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トラウトが大好きな場所はどこだ?

科学論文を釣り情報へ還元する第29回目の投稿です。

今回のテーマ:トラウトが大好きな場所はどちら?

今回ご紹介するのはこちらの論文です。
Morita, K., TSUBOI, J. I., & Matsuda, H. (2004). The impact of exotic trout on native charr in a Japanese stream. Journal of Applied Ecology, 41(5), 962-972.

この論文では、北海道のある河川に侵入した外来種のブラウントラウトとニジマスが在来種のアメマスへどんな影響与えてるのか?を調べています。


これまでご紹介してきたニジマスやブラウントラウトは日本でも定着したと言える外来種として有名ですよね?


一方で、アメマスは主に東北以北を中心に生息するイワナの仲間です。
ご存知の方も多いと思いますが、このサカナは海へ降海(海アメと呼ばれます)し、大型化するため(80cmオーバーもザラ)、釣りの対象として大変親しまれているサカナです。

この論文をまとめると、下記のようなイラストになります。

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プールをめぐる三つ巴の戦い

ニジマス、ブラウントラウト、アメマスの全てが瀬や急流などの渓流によくみられる場所よりも、淵や落ち込みなどの、いわゆるプールを好む傾向にありました。

以前の記事でもご紹介したように、サケマスの仲間たちはエネルギー消費を抑え、時にはエサの待ち伏せにも利用可能なプールを好むのです。

増水時のニジマスのプール利用はこちら↓↓

ブラウントラウトの休憩について↓↓


今回の研究の結果から、ニジマスやブラウントラウトが放流などによって河川へ侵入した後、まずプールを目指しそこを拠点として拡大した可能性が考えられました。

プールでの外来2種の密度が高まった結果、流れの速い場所にも生息場を求めて拡大したようですが、アメマスは結果的にこの争いに負けてしまったようです。

今回の研究では、アメマスは河川全域で分布が確認できたものの、より上流域へと追いやられてしまったそうです。


なぜアメマスは敗北したのか?

上流域へと追いやられてしまったアメマスですが、ニジマスとブラウントラウトから追いやられた理由はそれぞれ違うようです。

まず、ニジマスとアメマスの関係ですが、(この河川では)両種ともに陸生昆虫をはじめとした漂流するエサを中心に狙う特徴がありました。
(当然、昆虫以外もエサとして利用されています)

つまり、エサが共通していたがために、エサ場の取り合いが主な理由となるそうで、観察の結果、ニジマスとアメマスは頻繁に相手を攻撃しあう姿が目撃されています。

結果的に、プールをニジマスに独り占めされていくにつれ、流れの速い場所でアメマスは増加していきましたので、アメマスが敗北宣言をしたような状態です。

こういったプールを好むマスたちの関係はギンザケとスティールヘッドの間でも観察されているそうです。

次にブラウントラウトとアメマスの関係ですが、これはエサ場の取り合いではなさそうです。

アメマスは流れてくる昆虫を中心に食べていただろうと考えていますが、どちらかというとブラウントラウトは魚食性が強いことで知られます。

そうなると、勝敗を分けたのでしょうか?

筆者らは、次の2点についてアメマスが警戒したのではないかと考えたようです。

一つ目は、ブラウントラウトとアメマスの産卵場所の関係です。

この2種は似たような場所に産卵するようですが、アメマスが10月、ブラウントラウトが12月とブラウントラウトの方がやや遅いです。

その結果、アメマスの産卵場でブラウントラウトも産卵するため、孵化以前から孵化中のアメマスの仔稚魚たちが死亡してしまう可能性があり、それを避けたのではないかと考えられるわけです。

二つ目は、ブラウントラウトが魚食性のため、他の在来のマスたちの稚魚を捕食してしまう可能性です。

こういった2つの可能性から、アメマスがブラウントラウトの多くいる場所を避けていったのではと考えているようです。

さて、今回のお話はいかがでしょうか?今回は外来種は在来種を脅かしているからダメだという話ではなく、これを釣りに生かす見方をしていきたいと思います。

例えば、その河川に生息するマスの仲間たちはどんな生態系を創り上げているのか?また主要なエサは何かということを考えることで、その河川に合わせた狙いをつけることができますよね。

やっぱり河川をよく観察して、何度も通うことが攻略の王道なのでしょう。

そう言えば、ニジマスとブラウントラウトの争いってないんでしょうかね・・・
(今回、私には読み解くことができませんが・・・)

それではまた次回お会いしましょう。

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