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脱出シリーズ

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光の差す方へ脱出

光の差す方へ脱出

太陽の光が街を照らしてキラキラしている。

道に落ちる草木の影が美しい。
頬を撫でる花の匂いに気づく。
風に揺れる洗濯物は自由だ

寒い冬を越えた先に感じる、春の麗らかな暖かさが好きだ。

とある休日。久しぶりの早起き。6時にアラームをセットして、7時に家を出る。

何通りのルートの中から最適な乗換えを選んで計画していたが、まさかの山手線で逆方向に乗ってしまう。
こういうところがあるから私は自分を

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銀河の果てまで脱出

銀河の果てまで脱出

中学生のころ、母から譲り受けたラジオ。
夜9時ごろからやっていた、ROCK KIDS 802というラジオ番組が大好きで、平日の夜の楽しみだった。

部屋を暗くして音を楽しむ。そこで邦ロックと出会い、ライブやフェスというものを知り、いつか生で音楽を体験したいなと思いを募らせていた。

大学生になり、行動範囲が広がり、ライブやフェスに行ってみたい!と思っていたが、同じ音楽が好きな友人がいるわけでもなか

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這いつくばって脱出

這いつくばって脱出

ビルの二階にある、チェーン店のカフェが好きだ。
都会でも、旅行先でも、地元でも、街中でいつものカフェに出会うと安心する。

ああ、知っている場所がある。何かあってもここに入ればいつものコーヒーが飲めるというお守りのようなものなのかもしれない。

特に、ビルの二階にある店舗で、カウンター席がお気に入りである。窓からの眺めは良くてもよくなくても、なんならすりガラスで見えなくても問題はない。

昔から高

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ささやかな脱出

ささやかな脱出

私の母は、一人で外に出かけることを「脱出する」と言う。特別家に囚われているわけではない。「今日脱出するの?」は「今日出かけるの?」という意味である。娘の私はこの表現が気に入っている。ワクワク感があるからだ。

こう言っていたのも学生時代の記憶。実家を脱出している私は現在一人暮らし中である。出不精なので休日は人との予定がない限り家にへばりついている。

春の開放的な空気に流されてなんとなく少し遠くに

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