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災害によるメンタルヘスへの影響

現代では、国内はもちろん、世界中で様々な災害が起きている。地震、大規模火災、噴火、津波などが頻発し、人の命が奪われたり、建物が崩壊したり、様々な被害が出ている。また、命が奪われたり、大きな身体的な被害(怪我など)がなくても、災害は人々の心に大きな傷をつける事がある。
 
今から約12年前の2011年3月11日、東日本大震災が発生した。地震に加え津波、原発事故と、まさに未曽有の大災害となった。死者約1万6000人、行方不明者も約2500人にのぼる。また災害関連死も多く、これまでに3000人以上の被災者が長期化する、災害の直接的な心理的被害や、避難生活のストレス等で亡くなられた。
災害による、メンタルヘルスへの影響は計り知れない。
大規模災害などでは、メンタルヘスへの影響は個々、人によってその影響は違ってくる。災害が起こっても、特別な介入もなく不安、抑うつ状態、恐怖などから回復をしていく人が多数を占める。その一方で、複雑性悲嘆やPTSDなど、慢性的な喪失感やトラウマの問題の為に、心理的な苦痛に苦しむ人々が残されていく。また、生活再建のプロセスの中で、避難生活や新しい避難先の移住地で孤立したり、職を失って経済的にも苦しくなり自分の役割も無くなってしまい、苦しい思いをする方々も多々存在する。
 
大規模自然災害後の遺族の様々な調査研究では、愛する対象を喪った悲嘆は通常、時間の経過とともに減弱していく正常な反応だが、その悲嘆が長引き、長期に渡って日常生活に支障をきたす場合があり、その状態は近年、複雑性悲嘆と呼ばれる。災害後の複雑性悲嘆の有病率は、調査の時期や対象などにより、10%前後から100%に近いものまで非常に幅広い。
慢性化した悲嘆の全てが病的なものというわけではないが、苦痛や機能障害が長引く少なくとも一部の人達は、複雑性悲嘆への心理的支援を求めている。このような方々への介入の1つとして、グリーフケア(悲嘆ケア)があり、改善に一定の効果があると聞いています。
グリーフケアでは、当事者がグリーフによる起こる症状やおおよその期間、どのような過程を経て回復していくかなどの知識を学びます。そして、悲しみを受け止めてくれる人に胸の内を話したり、自ら悲しみを整理していく作業を設定します。そして信頼できる場での心の解放、機能的な心の整理を行っていく事によって、グリーフを軽減する事が出来ます。
 
またPTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、衝撃的な出来事(トラウマ)を体験した後、一カ月以上の時間が過ぎても、その時の体験や記憶を無意識に思いだしたり、トラウマを想起させる場面を回避したり、トラウマ体験により体が過覚醒状態になり、普段の生活でも様々なストレスに過度に敏感になったり、睡眠障害が生じたりして日常生活に相当な制限を与えます。PTSDに対する心理的治療法としては、持続エクスポージャー法(トラウマの出来事をあえて、想起して慣らしていく方法)、認知処理法(トラウマへの非機能的な考えを機能的な考えと変えていく方法)、眼球運動による脱感作と再処理法(トラウマは脳内で適切に処理されず、その時の情景、映像、音、感情、思考などを全て脳の中に閉じ込めてしまいます。通常の処理がされるために、トラウマ出来事を考えてもらいながら、治療者が患者さんの眼の前で指を一定の速度で動かし、それを目で追いかけてもらう事を繰り返すと、トラウマの嫌なイメージが薄れると言った変容がみられます。その後、更にトラウマに対して肯定的なイメージを考えながら眼を一定の速度で動かしていく事で、トラウマな出来事に対するイメージ・考えが適切に処理されます)などがあります。
 
このように、災害などの直接的な影響や生活環境の変化、経済的困窮などの間接的な影響により、人々のメンタルヘルスに多大なダメージを与えます。
更に、災害によって大人(両親)がメンタルヘルスに大きなダメージを受けると、その震災後に生まれてくる子供にも知的機能やコミュニケーション能力の低下、多動・衝動性が増加するという研究もある。子供は両親との関りや遊びの中で、語彙能力を発達させたり、コミュニケーションの仕方を学んだり、感情のコントロールの仕方を学んでいきます。更に、両親に対して信頼できる(困った時に助けてくれるという関係)愛着関係を結ぶ事で、主体的に未知なる環境に飛び込んで探索行動が出来るようになったり(他者と関わりを持ったり、物事にチャレンジしたり)、両親との愛着関係を結べた体験により、他者とも安心した信頼関係を結べるようになってくる。しかし両親がメンタルヘルスに大きな影響を受け、不安や抑うつ状態が強くなると、子供との健全な関わり方が出来なくなり、結果的に子供は、上記のような能力が向上しにくくなる事もありえるのです。
 
災害の規模や被害にもよりますが、大きな災害の場合、メンタルに様々なダメージを与えます。震災後に生まれた次世代の影響も然りです。被災地域の政府や外部からの支援は一定期間をもって終了してしまいますが、人々への心の支援の必要性は、何カ月や数年で終わる物でもなく、何十年といった、長期的な支援の必要性も考えなければなりません。長期的な支援を行うためには、外部支援の力を借りるだけではなく、その災害地域が自立した支援体制を築いていく必要があります。また日頃から、災害時の時にどの様な事が問題になり、どのように対処していくかといった(自身のメンタルヘルスへの影響、子供への影響、ストレス対処法、周りの人が困っている時の関わり方、人との繋がりを切らさない事など)国民への心理教育や国民がもっと興味を持って自主的に学んでいく必要性があるのではないかと思います。
 
長々と読んで頂きありがとうございました。

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