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何者かわからぬまま走る 198日~入社1年目の軌跡~

ご乗車ありがとうございます。日本交通(株)新卒採用担当です。
今回は、新卒採用チームで働いていた23卒の新入社員に、部署異動に先立って、この半年間の振り返り記事を書いていただきました。
第1弾は佐藤さんです。前回の記事はこちら。


何者かわからないまま、自分は無我夢中にこの半年を生きてきた。
何ができるか、何ができないか。それさえもわからないままただ突き進む。
それがあっているのかなんてわからない。でも、ここに今いるということはあっているのだろう。

入社時点でまだ二種免許が取れなかった(※)自分は『新卒採用チーム』に配属となった。会社のことを知った気でいるだけの自分には不適すぎるとさえ思った。友人にも「初年度から人事なんだ」なんて声をかけられた覚えがある。そう、人事なのだ。人を選び、人に選ばれるために働く。それが自分にとって適した仕事なんて微塵も思えなかった。

(※)二種免許は普通自動車免許を取得してから1年経たないと取れない免許。タクシーや運送で金銭が発生する際に必要で、これがないとお客様をお乗せできない。

引っ越しが遅れて入社1週間前に東京という大都会に降り立った。入社式前日にライブで声を枯らし、その状態で参加。同期には笑われたが、正直「自分、インパクト残ったな」なんて考えていた。

最初の業務はいたって簡単。ただ『日本交通』という会社の知識を叩き込む、作業内容を覚える。この二つだ。先輩や、先にアルバイトとして働いていた同期に仕事を教えてもらっていた。仕事が嫌いではなかった自分は楽しんでやっていた。先輩も優しいし、同期も懇切丁寧だ。

少し慣れてきた辺りで自分はこう思った。
「仕事として自分にはできているものが少なすぎる」
アルバイトとして働いていた同期は様々な仕事を与えられ、自分たちは見守るばかり。劣等感は募っていく一方だった。そこに負けないように必死になって仕事を探し、同じ仕事なら彼らと同じ速さとクオリティを自分自身にただただ求め続けた。

6月。ここで一つ任命されることになる。それは東京ビッグサイトでの合同説明会。ある種、この2か月で培ったものを披露する会のようになった。
自分のありったけの知識や先輩から学んだことをすべて出すつもりで練習を繰り返した。しかし、自分の中ではやはり何かが足りないと思った。

それは、いたってシンプルな「経験」。この2文字がいかに普通にあるもので重要かがここで身に染みることとなった。

いざ挑んだ説明会。キラキラとした学生に少し気圧される。知識も蓄えた、ロールプレイもした、スライドもすらすら言える。でも心のどこかでは、「経験がない自分が」と後ろめたさがあった。しかし「自分は大丈夫。」そう心で唱え続けてビラ配りから始まった。

そして回ってきた初めての説明。自分には何ができる、みんなは今なにを欲している、それだけを考えて彼らにそして自分に語りかけながら、話していった。

成功なのか失敗なのかそのすべてがわからない。しかし、反省しか残らない一回目だった。話す時間はどうだ。学生には魅力が伝わったのか。マスクで分からない。でもわかることは一つ。全力でやり切ったこと。1.5万人の学生がひしめく会場で声を出し、届くように伝えていこうという一心で声を張り上げた。これしかできないという劣等感からかもしれない。たかが15分。しかしそこに自分のすべてを出した。気づいた時には声は枯れていた。

「よかったよ」

この先輩の言葉に救われ、励まされ、これが血となり肉となり、自分の原働力になっていた。

そしてその3週間後。スマホのナビは同じ位置にピンを指し、矢印はそちらへとゆっくり歩を進めていた。あまりにも早い2回目。前回のように、でも前回のようには。相反する気持ちの中迎えた2回目。声なんて枯れようが、飛ぼうがそんなことどうでもいい。ここの良さが、ここの熱量が、それさえ伝わればいいと思って話し続けた。

「熱がこもっているから私は好きだよ、その説明。」

先輩の言葉。これがいかに自分の無力さをカバーしようとしているかが伝わったのだと感じ、帰りの電車でかみしめていた記憶がある。

そこからは新入社員ならではの仕事に参加。選考に進むうえでの対策や心構えを紹介する企画に自分もいた。これから就活を始める学生に少しでも得な情報やいいきっかけになればと必死だった。高い満足度を学生から得られていることは嬉しかった。名前を出してよかったと言ってもらえることが非常に嬉しかった。

そして、2023年10月15日。この日をもってこの部署を離れる。「怠惰」なんて言葉を置いていくように半年が過ぎた。あまりにも早い。

「半年なんてあっという間だよ」

嘘だと思った。ただでさえ、大学での4年間もあっという間だったのに。こんな馬鹿で怠惰な自分は前を見て進んでいるうちに気付けばここまで来てしまったのだ。

半年。
この期間は様々な学生と触れ合った。とにかく人と関わることが楽しかった。就活でもがき苦しむ彼らに安寧を少しでも与えられたら。彼らの不安を少しでも自分が取り除けたら。それだけを考えて突っ走ってみた。人を顧みない自分が行ったとは考えられなかった。

『新卒採用チーム』。

重みがある言葉だと思う。つい昨年までは一学生として彼らと相対していた自分が今度は学生たちの師となり敵となる存在に早変わり。自分からすれば「1年目なんだから」なんて思うが、就活している身・他企業の人からすれば1年目も10年目も変わらない「企業の看板」を背負っている。

この1万人を抱える企業の顔を1年目からするという重圧は計り知れなかった。この重圧を楽しんでいたのか。そんなことも忘れていたのか。それは神のみぞ知ることだ。

最後に、自分は必ずここに戻ってきたいと思っている。
それはいつになるかはわからない。でも、これまで以上に前だけを見て、走り続けて必ずここに戻ってくる。
乗務員を経験して『新卒採用担当』と胸を張れるように。誇れるように。

その時まで。

Text:Ryosuke Sato

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