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グリーン車の客

 2009年10月の日記です。
 
 先日広島へ一泊の出張で、大宮から東京で新幹線を乗り継ぎ、広島行きのぞみに乗った時・・・
 
 いつも通り、空席ばかリのグリーン車の窓側に座り、文庫を読みつつ、うとうとしていると、京都で男が3人乗り込んできた。3人ともそろって、50歳前後、中肉中背だが、胸の幅も厚みも相当なもの、頭はきちんと櫛の入った横わけだ。黒いスーツを着ているが、ネクタイは柄もので、黒や白ではない。
 
 一見、その筋と思い、なるべく見ないようにしながら、さりとて、興味もあり、眠気などすっかり消し飛んでそっと観察していた。二つ前の席を回して逆向きにし、前の席との4人がけに座る。乗車してから席を選らんでいたから、指定券は持っていないのだろう。
 
 態度や物腰から、序列は直ぐ分かった。No1が私の前のシートの窓側に背中を向けて座り、no2がその向かいのシートの通路側に座る。No1の足元が狭くならないよう配慮しているらしい。No3はその向かい、つまりNo1の横の通路側だ。
 
 車掌が来ると、No3が立ち上がって切符を求めた。ぼそぼそと話し声が聞こえ、興味深々だが、残念ながら殆ど聞き取れない。ただ、あの仕事は○○が、○○億円で取った、と一言だけ聞こえた。
 
 大阪で男が一人乗り込み、通路に差し掛かると、3人は驚いた様子で、直ぐに立ち上がり、最敬礼だ。乗り込んできた男も略同じような体系だが、柄物のジャケットで、ネクタイはしていない。いや、プライベートだ、と柔和な顔でニコニコしながら、私の横を通って離れた席に座る。直の身内ではないが、大親分といった感じだ。
 
 岡山で大親分が降りる時も、3人は立ち上がり、お見送りする。大親分は、ここで会ったことは誰にも言うなと迫力満点、サングラスを掛けて降りていった。
 
 終点の広島には、迎えが来ており、黒スーツの4人が序列順に、改札を過ぎていく様は、いかにもそれなりの雰囲気だった。


 注:この日記は以前にアップしていますが、手直しして再掲しました。

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