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「うひぃ〜」の感触。

毎朝、離乳食の時間は「こまつな王」への謁見の時間だ。

毎日、僕が王を抱っこしてひざに乗せ、奥さんが食べものをスプーンで口に入れる。僕が王のからだを両腕で支えているとき、このところ、王は僕の右手をひじかけのように自分の手の置き場として使う。

食べもの、特に小松菜と豆腐を食べるとき、王は口に手を持っていき、それらの感触をたしかめる。それから、そのまま僕の右手に自分の手をそっと置く。

「うひぃ〜」となるのはこの瞬間だ。
王のちいさな手はこまつなと豆腐にまみれて、緑と白の混じったなにかになっている。それがそのまま僕の手につく。自分の中の衛生観念が揺れる。

さらに今日は、僕の手をとって、人差し指を自分の口に入れた。
最初は食べものと僕の指とは分けられ、交互に口に入れていたけれど、途中からおかずの一つであるかのように、食べものの後すぐ僕の指をくわえるようになった。

小松菜→僕の指→豆腐→僕の指……毎回「うへぇ〜」の感触はつづき、40余年の人生で体験したことのないゾクゾクが体を走った。

ごはんを食べたら、トイレに行ったら、外から帰ってきたら、よごれた手を洗いましょう。そうやって幼い頃に教わった「きれいな手」の価値観が、こまつな王によって粉砕されていく。

「うひぃ」「うひゃぁ」「うへぇ」
悶絶しているうちに涙がでてきた。しかし逆らわず、されるがままにしておく。

こまつな王との生活は、想像もしなかった新感覚に僕を導いてくれる。
しかしまさか、40年以上生きてきてなお、こんな新鮮さに出くわすとは。
うひぃ〜。

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