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奥日光の冬のニホンジカ

ニホンジカによる食害は深刻で、奥日光でも林床を覆うミヤコザサや貴重な植物が消えつつある。センジュガンピ(ナデシコ科の多年草)が千手ヶ浜の千手堂付近に咲いていてほしい、と願って探しても全く見つからない。小田代ヶ原のクガイソウ(オオバコ科の多年草)はシカの侵入防止柵でようやく復活してきたが、コヒョウモンモドキ(タテハチョウ科、幼虫の食草がクガイソウ)は消滅したままだ。
ところが不思議なことに、ニホンジカが食べない植物もあって、初秋の奥日光の千手の森などでは、シロヨメナ(キク科)の白い花が所々に咲き誇っている。強い苦味などがシカを忌避させると聞いたりするが、興味深い植物の生き残り作戦だ。気のせいかシロヨメナの花には、寄りつく虫たちもやや少ないような気がする。

ニホンジカは積雪でササが隠れると、奥日光ではカラマツやウラジロモミなどの樹皮を剥ぎ取り内皮まで食べる。傷つき寒風にさらされた木肌を見ると痛々しい気持ちになるが、ニホンジカは餌になるものを仲間と探しながら草食反芻を繰り返し、なんとか冬を乗り越えなければならない。

歯痕は縦に削るように残っている。©nishiki atsushi
ニホンジカの耳は大きく、足が細長くて体形が美しい。お尻にある白い毛が目立つ。©nishiki atsushi
警戒すると白い毛を逆立てるから、逃げる後ろ姿は白い毛の部分が大きく見える。©nishiki atsushi
シカとサルが遭遇するのは珍しい。シカはちょっと気にしていたが、サルは寒そうにして動かなかった。©nishiki atsushi
オスには角があり、1年ごとに生え変わる。角の枝分かれが二又あるので、満3歳以上のオスジカだと思われる。©nishiki atsushi
雪の中のササの葉を探して、シカの顔に雪が付いた。ササの葉が食べられ、周りには茎だけが残っている。©nishiki atsushi
ちょっと失礼して、丸い糞をポロポロと落とす。©nishiki atsushi
ようやく雪解けの季節になった。2頭のシカが首を伸ばしてこちらを見ている。体の色が周囲に紛れ込んで分かりにくい。©nishiki atsushi

ニホンジカは古来「神の使い」として手厚く保護されてきた歴史があり、春日大社に隣接する奈良公園ではニホンジカと人々が長く共生していて、国の天然記念物にも指定されている。
奥日光のニホンジカは、厳しく豊かな自然のなかで健気に生きている。雪の上で死んでいく子ジカを見たことがあるが、冬を乗り越えさえすれば、シカの天敵はいないから個体数は増える。加えて降雪量の少ない年が多くなり、あまりにもシカは増え過ぎてしまった。空nyan! 自然保護について、どのように取り組めばよいのだろう? 生きものと人との関係や課題を学び、また話をしようね!
After the snow melts, the season of budding comes.

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