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がいなおかあ(5)趣味に資格なんてあるんかい!

エアコンのフィルターを掃除してくれだの、しょうじの張り替えしてくれだの、わたしら家族が帰省した時には、なんらかの課題を与える。

こちらの都合はお構いなし、
言いたいことを言い、やりたい事をやる、実にうらやましい人。

四国地方の方言で「気が強い」という意味で使われる
「がいな」
おかあ(母)は現在81歳。
このおかあ、とにかくジコチュー。
自分肯定ハンパないこの人の嫌味と灰汁(アク)を愛を込めて書いています。

そんなおかあ(母)は短歌を詠む。わたしの祖母もそうだった。

しかし別にそれを生業(なりわい)としているわけじゃない。

なのに何故か、必死のパッチで全力で取り組む。 

いや、悪い事じゃないけど。

入賞か特別賞か人の名前のなんとか賞、それらの応募に締め切りがどうだとかなんとか、ボソボソつぶやく。

天井の灯りもつけず、薄暗い中に手元のスタンドだけで作品作りに没頭する。

音のない空間に、鉛筆とノートの摩擦音だけ、シャカシャカ鳴る。
雑記帳には沢山(たくさん)のはしり書き。

なんか文豪。
ぽい。

いや、灯りくらいちゃんとつけた方がいい。

おかあは何かしらの賞を取り、
新聞に載ったり、雑誌に載ると、
わたしら家族にそれを見せて自慢をする。

いや、わかるけど。

短歌がなんぞやも知らぬわたしや子ども達にあれこれと蘊蓄(うんちく)を浴びせてくる。

でもまぁとりま、

「すげー」
「よかったな。」
と言うわたしら。

ここまではまぁ、いいよ。
でもこれからの話が曲者(くせもの)。

母は自分の身体を極端に心配する。病気に敏感。

いや、悪い事じゃないけど。

だからうちの夫が前立腺癌になったとき、母にそれを言ったらパニックでも起こすんじゃないかと思っていた。

実は…と切り出した前立腺癌。

し、か、し、

それを聞いた母は、
とにかくあっけらかんと、

「人生色んなことがあるから面白い」


と。

開いた口をなんとかして欲しい。

「そう考えなさい」ということらしいが、

いやしかし、
自分の身体の事は小さなことでも異様に気にする。病気じゃないかと心配しまくる。

なのになんなんですか?
自分の事じゃなかったら、面白いとかってなんやねん。

「面白くなんかないわ!」

そう反論すると

今度は

「お前、国語能力ない。
小説など書く資格ない!」


と言うおかあ。
「『面白い』というのはそういう意味やない、辞書をひいてみぃ。」と言うのだ。

いや、分かるけど。
知ってるけど。

でも、弱ってる人にそれを言っていいもんかな?面白いって。
癌を宣告されたばかりの家族に、
それを言って、
「せやな」とポジティブに捉え、
前向きに生きようって思ってくれる、
メンタル強靱さんになら言ってもいいかもしれん。
でも、少なくともわたしにはむり。

ってか、小説書いてるってゆうても

ただの趣味やから。

趣味に資格なんてあるんかい!

夢にでてきそうや。


長男にそれを愚痴った。

「そうやなぁ。
弱っている人には、
『共感』や『寄り添い』
ってのが大事やなぁ。」

長男は東京で夢追い人。
しっかりした考え方を持った人。
なるほどな言葉をもらった。

わたしはこれからの人生、これを実行しよう。

悩みや、身体の不調を相談とか告白された時は

まず、相手の気持ちを受け入れる。
大概、悩みを相談する人は、
もう自分の中でどうするかが決まっていてただ、話しを聞いて欲しいだけだったりするもんだ、とどっかで聞いたことがある。
だから、
『共感』して『寄り添う』

誰かみたいに趣味まで否定せんとこ。
絶対に。

でもまぁ、
たまには母の短歌をしみじみ見てみよう。

暇があったら、やけどな。

#趣味資格なんてないわっ
#短歌
#国語能力ってか
#共感
#寄り添い
#メンタル強ないねん 、わたし。

To be continued

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