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深く刺さったフックは無理にはずすな!

科学論文を釣り情報へ還元する第11回目の投稿です。
今回のテーマ:深く刺さったフックは無理にはずすな!

今回ご紹介するのはこちらです。
Aalbers, S. A., Stutzer, G. M., & Drawbridge, M. A. (2004). The effects of catch-and-release angling on the growth and survival of juvenile white seabass captured on offset circle and J-type hooks. North American Journal of Fisheries Management, 24(3), 793-800.

この論文では、シーバスの釣りに適する針の種類やキャッチ&リリース時の死亡率に関して調べています。

シーバスとは言っても今回のホワイトシーバスは、北米西岸に生息し、体長が最大1.5m以上に成長するなかなか巨大なシーバスです。

この論文を結論を一言でまとめると、
オフセットサークルフック(いわゆるネムリ針)とJ型フック(通常のシングルフック)には、釣果効率に差はないが、オフセットサークルフックは口を貫通し内臓部など深くにフッキングしてしまう可能性があるそうです。その結果、内臓部へ達したフックの損傷によって死亡率が高くなる、ということでした。
また、内臓部へ刺さった針は取り外すのではなく、深く埋め込んだフックをそのままにしておくと生存率が向上するそうです。

針による死亡率や成長への影響

針による死亡率は以前の記事でサケ科魚類について報告しましたが、
今回のシーバスでも「フッキング場所」がサカナへのダメージには重要なポイントになるようです。

今回の場合、オフセットサークルフックではフッキング後70%以上が口を貫通し、(内臓などがある)より深い位置にフッキングしてしまうことがわかりました。
この結果、死亡したシーバスの全てが内臓に達する損傷を受け、5日以内に死亡しています。

中でもフッキング後のファイト中に針が内臓を破ってしまった個体の死亡率が高かったそうです(死亡全体の31%)。

全ての死亡例が5日以内に発生していることからも、かなり直接的なダメージがあったことを物語っています。
こうなると、フッキング中は「バラす」ことだけでなく、サカナへのダメージも気にしなければなりませんね・・・・

釣り試験後の成長率は、オフセットサークルフックで釣られたサカナの成長率はやや高いようですが、大きな差はなさそうでした。

一方で、深くフッキングしたサカナは浅くフッキングしたサカナに比べ成長率が25%ほど低いことがわかったそうです。

深く刺さったフックは無理にはずすな!

深く刺さった針を無理に外したサカナ(死亡率65%)と、埋め込まれた後そのまま様子みたサカナの死亡率(死亡率41%)の差はなんと25%近くに開いています。

ちなみに、ブラウントラウトやニジマスで似たような試験の結果でもその差は3倍違うそうです。

深く埋め込まれた針を無理やり外そうとすると、食道などの繊細な器官が引き裂かれ死亡に直結する可能性があります。
では逆に、埋め込んだままにしておいた方が、なぜ死亡率は高まるのでしょうか?

これについては今のところメカニズムは解明されていないそうですが、
胃での消化に伴う組織の状態が関与しているのではないかと筆者は考えているようです。

私もニジマスを釣った際に食道奥深くまで針が残ってしまい、無理やり外そうとしたところ、そのまま死んでしまった苦い経験がありました。
(その後、持ち帰り美味しく頂きました・・・)

とにかく、深く刺さった場合は焦らず、ラインを切って回復を待った方が良いのかもしれませんね。

さて、今回はシーバスの仲間のキャッチ&リリースに関する内容でした。
もしフッキングして深く刺さったら、やっぱり私は焦って無理やり外そうとしてしまいますが、ダメなんですね。
落ち着いてダメージコントロールしてあげることがサカナにとっても良いこととわかりました。

それにしてもこのホワイトシーバスは本当にデカい。
古くから漁獲制限もされているようですが、なんと71cm以下!
こちらのシーバスならランカーサイズにだいぶ近いですよね。。

また次回お会いしましょう。

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