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『スキップとローファー』がめっちゃ良かったので凄さを語ります

 僕には2つ上の姉がいるんですが、子供の頃は彼女の影響で女の子向けの作品に触れる機会が結構あって。

 保育園に通っていた頃はよく姉と一緒に『美少女戦士セーラームーン』を観ていましたし、小学生の頃は姉が集めていた少女小説を片っ端から読んでおりました。


美少女戦士セーラームーン

 だからというわけではないんでしょうが、女の子向け作品も普通に好きでよく観ております。今季だと『薬屋のひとりごと』にハマっておりますし、1週間前には前々から興味があった『スキップとローファー』にどハマリしてしまいまして(笑)

スキップとローファー

 この作品の最大の魅力は、キャラクターだと思います。

 キャラクターの良さもそうなんですが、この作品ほどキャラクター同士が保管し合っている作品もそうないなと。まず主人公の岩倉美津未ですが、1話の彼女の描き方が本当に良かった。あえて他のキャラの心情をあまり描かずに美津未1人に絞った事で、『彼女から見た世界』というのがよくわかる作りになっていました。

 例えば美津未が教室で後ろの席の江頭ミカに挨拶した時に、


「よろしくね!」と声をかけたら



「あぁ…うん、よろしく〜」みたいな感じで軽く流される(笑)

 でショックを受けているところに美津未が登校中に出会った志摩聡介が現れ、連絡先を交換する。志摩くんはとてもイケメンであり、入学早々女子達の視線を釘付けにしていまして。

 連絡先を交換した後、今度はミカの方から話しかけてきて、「連絡先交換しよ〜」などと言ってくるわけですが…。

 はっきり言って嫌な女ですよ(笑)

 でも1話が面白かったのは、ここでわざわざミカの本音をセリフにしなかったところなんですよ。

 あえて美津未の心情だけにスポットライトを当て、「さっきはタイミングが合わなかっただけだったんだ〜!」と心の中で言わせる。美津未は勉強だけはできるが鈍感な子で、他人の悪意に気付かない。めっちゃいい子なんです。

 美津未の目にはどう見えてるかだけを描く事でちょっと嫌な出来事もなんとなく面白く見せて、物語全体の空気を軽くする事に成功している。少女向け作品はやはり女子の人間関係を切り離せない部分があるじゃないですか。男同士よりも複雑で、悪い言い方をすると陰湿っぽくなっちゃう雰囲気。少女向けでイジメ的なエピソードを描く作品が多いのもここらへんが理由だと思うんですが。

『スキップとローファー』はそれを美津未視点で描く事によって、「この作品はそういうものも面白く描きますよ」と宣言した形になった。

 であると同時に、陰陽の陰の部分もちゃんと描いています。

 先ほど紹介した嫌な女こと江頭ミカですが(笑)正直僕はこのキャラが作品の中で一番好きでして。

 ミカは、美津未が持ってない陰の部分を背負わされているキャラクターなんですね。美津未って本当に陰の部分がないキャラで、正直少し非現実的。もちろん彼女は作品の色として機能しているのでその存在自体にケチをつけるわけじゃないんですが、物語として面白くするにはやはり陰の部分も必要じゃないですか。

 ミカは美津未が持っていないコンプレックスや嫉妬といった悪感情を持ち、常に悩んだり恥をかいています。無理に志摩とお近付きになろうとしたのを見破られて赤っ恥をかいたり、努力して綺麗になろうとも本物の美人である村重結月には敵わず、打ちのめされたり。

 結構キツめの性格をしているんですが、5話で昼休みに体育館で美津未とバレーの練習をしている時、利用時間でないのに遊びに来た3年生男子に邪魔をされても何も言い返せない。

 彼女は元々小学生の頃には太っていて、性格も暗かった。おそらく男子にバカにされていたんでしょうが何も言えず、体を丸めるしかなかったわけです。

 この回想シーンでもわかるように、小学生の頃のミカはとても地味な女の子です。洋服もおそらくお母さんに買ってきてもらった地味服で、意地悪く隣に細身でおしゃれっぽい女の子まで描いている(笑)

 こんな女の子だったわけですから、根本的には自信がないんですよ。自信がないから生まれ変わろうとして一軍女子になろうともがき、美津未のようなダサい女の子には目もくれようとしない。でも志摩と仲が良いのを知った途端友達になろうとする(笑)

 2話では美津未の石川訛りをバカにするシーンもあるんですが、序盤はしつこいくらい嫌な女として描かれているんです。でも段々と仲良くなっていき、今度は美津未のまっすぐさにコンプレックスを抱くようになる。

 本当に美津未とは正反対のキャラなんですが、あえてこういうキャラをライバルではなく友達キャラにする事で陰陽を補完させているわけです。

 ミカはいわば裏主人公みたいなもので、途中から彼女のストーリーも進行しだすんですよ。

 美津未が上京した先で一緒に暮らしている叔母(叔父)のナオちゃんと途中で出会うんですが、彼はミカが抱えているコンプレックスを一発で見抜き、可愛がり始める。お泊り会で途中で嘘ついて抜け出そうとしたミカを戻してやったりと、成長を後押ししてあげるわけです。

