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雪迎えとは?

 晩秋の穏やかに晴れた日に、青空を背景に複数の糸が輝きながら流れて来る。それは、クモが空に舞い上がり移動するために流した糸で、山形県の置賜盆地などで「雪迎え」と呼ばれている自然現象だ。

 徘徊性のクモは網を張らず、地面近くを動き回って餌を獲っている。そのようなクモの多くは、晩秋の快晴無風の日の上昇気流に乗せて、糸を空中に放出して舞い上がろうとする。自らの糸を移動手段に転換した飛行グモの行動に驚き感心する。
 一方、造網性のクモは、種に応じて独特な網を造形する技を獲得した。どちらも命を次に繋いでいくための進化といえる。

 山形県置賜盆地や南陽市白竜湖周辺の人々は、古来、「雪迎え」を仰ぎ見て、「雪迎えが飛んでいる。初雪が近い。」と言って冬支度を急ぐのだった。「雪迎えとは何か、何の糸か、何処から、なぜ飛んで来るのか」、そのような問いかけの先にある、冬の季節への人々の思いや祈りが込められたことばが「雪迎え」のように感じられる。

 時が流れ、白竜湖周辺の生物多様性が変化して、貴重な草花が消え、昆虫やクモの数も減少した。
 人々の記憶に“雪迎え”は残っているが、晩秋の風物詩としての“雪迎え”は失われようとしている。

 ークモはなぜ、どこまで飛んでいくのだろう?ー  I wonder why.     

                「<雪迎え>小さな資料館」 
       👆(ホームページ)

糸を出し飛び立つクモ ©nishiki atsushi
網に朝露 網を張るクモ ©nishiki atsushi

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