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[特定社労士試験]第1問(事例)小問(1)の解き方

こんにちは。ににです。(自己紹介はこちら

今回は、第1問(事例)の小問(1)についてお話しします。
※第15回(令和元年度)~第19回(令和5年度)がすべて同じ問題構成・形式のため、その形式に沿っての解説です。今後の試験において、形式が変わる可能性があることをご承知おきください。

なお、試験全体の問題の構成は、以下の記事でご確認くださいませ。

第1問(事例)小問(1)の内容

第1問(事例)の小問(1)は例年、「『求めるあっせんの内容』は、どのようなものになりますか」という形式で出題されます。

設問文としては、以下のような形です。

本件において、特定社会保険労務士として、Xを代理して、Xの立場に立って、本件退職願の取消しを主張し、Xを申請人、Y社を被申請人として「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき都道府県労働局長にあっせん申請(以下「本件手続」という。) をするとして、当事者間の権利関係を踏まえて記載するとした場合の「求めるあっせんの内容」(訴状の場合に記載する請求の趣旨的なもの)は、どのようになりますか。解答用紙第 1 欄に記載しなさい。ただし、遅延損害金の請求は除くものとする。

(令和5年度第19回)

大部分が決まり文句で、試験ごとに違うところは、

本件退職願の取消しを主張し、
と、
ただし、遅延損害金の請求は除くものとする。

の2か所です。(あと、細部の言い回しは毎回ちょっとずつ変わっています)

問題が定型なので、解答としても」を用意してそれに事例の内容を当てはめるだけ、でほとんどの場合大丈夫です。
文字数制限もなく書きやすい設問なので、間違いなく得点できるようにしておきましょう。

型の一例は、以下のようなものです。

Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 ・・・①
Y社は、Xに対し、令和○年○月以降、毎月○日限り金○円ならびに遅延損害金として年3分の割合による金員を支払え。 ・・・②

解答1つ目:地位確認

解答の1つ目には、Xが主張する権利を記載します。
上記の例は、解雇や雇止め、あるいは第19回のように退職願いを提出したなど、XがY社で働けなくなっている場合です。
過去のテーマはほとんどこのパターンに当てはまっているので、まずはこれを目をつぶっても書けるようにしておきましょう。

雇用契約上の権利を有する地位にあること

例の中で使っているこの言い回し、完全に決まり文句として覚えておけば良いのですが、ちょっと不思議な表現ですよね。
単純に「解雇は無効である」と書けばよいのに、なぜこんな表現をするんだろう?と疑問に思うかもしれません。
なぜこういう表現をするかというと、あっせんで求める内容は、「現在どうであるべき」と主張したいことであり、過去の事象を取消または変更する、という形では書かないためです。

これは、過去にすでに起こってしまっていることを変えても、あまり意味がないからです。
過去のことを変えたとして、結局「今どうなっているべき?」という点は解決しません
過去を変えるのではなく、過去の事象を受けての現在の状態について「こうなっているべきだ」、という形で主張する必要があります。

よって、解雇の無効を争うときは、「過去になされた解雇が無効である」と主張するのではなく「(過去の解雇が無効だったら、現在も雇用契約が続いているはずだから)雇用契約上の権利を有する地位にある」という形で主張することになります。

この話は、おそらく特別研修のゼミナールのときに講師の弁護士から説明があると思いますので、出てきたら、「あ、ここの話だな」と思ってニヤリとしてください。

他のパターン

小問(1)の他のパターンとして、「転勤命令を拒否したら解雇された」(平成24年度第8回)、「グループ会社に出向させられたが戻してほしい」(平成28年度第12回)といった場合もあります。
前者の場合、例①の雇用契約上の権利を有する地位の確認に加えて、「○○支店(転勤先)で働く義務がないこと」(「○○支店への転勤命令が無効であること」ではないので注意)の確認も求めることになり、1つ目が2文になります。
後者では、解雇等をされているわけではないので「雇用契約上の地位を有することの確認」は必要なく、「関連会社で働く義務がないこと」の確認を求めます。

