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大径管工場の建設 8.資料の作成

 設計打ち合わせが一段落し、圧延設備の概要が決まったところで、諸々の資料を作成した。それを元に電気チームその他の会社が関連設備を製作する。
 
 先ず、全の設備の動きを示す運転方案を作成した。機械は人間でいえば体・手足で、それを動かす頭脳がシーケンスだ。私の作成する運転方案を基に電機メーカーがコントローラーの中身、頭脳を組みたてることになる。設備は各種電動機と油圧装置が各種センサーの情報で自動的に動き、シームレスパイプを連続的に製造する。設備の構成、特徴を全て完全に理解し、かつ操業のポイントも熟知しなければ運転方案は書けない。
 
 ともかく、運転方案を作成しなければ先に進まないから、作り始めたが、動かす設備点数が云百とあり、作業量は膨大、出来た資料は紙の枚数で500枚くらいになったと記憶している。それを元に実際に操業する現場の運転マン、保全マンに圧延機毎に詳しく説明する。その都度、操業マンから様々な意見と要望が出て、資料を細かく変更する。この繰り返しで完成度が上がり、いいタイミングで、電気チームを経由して、T電気に渡された。
 
 同時期に、安全設備と称して、操業マン、保全マン用の作業通路を計画する。稼動時の操業マンのやるべきことを把握し、効率よく動けるように、又保全マンの点検作業や、修理時の工事業者の動きなども考慮して、作業通路、機側の作業床、点検用の通路等を計画し、概略図を作成して、製作する業者に渡す。同時に各圧延機の運転室の構想を決める。運転者からが設備の動きや熱間の半製品を充分に確認できるよう、視野図を書いて、細かい位置や高さを決めて建築担当に渡した。
 
 各資料を作成し、改めて設備と操業の理解度が進み、苦労はしたが、私自身の収穫も大きかった。膨大な作業量だったが、(初体験だったこともあり)それなりに面白く、如何にもベテランで何度も経験しているが如く(一見)淡々と進め、必要な期限内に関連部署に提示した。
 
 その頃、建設予定地のすぐ近くに仮設事務所をつくり、山上課長以下のチーム全員がそちらに引っ越した。隅には簡易キッチンがあり、奥の和室には布団も用意され、泊まり込んで生活出来るようになっている。現地工事に備えての臨戦態勢だが、不吉な予感がしていい気分ではない。

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