狐火2

狐火

澤 祐典
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うちのそばの集会場から、夏祭りの練習をする笛太鼓の音がします。
そのたび「ああ、日本だなあ」と感じるのです。
夏祭りって、なんとも言えない情緒がありますよね。

「狐火」というのは、火の気のないところに、提灯または松明のような怪火が一列になって現れ、ついたり消えたり、一度消えた火が別の場所に現れたりする現象のことだそうで、小さい女の子の目には、もしかしたらお祭りの提灯がそんなふうに見えるかも、と思ってタイトルにしました。

 * * *

あれはいつの頃か
わたしが幼い頃
あなたとふたりで
手をつないで
浴衣のすそが揺れた

母が結った髪が
ほつれて風になびき
色づくぼんぼり
手をつないで
「はなさないでね」と握った

このまま ふたり
なんにも 言わない
夜道は 暗いから
思い出させる こともあるね

もう あの日は 戻らない
時間を とめてよ
あなたと行った 夏祭りの日

ねぇ 今年も 梅雨が明け
季節が すぎます
わたしを置いて 長い影法師

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