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サンショウウオと奥日光

4月になり奥日光を歩くと、流れのない水場にクロサンショウウオの卵嚢がひっそりと沈んでいる。水中に落ちた枯れ枝などに産み付けられた不思議な塊に魅入ってしまう。
クロサンショウウオは、日光戦場ヶ原の湯川で発見され、当初は「ニッコウサンショウウオ(日光山椒魚)」と呼ばれていたようだ。しかし、仙台産の標本による「クロサンショウウオ(黒山椒魚)」が、ニッコウサンショウウオと同種でしかも新種発表が早いと判明したことで、正式和名がクロサンショウウオに移行したという。✳
このエピソードは、日光関連からするとほんの少し残念な気がする。

水に沈む卵嚢には神秘的な雰囲気がある。
産卵のために集まったクロサンショウウオ。繁殖期以外は水辺に来ないし、山の中でひっそりと暮らしていて夜行性なので、見る機会は少ない。

奥日光ではクロサンショウウオとは別の「ハコネサンショウウオ」が、梅雨期の夜に華厳渓谷や山地の渓流に移動して産卵すると言われている。ハコネサンショウウオは日本固有種で日本各地に広く分布し、近年の研究によって数種に分類されている。

奥日光や箱根、南会津などの多産地では、ハコネサンショウウオを産卵時期に大量に捕獲していた。明治後期から昭和初期にかけて薬用として重宝された山椒魚の黒焼きのことだが、個体数維持のために捕獲数の調整もしていたようだ。
現在でも栃木県の湯西川などの栗山郷では「サン様」と称して「山椒魚の燻製(黒焼き)」を提供し、個体数維持も受け継いでいる。
私は一度だけ食べたが、苦味が強くて完食できなかった。

サンショウウオの幼生には呼吸器官の枝状の突起(エラ)がある。秋にエラが消えて上陸するか、幼生で越冬する。水面に浮いている小さな昆虫はミズスマシで、水面を素早く動き回る。水の底にミズスマシの影が映る。

空nyan! 奥日光にある三角屋根の「日本両棲類研究所」には、オオサンショウウオやウーパールーパーがいるょ。

参考資料
✳「名前に″日光″がつく動植物」展レポート(その3)2016年 栃木県立博物館

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