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信用スコアはなぜ生まれたのか

※ここに書いている記事は、私が独自に調べた内容とそれに対する見解です。できる限り公式公正な資料を元にしていますが、正確な事実と異なる可能性もあります。ご了承ください。

信用スコアや信用データビジネスについて調べ始めたのは2019年頃。
この年は「信用スコア元年」と言われているそうです。

PayPayなどのキャッシュレス決済が次々現れ、LINEスコアやYahoo!スコア、J.Scoreなど大手企業がスコアリングサービスを提供し始めたのがこの年です。

当時スコアリングサービスの乱立で「なんでみんな寄ってたかってスコアやりはじめたんだ?」と疑問に思い調べ始めたんです。

信用スコアとは何者なのか
信用スコアは人々の役に立つのか
信用スコアで企業は何がしたいのか

今日はこのあたりの概要を書いてみます。

信用スコアとは何者なのか

信用情報、という言葉は昔からありました。
クレジットカードの「クレジット」はそのまんま信用という意味ですしね。
つまり「その人をどれだけ信用していいか?」を信用情報、信用履歴、クレジットスコア、信用スコアなどと言ってきたんです。

クレジットやローンの審査で使われている信用情報は例えば
- 過去に未払いや延滞などの問題を起こしてないか
といった利用実績の他に

- 名前・住所・年齢・性別などの基本情報
- 職業・年収・ローン残高など経済的な情報
- 家族構成や居住形態など身辺情報
があげられます。

カードの申込みなどで、職業や会社名・家族構成など書く欄がありますよね。カード会社はこの情報を元に与信審査を行っています。
日本ではあまり意識することはありませんが、アメリカ等ではクレジットスコアは生活に大きく影響する存在。
アパートを借りたり就職するときにも必須の重要情報なのだそうです。へー。

一方で信用スコアといえば中国、みたいな印象があります。
これはアリババグループの芝麻信用のイメージが強いから。

芝麻信用(ジーマ信用、ゴマ信用)は、従来の信用スコアとは異なる「新しい信用スコア」と言われています。

従来の信用スコアは、職業や収入などの決まった情報からある程度固定的に支払い能力を算出していました。
例えば正社員は非正規より支払い能力がある、年齢が高い人のほうが支払い能力がある等。

でも、今の時代それだけでは正確な信用度を測りきれなくなってきてます。
正社員が絶対安泰ではないし、家族がいても借金踏み倒す人だっている。
もっと本質的に「その人を信用していいか」測る方法はないのか?

そこで芝麻信用は、その人の人間関係やお買い物の履歴、使っているサービスなど幅広い情報を大量に持つことでより本質的な信用度を測ることにしたのです。

例えば、信用度の高い人とたくさんSNSでつながっている人は信用できる、借りたカサを必ず返す人は信頼できる、年収の割にブランド物を購入しすぎている人は要注意など…

様々なユーザーデータを大量に持つことでより多面的多角的に分析することができるようになった。従来の信用スコアではできなかった新しいスコアリングが誕生したのです。

信用スコアは人々の役に立つのか

芝麻信用は、中国で一気に浸透しました。
国や企業の施策もありますが、人々にとって嬉しいサービスだったからです。

なぜか。

中国では低所得層の人がローンを組んだり、クレジットカードを持つのは難しいことでした。
それどころか銀行口座を持たない人も多いそうです。

そういった人たちがお金を借りようとしたら今までは法外な高利貸しを頼るしかありませんでした。
それが芝麻信用を使えば融資を受けられることができるようになったんです。画期的な変化でした。

堅実マジメに生きていれば、小さい善行を繰り返していれば、それがデータ化されてちゃんと評価されスコアが上がっていく。
良い人は年収が低くても評価されるし、金持ちでもモラルがなってない人は評価が下がる。

芝麻信用はお金を借りるだけではなく、生活の様々な面で普及し受け入れられるようになりました。
就職やSNS、婚活や旅行…

悪いことをすればデータとして使われてしまうから、借りパクなんかも気軽にはできません。悪い事したらお天道様ならぬ芝麻信用が見ています。

良い悪いは別として(監視社会への不安や政治的な問題についてはここでは言及しません)、これが新しい信用スコアを受け入れた中国社会の現状です。

信用スコアで企業は何がしたいのか

次は企業視点から。
芝麻信用を提供・運営しているのはアリババグループのアントフィナンシャルという企業です。
2015年にサービス開始し、国の政策的な支援も受けて一大事業になっています。
アリババグループ会社のありとあらゆるデータ+一部の公的なデータを集めて分析しスコア化する。かなりコストがかかる事業です。
でもこれって、企業にとってのメリットは何なのでしょう。

結論から言うと大きく3つあります。

1. 既存事業の盛り上げ
信用スコアを使って既存サービス利用を優遇したり、特典をつけることでユーザーの囲い込みを狙えます。自社経済圏の拡大ですね。

2.データの蓄積・活用
スコアが便利になり、使うサービスが増え、利用者が増えるほど、集まるデータの質も量も上がります。
データが増えればスコアがさらに便利になりデータが増える…このループを高速で回すことでビッグデータビジネスはどんどん価値を高めていくんですね。よくできてるわ。

3.金融市場の拡大
先述したように低所得層をユーザーとして取り込むことで潜在ニーズを引き出すことができました。本当は返す意思も能力もあるのに数字に現れなかった層というのは金融市場にとって宝の山同然です。

中国の芝麻信用はよく「中国だからできること。日本では無理」と言われます。私も実際同じことはできんだろうなと思います。
それでも色んな大手企業がスコアリングサービスを始めている。
クーポンやポイントを駆使してユーザーを取り込もうとしている。
(時に炎上しつつ)

その裏にはこんな思惑があるからなんですね。
特に1.と3.かなーと思うんですが。

企業側の思惑についてももう少し機会があれば深堀りしたいと思います。



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