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日本人エンジニアの給料が上がらない理由の記事から見る「Buy Japan out」な世界

あ、この記事についての感想です。

http://president.jp/articles/-/24409
日本人エンジニアの給料が上がらない理由 ファーウェイ本社の初任給83万円

大前氏の言いたいことはまあ正論かな、と。
特にですね。

「しかし大量一括採用された日本のエンジニアは、会社の人事評価制度の中で遇されてきた。それらの人事給与制度は日本的な平等主義で社員全体の給与を抑える仕組みになっていても、エンジニアの能力や成果に対して正当な報酬を支払うシステムにはなっていない。」

あたりについてはそうだなぁと思うわけです。

この話で関係するポイントがいくつかと思っていて。

 1.【日本の価値観】コストを負担することに慣らされていない人々
 2.【日本の業界環境】日本の独自進化とグローバルとの乖離
 3.【日本の社会】働く人を取り巻く環境
 4.【日本の教育】エンジニア(新卒)の世代変化
 5.【世界(アジア)情勢】近隣諸国の経済発展

の5つです。

大前氏の言うことは正しいと思うけど、それだけではない。(もちろん大前氏はわかっていて問題を絞ったのだと思う)
今のこの格差の話は人事制度とかエンジニア枯渇問題だけでは語れないと思うんですよね。

この話をするのには、様々なキーワード浮かんで来てどれも微妙に関わっている気がする。

消費傾向・GDP・生産性・就業人口・就業スタイル・デジタル化・デジタルネイティブ、大学制度、教育の仕方
税制度 周辺国の対抗、国力、世界への影響力 日本の言語 日本の価値観・民族性 日本人の精神性

とか。なんか今の給与水準の話って、バブル崩壊以降・・高度経済成長以降のの日本の結果、というように見えるんですよね。ランダムに書きすぎたけど。
思いついただけでこれだけ出てくるということは、結構侮れない問題だと思います。

で、1から行くんでしょ?って思われるかもしれませんが。

とりま、今回書きたかったのは3かな。なので書いてみます。

先週の土曜日に春節の真っただ中に築地に向かい、大勢の中国・韓国の方にまみれてきました。
「なんで日本に来るんですかね。高いのに」
と聞かれたので
「日本は非常に安い国なんだよ」
と話をしたら大変同行していた女子が驚いていました。

自分の知人には海外で働いている方も多いので伝聞ではありますが。

 ・安全に快適(衛生的)に最低限の暮らしをする

という観点からみると非常に安い国です。日本。たぶん、衣・食・住全部。

▼衣
しまむら・ユニクロ・ありとあらゆるファストファッションが受け入れられその品質が担保され、収入に対しての衣にかかる比重が低いという意味で。

▼食
無料で水・茶がついてきて、衛生的に問題がなく、食材も新鮮でおいしいものがあの価格で食べられるという、食の面で。

▼住
ニューヨークで安全に住もうと思ったらルームシェアで8万円以上(クイーンズ地区で)部屋を借りれば2500ドルぐらいです。
マンハッタンは4000ドルとかかな。
東京はルームシェアの値段で三茶あたりに住めます。そして1Fでもそれほど治安は悪くありません。
高円寺までいけば1LDKまでその値段でいけます。そして駅から徒歩10分以上でもそこでの治安は心配されないわけです。
この辺参照して。https://ny-pg.com/life/ny-rent/
交通網からしてもそれほど不便はないですし、地下鉄を見てみても安い
http://www.jametro.or.jp/world/list.html

▼教育においても同様で
小中高の学費: 日本とシンガポール
http://uniunichan.hatenablog.com/entry/20151225Tuition

この前提を無視して給料の格差を語るのは無理だな、と思うのです。
基本的な「質の高い生活の維持」に関するコストがローコストなんですよね。たぶん。
 ※本当はhttps://www.gpc-gifu.or.jp/chousa/houkoku/13/shouhi/4-1.pdf
このあたりの最新があると比較できたんですが、
  いかんせん1999年が最新では・・もごもご。そしてなぜ岐阜。

まあ、ちょっと1のテーマに絡んでくるけど、基本「安いのはいいことだ」「もっと安くしろ」圧力の結果は成功に。この側面はすごくいい。
安くて安全な国ニッポン。


ただし、国民総出で「(品質そのまま)安くしろ=企業利益貢献せず=給料還元せず」でこの結果よ。

1992年からの圧倒的後退感。

国力総出で日本を安くしてきた結果がこれです。生活は苦しいのが変わらない。そりゃそうでしょう。たぶん一番安くなったのは国民かもしれないって事だと思うんです。


            「良いものをより安く」

このフレーズ本当によく見たよね。

バブルが崩壊して付加価値を忌避し、価値にお金を払うことを「愚かな行為」とする。過去の失敗例とする。
グローバル化に逆らうように多様な価値観と思えない行為が蔓延する。
努力をすること、金を稼ぐこと、競争することを、だれかが1位になることから目を背けて、
「あの時世界に勝とうとしたからバブルが崩壊したんだ」
「無理をしないのが一番だよね。無理を強制しないでみんなで生きていこう」
という多様性ではなく、だれかが突出しないようにするという寛容。
全員が失敗しないことを最優先にする、失敗することを悪とする風潮。
そして「僕たちは関係ない」「かかわらなければ罪がない」という対岸の火事感・・・。
もちろん。全員がそうだといってるわけではないけれど。
でも見るべきポイントはマス。だとすると、同意するところはないだろうか。

この「気づいている人・できてる人」と「マス」の差が、買い叩かれないニッポンと安い国ニッポンという格差。
旧態依然とした給与システムの中で、安く生活ができる日本だからこそ生かされてきた人(=買い叩かれる人)が今回の給料が上がらない人、とも言える。

すなわち、ニッポンが買い叩かれる「Buy Japan out」が、バブル崩壊時より、より今来てるってことで。
それを作ったのはおそらく国民総意だったということなんですよ。

つうのが。5つのうちの3つめ。

3.【日本の社会】働く人を取り巻く環境

 日本はすべてが安い。安全も、快適も 働く自分たちをも。

が結論です。でもほんと、1,2,5あたりの要素が複雑に絡みついていてこの問題は根深いね。

札幌でニアショアやっていた元同僚が、すでに日本回帰の傾向が見えていたという話でした。
海外発注よりも、コミュニケーションとアクセスの利便も含めて、以前中国やインドだったものを日本に戻す、という可能性が本当に高い。
そうなると、金の流動性は内にこもる。内需が拡大すればまた変わるかもしれないけれど、外資が入り込んでくると、永遠に買いたたかれることになるね。
まあ、その傾向がすでにあって大前氏とかは警鐘を鳴らしているのかもしれないけれど。

今まさにあのハゲタカの世界になっていると思う。
http://hash.hateblo.jp/entry/20090526/1243296749


追記:やっぱり海外と比べて安いという話はありましたね
https://twitter.com/keikei1987/status/968273465512927232


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