解答2つ目:金員の請求

解答の2つ目には、お金の要求が来ます。
「型」を再掲します。

Y社は、Xに対し、令和○年○月以降、毎月○日限り金○円ならびに遅延損害金として年3分の割合による金員を支払え。 ・・・②

これも定型文ですが、いくつか分岐があります。

令和○年○月以降

ここには、支払いを求める期間が入ります。注意すべきは「支払日」で考えるということです。
たとえば、令和6年3月31日に解雇されたとして、給与が末日締め翌月10日払いだった場合、書くべき期間は「令和6年5月以降」となります。
令和6年4月10日には、3月分として通常どおり給与が支払われるはずですから。
この書き方によって、「令和6年4月以降の分の給与を請求している」ということになります。

毎月○日限り

「○日」は、毎月の給与の支払日が入ります。上記の例だと、「毎月10日限り」となりますね。
「限り」は「を期限として」という意味です。深く考えずに覚えちゃいましょう。

金○円

ここには、具体的な金額が入ります。入れるべき金額は、月給としてもらえるはずだったものすべてです。通勤手当も含みます
実際通勤はしてないんだから通勤手当は入れない方が良い、と思うかもしれませんが、入れるべきです。
あくまでもXが請求する内容なので、実務的には貰いうるマックスを書くことになります。試験の解答としても、その内容で書くべきです。少なくとも減点されることはないでしょう。

上記の型の例には入れませんでしたが、賞与も書ける場合は書かなくてはなりません。
その判断は、試験的にはXの言い分の中に賞与のことが触れられているか、によると良いでしょう。
(実務的には、就業規則で賞与がどう定められているかなど様々な要因が絡んでくると思います)

賞与も入れる場合、「型」としては、

毎月○日限り金○円、また、毎年○月○日および○月○日限り、通常勤務していた場合に支給されるべき賞与に相当する金員

という形となります。もちろん、XあるはY社の言い分の中に賞与の額が具体的に明示されていれば、その金額をダイレクトに入れてください。

遅延損害金として年3分の割合による金員

これは、だいたいの場合設問文中に「ただし、遅延損害金の請求は除くものとする。」という但し書きが入っていて、書かなくて良いことが多いです。
(ちなみに私は、この但し書きがあったにもかかわらず、本番でこれを書いてしまいました。本番には魔物が棲んでいます。)
ただ念のため、定型文として覚えておいた方が良いと思います。

そして、この中で1つだけ注意点があります。
年3分」のところですが、この「3分」という割合は、民法で定められている遅延損害金の法定利率です。
一方、労働債権関係の利率として、「年14.6%」という数字も聞き覚えがあるかと思います。(特定ではない)社労士試験の勉強で覚えましたよね。
こちらの数字は、「退職した労働者に対しての未払い賃金」に適用される利率です。

もし、Xが解雇無効を主張しているときに「年14.6%」として請求した場合、退職自体は認めていると捉えられる可能性があり、そうなると、試験の解答としてはかなりの減点となることが想像されます。
過去に出題実績はありませんが、Xが退職自体は認めていて未払い賃金の支払いのみ求めているという場合に限り、3分ではなく14.6%とすべき(その方がXの受け取る額が増えるので)です。

まとめ

第1問(事例)の小問(1)について、考え方・書き方をまとめました。

上記の解説を踏まえて、フルマックスの「型」は、以下のような形となります。

Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
Xが、Y社に対し、○○支店(転勤先)で勤務する雇用契約上の義務がないことを確認する。
Y社は、Xに対し、令和○年○月以降、毎月○日限り金○円、また、毎年○月○日および○月○日限り、通常勤務していた場合に支給されるべき賞与に相当する金員、ならびに遅延損害金として年3分の割合による金員を支払え。 

これを、事例の内容に合わせて取捨選択や微調整をして、実際の解答としてください。
定型文ではありますが、細かい分岐がいくつかあります。しっかり判断できるようにしておきましょう。

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