 大人からしたらミカなんて可愛くて仕方ないじゃないですか(笑)子供時代の僕は美津未みたいな鈍感な子でしたが、世間一般からするとミカみたいな青春時代を送っていた人も多いと思うんですよ。

 そういう、非現実的で鈍感な美津未とリアルで繊細なミカを対比させる事で、物語に文字通り陰影が付いて面白さを引き立たせていると感じます。

 彼女達だけではなく、他のキャラにしてもそうです。

 金髪美女で帰国子女の村重結月は、美人すぎる故にちゃんとした友達がいなかった。帰国子女なので幼馴染すらいない。

 11話で、美津未が初めて孤独を感じるシーンがあるんですが。

 学園祭に、ミカとかクラスメイトの中学校時代の友達が遊びに来るわけです。でも美津未は石川から上京してる身なので、来てくれる友達が1人もいない。

 そこで「あ、みんな地元が東京なんだ…」と気付いて寂しくなるわけですが、彼女はその後結月の下に向かうんです。


 そこで彼女が描いた飼い犬の絵を見たりするわけですが…本当に意地悪いなと思うのが、 

結月だけ来てくれる友達とかを描かないんですよ(笑)

 ミカやもう一人の友達である久留米誠の友達は描いてるので、結月の友達だって出して良いはずなんですよ(笑)まあそもそも友達と呼べる友達がいなかったというのはこの数話前でちゃんと語られていますし、ここではあえて説明せずに描いてるというのもこの作品の良さなんですが。

 彼女もまた他と対比させるようなキャラで、彼女はミカがどれだけ努力しても手に入らない美貌を持っているし、誠が気後れするほど天性の陽キャラ感、一軍女子感を持ち合わせている。

 でもそんな結月本人は美人過ぎるが故に中学生時代クラスメイトとの人間関係をギクシャクしてしまったり、中身は結構オタク気質というか、主役より裏方をするのが好きなタイプの人間なのに、その美貌のせいで誠のような女子達からは敬遠されてしまう。

 キャラクター同士、お互いがお互いの持ってない部分に憧れとコンプレックスを抱いているわけです。

「物語に大事なのは欠落と補完である」と小説家を目指していた頃によく教えられていましたが、『スキップとローファー』はまさにそんな物語の基本を押さえている作品と言えます。

 で先ほども書いたように、お互いがお互いにコンプレックスを抱いているという普通なら暗くなってしまうような展開でも明るい感じで描けているのは、ひとえに美津未を主人公にしたおかげであると言えるでしょう。1話で美津未の目を通した世界を見せる事で、それを可能にした。返す返すも1話がこの作品の評価を決定付けたと言えます。

 あと、この作品には変化球もある。美津未の相手役である志摩は元々、彼の親友曰く「仲間内では一番楽しそうにしている奴」だった。美津未のようなみんなを笑顔にするキャラだったわけです。

 もちろん作品内の志摩も明るくて良い奴ではありますが、彼は子役時代に犯したあるやらかしで子役仲間の西城梨々華を巻き込んでしまい、とても後悔している。梨々華は志摩を恨むようなセリフを度々口にしており、ダメな共依存関係を作ってしまっていると。

 つまり志摩と梨々華は陰陽の陰と陰なわけですよ。でもこれが最終回には変わる。

 志摩は子役時代、母親を笑顔にする為に頑張ってきた。それ以外の理由はなく、楽しいと思った事はないと語っていたわけですが、それが違う事に最終回で気付いてしまったわけです。

 それと同時に、変わろうとする自分自身にも気付いた。それに気付かせてくれたのが美津未であり、クラスのみんなである事も気付く。

 そして梨々華に対して、「ありがとう」を言う事で、陰陰の関係から脱却した。そういうストーリーも同時に展開させていて、本当にキャラクターを使うってこういう事なんだなと学ばせていただいたというか。

 キャラクターの関係、そしてその見せ方。

 あとタイトルですね。観ている間、ずっと「なんで『スキップとローファー』にしたんだろう?」と考えていたんです。タイトルは作品の顔ですし、その顔であるタイトルを物語とあえて関係なさそうなものにした理由ってなんなんだろうと。

 でも違うんですよね。

 これは僕の推測であり、作家先生のインタビューで違う理由が語られていたら申し訳ないのですが、これも補完なんですよ。

 ローファーは学生が履いてるような靴であり、画像だとこんな感じ。

 踵の部分が硬そうで、いかにもスキップしたら良い音が出そうじゃないですか(笑)

 要はそういう事だと思うんですよ。スキップする時、靴によって音も変わる。ローファーは、歩き方によって良い音を奏でられる。スキップは美津未であり、ローファーは他のキャラクターだと考えると納得できます。

つまり作者の方は、作品の内容から逆算してタイトルを付けたのではないかと。

 そう考えると、凄く腑に落ちました(笑)

 というところで、以上になります。いい作品に出会うと、本当に人生が充実します。2期も楽しみにしたいですし、漫画も買いたいなと思っております(笑)石川にも行きたいですね。3〜4月には政府からの旅行補助金も出るみたいなんで、この機会に行ってみようと思います!

 それでは皆様このへんで。この記事を最後まで読んでくださった方、また未見で少しでも『スキップとローファー』に興味を持たれた方は、是非観てみてください!

 ではでは〜。

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