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善く敗れる者は滅びず

 2021年12月の日記です。
 
 この4月に人形町に戻った時に本を半分くらい廃却し、
残る本(冊数不明)を再読している。
 
 北村薫の「街の灯」「玻璃の天」「鷺と雪」の3部作
所謂ベッキーさんシリーズを改めて丁寧に読んだ。
軽妙なミステリーではあるが、戦前の重苦しさが同時に表現され、
今更ながら、考えさせられる。
 
 なかに、「漢書」の含蓄ある言葉の引用がある。
「善く師する者は陳せず」
・「善く陳する者は戦わず」
・「善く戦う者は敗れず」の3節までは解説されており、
「うまく軍を動かす者なら、布陣せずにことを解決する。
しかし、その才がなく敵と対峙することになっても、
うまく陣を敷ければ、それだけでことを解決できる。
さらに、その才がなく実践となっても、うまく戦えば負けない」
と書かれている。
これに続く最後の言葉が
「善く敗れる者は滅びず」だそうだ。
 
 二二六事件の前夜に登場人物が語っている。
日本は、戦争に負け、大勢の命を失ったのだが、
その犠牲を踏まえて、誰でも自由に意見の言える民主国家になり、
国民生活も格段に改善されたのだから、
国のありようとしては、「善く敗れ」たのかもしれない。
 
 国でも個人でも、心ならずも敗れることもあるし、
勝てないと分かっていて戦う事もあるだろうから、
勝ち方だけではなく、負け方も考えねばならないらしい。
そう言えば「負けるが勝ち」との言葉もある。
 
 人生の90%を過ぎたわが身を思うと、
公私ともに、失敗や間違いは枚挙にいとまがない。
事に敗れて意気消沈したことが何度もあるが、
今となっては、それもいい経験、
人生に味が出た・・・・気がする。

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