お呼びでない

先日、久しぶりにデパ地下を歩いた。
特にそのフロアに用事があったわけではなく、帰路に通じていたので通ったにすぎない。
しかし、道中、目にする各店の店頭に並ぶ惣菜、イートインコーナーで来客が食べている料理を見ると、その豪勢さに思わず溜息が出た。
普段己が口にしている食事とのギャップに唖然として。
そう。単に、一日二日のことではない。
自立して独りで生活するようになってから、これらの店で売られているような食べ物を口にしたことは何度あったことだろう。
記憶を遡っても、一度もない。
別世界の食べ物。
だから、驚愕した。
ショックだった。

真実、お金を出せば、買えないことはない。
ちょっと奮発してみようと、覚悟を決めれば。
でも、現実問題、そういう機会は、これまでなかった。
イートインで、幼児が高そうな、そして、美味しそうなものを食べていた。
それが一番ショックだった。
子どもですら口にできるものを、自分は食べることがない。嫌いだから食べないのではなく、食べられないから食べる機会がなかった。
これから先の人生、おそらく、懐が寂しくなる一方で、金回りが良くなることはあるまい。
すると、今後もやはり、デパ地下の食べ物は、縁遠いまま、口にする機会は訪れぬだろう。
若い頃、喫茶店に毎日行けるようになることがささやかな夢だった。
コーヒー一杯飲むにしろ、財布の中身を確かめねばならぬ、そういう場所なのだから。
考えてみたら、百貨店という場所だって、私のような者がおいそれと足繁く通ったり、買い物できるようなところではないのだよな。
そのことに改めて気付かされた。
私は招かれざる客なのだ。

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