私的傑作漫才15選⑦

この世に存在する漫才は全て好きな前提です。

⑦モンスターエンジン「カレー」

僕が2022年見た漫才の中で、1番笑ったネタ。4月か5月頃のなんばグランド花月の夜公演。窒息するんじゃないかというくらい笑った。

モンスターエンジンは僕の1番の憧れである。漫才もコントもトークも全てが僕の中では1番だ。そう、単純にファンなのである。高校時代に作ったネタなんかは、ほぼモンスターエンジンの焼き写しだったりする。西森になりたくて関西弁も話した。読書なんて全くしない僕の本棚は、104冊のワンピースと2冊の西森の本でできている。モンスターエンジンとNMBがやっていたラジオなんて何周したかわからない。モンスターエンジンから全てを学んだ。この世の何が面白いのかを全部教えて貰った。渋谷凪咲と僕はモンスターエンジンの作品でひとつである。

そんな僕にとってはホンモノの神様であるモンスターエンジンが、M-1ラストイヤーの2022年に生み出した傑作「カレー」。これがモンスターエンジンである。これが滑稽だ。

「今日の夕飯はカレーよ」が毎晩続く家庭があったら。それを西森がその家庭の子どもとして体験するというネタだ。ボケもツッコミもない。ただ大林は設定通り、毎晩カレーを出し続ける母を淡々と演じ、西森少年はただそれに翻弄されるだけ。裏切りなんて別にない。この状況において至極真っ当なリアクションを取っているだけ。関西弁の男の子が、毎日カレーを出されて、なんで今日もカレーやねんってなってるだけ。なんでやねんってなってるだけ。「なんでやねん」がなぜツッコミの代表フレーズとして殿堂入りしているのか。それは、なんでやねんと思う状況こそが、滑稽の正体だからである。なんでこんなことになってるのか理解できない、全く考えがたい。そんな間違いや異変が、僕らには滑稽で仕方がない。なんでやねん状況をいち早く見つけて、指摘できるやつがいつも関西でヒーローになってきた。
このネタの設定はまさになんでやねん状況である。だからその状況に「なんでやねん」とその場の誰よりも速く、的確に指摘するやつがいたら、僕らはそいつを見て笑うしかない。その瞬間は、知識とか思想とかを捨てさって、ただ西森というヒーローに釘付けになるしかないのである。
設定自体がボケで、それにツッコんでいくスタイルとか、設定のおかしみを説明していく非常にコント的な漫才とか、そういう風にも言えるんだろうけど、
僕はこの漫才を「最強のなんでやねん」だと思う。
なんでやねんの前に人は皆、無力である。

西森はなんでやねんを見つける能力とそれを伝える能力が卓越している。トップ。つまりはお笑いスキルが人間界トップ。洋一西森のすべらない話だった可能性だってある。西森はそれくらいの人だと僕は思う。

加えて、西森は関西弁が上手い。トップクラスに上手い。
お笑いにおいて関西弁が強い理由は、切れ味とかリズムみたいなところがよく言われるが、もうひとつがアホさ。関西弁にはアホっぽさがある。これは悪口ではない。最高の褒め言葉だと思う。このアホさがお笑いにおいてとんでもなく有利に働いていて、この関西弁のアホさを最も上手く使えてるのが西森なんじゃないかも思う。声質も相まって。だから最高のなんでやねんが出せる。最強。

誰かにとってのダウンタウンが、僕にとってはモンスターエンジン。

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