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西表島、アダナデの滝 その⑤未知に向かって飛び込む

シオマネキ、トントンミーと別れて、徒歩で川を登り始める。登るといってもほぼ平坦で、足のスネくらいの水位、水底もドロドロしていないさっぱりした砂なので歩きやすい。

前々日に行ったピナイサーラの滝の上までの登山感はゼロだった。歩き始めて相撲取りの集団のような大きなシダがワサッと垂れ下がっていたり、キラキラ自己主張する小魚たちに出会った。10分ほど歩き、ゴツゴツした岩場が始まる。ツルツル滑るので要注意だ。

実は前々日、ピナイサーラの滝の上で同じようなツルツル岩で私は豪快に足を滑らせ仰向けに転び、後頭部を軽く打った。幸い、とっさに右手を付いて後頭部を強打することはなかった。

西表島ティダカンカンのツアーガイドのKさんが教えてくれたが、私がピナイサーラの滝に行った翌日、同じところで中年の男性が転び、頭部を打ったとレスキューの依頼があったそうだ。Kさんは要請通り、ピナイサーラの滝の上に向かったが、着いた頃には事態が好転していて、その男性は自力で山を下りる事が出来るくらい回復し、その後、診療所で診察を受け、大事には至らなかったらしい。良かったですっ!

ヘルメット、大事ですっ!

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ジャングルの中に見慣れた植物を見つけた。西表島に竹が生えていたのだ。ジャングルに似合わない繊細な細い葉っぱは、急にジャングルから抜け出してしまったようで笑ってしまったが、見慣れたものを見てホッとしたからか、この旅で見慣れない景色が続いた非日常の緊張感が体に馴染んで、消えて行った。

岩場を歩きはじめて早々に、Kさんが「そろそろ飛びますか?」と言う。行く先を見ると右側に岩場が続き、先に進む事が出来そうだ。左側は沢でKさんの視線の先には沢が開けていて、ちょっとしたプールの飛び込み台のようだ。Kさんがお手本で先に飛び込む。飛び込んだあたりを指差して、「左の方は浅いので、このあたりを目掛けて飛んでください。ちょっとだけ足が底の石に当たるかもしれません。」プールの飛び込みと違う所は飛び込む先の水中がどうなっているのか分からないところだ。透明度が悪いわけではないがドボンの行く末が未知というのは勇気がいる。

アダナデの滝に向けて飛んでいけとばかりに勇敢にドボンした。

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左足のつま先が水底に触れ、テンションがあがった。沢とハイタッチだ。カヤックでタップリ汗をかいた体がサッパリ洗われ、頭の中にあった、せせこましい時間たちがサッと流された瞬間的だった。

アダナデの滝までは、岩場を歩いては飛び込み、足の付かない水中では泳ぎ、小さな滝に打たれて、また歩く。つづく。