見出し画像

川と海でシーバスの”引きの強さ”は変わるのか?

科学論文を釣り情報へ還元する第32回目の投稿です。

今回も前回に引き続きシーバス(スズキ)の行動をテーマにしました。

シーバスアングラーはご存知の通り、シーバスは河川でも、河口でも、沿岸域でも狙うことのできる、とてもゲーム性の高いサカナですよね。

今回調べてみたのは、「海水(塩水)」と「淡水」でシーバスの遊泳能力は変わるのか?というテーマです。

今回もヨーロッパシーバスという欧州の広い範囲に生息するシーバスを対象にした研究です。
Chatelier, A., McKenzie, D. J., & Claireaux, G. (2005). Effects of changes in water salinity upon exercise and cardiac performance in the European seabass (Dicentrarchus labrax). Marine Biology, 147(4), 855-862.

今回の研究では、2つの実験で構成されていてます(下記イラスト参照)。

画像1

実験1つ目は、海水で慣れさせたシーバスを濃度の薄い海水や淡水に投入し、数時間後に遊泳能力を測定しています。

また、実験の2つ目として、淡水に慣れさせたシーバスを海水に投入し、遊泳能力を測定する試験も行いました。

結果からお話しすると、シーバスは海水でも淡水でも遊泳能力は変わらない、ということがわかりました。

なぜ海水でも淡水でも遊泳能力は変わらないのでしょうか?

一言で言ってしまうと、浸透圧調節が並外れているということです。
(塩分濃度が変わってしまっても、血漿浸透圧や組織内の水分量の変化を抑えることができる・・・という意味のようです)

画像2

つまり、浸透圧調節が優れていることで、環境が急変しても心臓や骨格筋の機能を維持し、遊泳能力も塩分変化前と同程度の能力を発揮できるということです。

このような例は海水~淡水間を異動する(両側回遊できる)ヨーロッパヒラメでも報告があります。

その一方で、ギンザケやチョウザメの例では逆の結果が出ています。
淡水から海水へ移行させる実験の結果、浸透圧調整に負担がかかり、心臓や骨格筋の機能低下を引き起こし、結果として海水へ移行してしばらくは遊泳能力が著しく低下することが知られています。

このように、浸透圧調節の良し悪しによって代謝など身体への負担が違うことで、遊泳能力に差ができるわけです。

ということは、河川(淡水)や河口(汽水)、沿岸域(海水)、シーバスをどこで釣っても、最高のパフォーマンスを魅せてくれるということが言えますよね。
(もちろん、その時の別の要因でコンディションが違うこともあるのかもしれないですが・・・)

それでは、また次回お会いしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?