせてもらっていると思うと会社へのエンゲージメントは強くなります。OFFICE PASSで見つけた気に入ったシェアオフィスで仕事をするとパフォーマンスが上がっている実感もあります。

湯田 とにかく、まず一歩を踏み出してくださいと伝えたいです。ただ、自社ですべてを整えようとするとハードルが一気に高くなります。今はさまざまなツールやクラウドサービスが無料ないし安価で使えるのでうまくそういったものも活用してみてください。テレワーク推進センターではテレワーク擬似体験もできるので、関係者の皆さんで一緒に参加していただくのも導入推進の後押しになると思います。

伊藤 働き方に注目があつまるのはよいことですが、あくまで自由な働き方はビジョン実現の手段であるべきと考えています。ただ、必ずどの企業でもやればできます。WAAの考え方に共感してくれた人たちのネットワーク「TEAM WAA」の参加者はいまや1000人にも上りました。こういった場も活用していただきながら、まずやってみる、には私も同感です。

【参考】「OFFICE PASS」 https://officepass.nikkei.jp/

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