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大径管工場の建設 5.主要設備のメーカー決定

 建設チームが立ち上がり、晴れて、予算300億円、工期2.5年の工事がスタートした。先ずは主要設備のメーカーを決めねばならない。中でも圧延設備の発注が重要だ。正式な発注仕様書を作成して重工3社に提示して競札を実施したが、Ⅰ社の対応が圧倒的に真剣で他の2社は今一だった。鉄鋼3社が同時期に同様の設備建設を目指しており、対応できるメーカーは重工3社だから、3社は(暗黙の?)話し合いで、組み合わせを決めていたらしい。
 
 上司の山上課長は競札前から、何故かⅠ社と決めていたようだった。Ⅰ社の営業マンのT氏とは最初から旧知の間柄の如く振舞っていたから、成程そういう事なのかと思った。腑に落ちないが、ともかく主要圧延設備のメーカーはⅠ社に決まった。発注価格はおおよそ70億円と記憶している。
 
 ただし、正式な発注先はアメリカのE社で、Ⅰ社は形式的にはE社の下請けだ。圧延機本体の基本的な構想図をアメリカのE社が作成する。わが社には最初にその図面が提示されて、圧延機の骨格が決まる。他の重工2社もそれぞれ海外メーカーと提携している。私は、Ⅿ社が提携しているドイツメーカーの基本構想に惹かれてはいたが、向こうが真剣に相手をしてくれなかった。
 
 主圧延設備の発注に続いて後工程の冷却設備、矯正機、検査設備、更に工具やロールの運搬台車などの基本的な設備構想を考えて、それを元に競札し、メーカーを決めた。ここまでは私が担当したが、その後、チームが増員され、私はⅠ社が受注した主圧延設備とその付帯設備に専念することになった。
 
 チームに増員されたのは以下の二人。
・中山、私の2年下、大学同窓、中肉で背はやや低め、大学では特待生で、授業料は全て免除されたと言うから、特別に成績が良かったのだろう。頭が固い感はあるが、仕事は出来る。後工程の設備を私から引き継いで担当し、しっかりと完成させた。
・阿川、名門国立大卒、入社は私の1年下だが、一浪しているから歳は同じ、背は高め、やや太り気味。彼だけは稲山係長が直接指示して外回りのユーティリティー配管などを担当した。最後まであまり目立たなかった。
 
 話は脱線するが、数年後に中山氏の結婚式で司会を務めたことがある。時は真冬の2月、あろうことかその日は東京から東海にかけて大雪で新幹線が運休になり、関西からの出席予定者が数名欠席だった。彼は、自分は前から雨男、小学校の運動会も遠足も雨が多かった、と真面目な顔で語っていた。
 
 電機メーカーはT社に決まった。こちらも重電メーカー3社の(暗黙の)話し合いの結果だったと思う。土木、建築なども受注会社が決まり、それぞれ設計打ち合わせがスタートした。

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