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日記 2024.5.8(水) ルーツを辿る旅の始まり。

4時半の目覚ましで目が覚める。やや睡眠が足りない。しばらく家を空ける時は朝の支度が一番緊張する。顔を洗ってお化粧をして、髪の毛にアイロンをあてて、歯磨きをして、ひとつずつ荷物をまとめながら、確認しながら進めていく。ここは慎重にやらないといけない。苦手な新幹線のにおいや雰囲気対策にいつもの安心、番茶を連れていく。時間がないからとここを飛ばすとあとで後悔することになると思った。
慎重に準備していたらいつのまにかギリギリの時間になってしまった。少し時間を遅らせたとしても到着時間は1時間ずれる。早起きが苦手のお母さんも無理なく迎えにきてもらえる時間になりそうだったし、迎えが難しければバスで家の付近まで帰ることにすれば良いのでとにかくしっかり準備を整えることにした。お父さんとお母さんにその旨を伝え準備を続ける。結局東京駅には予定の新幹線の出発の1時間前に着いた。田舎行きのしんかんせんは何しろ接続がよくない。ちょうどスタバがも開く時間。椅子に座って30分ほど待つ。ドリップコーヒーをナルゲンに入れてもらってホームに上がる。今日の東京駅は拍子抜けするほど空いている。人と違う動きをすることができてめちゃくちゃ嬉しい。切符売り場の方の丁寧でさりげない対応が気持ちいい。いい朝が広がっていく。

長い新幹線での移動中の過ごし方。私は乗り物酔いがあるので新幹線で本を読むことができない。本が読めたら外など眺めながら移動する景色の中で集中して読書に浸れるのだろうなとときどき思う。憧れもあり何度か試したことがあるがすぐに込み上げてきて無理だった。睡眠が足りていないと特につらい。近ごろは満足するほど眠れているのでもしかすると本が読めるかもしれない。それなのに本を読もうとしないのは、移動中に音楽を聴く楽しみを覚えたからだ。移動する景色をぼーっと眺めながら音楽を聴くというのは、もしかすると本を読むよりも楽しいことかもしれない。ラジオを聴くのも楽しい。移動中はなるべく目を休めて耳から聞こえる音に集中する。好きな歌を聴く。思いっきり歌いたくなることもあるが体だけ揺らして我慢する。

新幹線は西に向かって進む。富士山が近くなると少しずつ緑の景色が増える。緑を見るとやっぱりただただ嬉しい。田舎育ちだということをどんどん思い出していく。いまの時期の植物たちは若々しくきらきらと美しい。思わず目尻も下がる。今日の富士は雲に覆われて頭を隠していた。
番茶をごくり。安心感が体の中に広がる。肩の力が抜けていく。いつもと違う景色、におい、緊張が番茶ですべて洗い流されていく。いままでこんな感覚になったことがない。適当なお茶を買って旅をしていた日々を後悔するくらい番茶があると心強い。

まだまだ西に向かう。音楽を聴きながら、なぜかいままでお付き合いをしてきた人のことを思い出してきた。わたしはこれまでしっかりと付き合った人のことをひとりもきらいになっていない。きらいなふりをした時期もあるけれどいまもどこかで好きなのだと思う。これまで付き合った人とは全員お別れしたということになっているが、一度好き同士になって本気でぶつかり合った時間をわたしは忘れないし大切にしている。縦にも横にも並べず、比べることもない。元住人以外はもう連絡を取るすべもないが。

恋愛について、いつも本気でぶつかってきたから小さな失敗はたくさんしたけれど、大きな失敗は一度もしたことがない。毎週浮気をされたり、浮気をしてみたり、同時に二人の人を好きになってしまったりと結構いろんなことはあったと思う。そんな時も人に相談したことは一度もなくて、ちゃんと本人と話し合ってきた。気持ちの変化は隠そうとしても絶対にバレる。遠距離も同棲もしてみたけれど、物理的な距離はわたしには関係なかった。遠距離でも毎日その人のことをみていればたとえ浮気をされてもすぐに気づく。毎日一緒に過ごしていても自分を出さない人のことはいつまで経っても何にも分からない。
わたしは好きになったら浮気をするということはない。浮気をした、と言ったのはその人の本気を引き出したくてわざとしたのだと思う。その時も浮気をしたことを家に帰ってすぐに伝えて話し合った。でも結局わたしの気持ちをうまく伝えきれず、その人の心は逆に離れていってしまった。彼もずっと浮気をしていたけれど、人の浮気は許せないということだった。

わたしは好きになる人を声で選んだことはあっても、容姿で選んだことが一度もない。感覚を研ぎ澄ませてこの人だと思った人を絶対に振り向かせるという気持ちで好きだと伝える。振られたとしても諦めきれなければあれやこれや試していくといつかは必ずお付き合いすることができてきた。恋愛に関してわたしはずっとずっと自分の気持ちを素直に表現できてきた。就職活動はできなくても恋職活動はすべてうまくいっている。それは多分いつも本気だったからなのだと思う。好きになったら簡単には諦めない、しぶとい性格だということを恋愛で知った。好きという気持ちを最大限に盛り上げうまくいかせるという実験の日々が、いまのわたしの生き方を随分支えてくれていると思う。

もしかするともうわたしはこのままひとりで生きていくことになるかもしれない、とは思いつつ、これからがわたしの時代になるともなぜか感じている。毎日ひとりで安心の中にいて楽しめているからどちらでもいい、というのが本当のところなのだが。でもやっぱりときどき誰かにおはようとおやすみを言ってみたいと思う時があるのだ。

むかしの恋愛などを思い出している間に新幹線はどんどん前に進んで名古屋を過ぎた。ここからはひと駅の間隔が狭くなるので時間が過ぎるのをもっと早く感じ始める。あっという間に実家に着いてしまうだろう。
今回の旅、自分の辿ってきた道を一度振り返るにはいい時期なのかもしれない。

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