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続・神出鬼没の怪魚、イトウ

科学論文を釣り情報へ還元する第28回目の投稿です。

今回のテーマ:続・神出鬼没の怪魚、イトウ

前回に引き続き、幻の怪魚イトウに関する論文をご紹介します。河川から汽水域までの行動パターンを研究したテーマの2つの論文をご紹介します。

Honda, K., Kagiwada, H., Takahashi, N., & Miyashita, K. (2014). Movement patterns of adult Sakhalin taimen, Parahucho perryi, between stream habitats of the Bekanbeushi River system, eastern Hokkaido, Japan. Ichthyological Research, 61(2), 142-151.


Honda, K., Takahashi, N., Yamamoto, K., Kagiwada, H., Tsuda, Y., Mitani, Y., & Miyashita, K. (2017). First documentation of detailed behaviors of endangered adult Sakhalin taimen Parahucho perryi in the Bekanbeushi River system, eastern Hokkaido, Japan, using bio-logging and acoustic telemetry concurrently. Ichthyological Research, 64(3), 357-364.

これらの論文では、イトウが河川から汽水域の、どの水域を生息地として利用しているのか、また昼夜の行動にどのような変化があるのかを調べています。

今回の論文をまとめると、上流域でイトウはあまり動かず、下流域では積極的に移動している、また黄昏時は積極的な行動をみせており、こういった行動は採餌戦略に影響されている可能性がある、ということでした(下記のイラスト参照)

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上流のイトウ、下流のイトウ


50~80 cmのイトウを追跡した結果、1日当たりの移動距離は40~1,400 m前後とかなり個体の差があったようです。

40 m・・・これって我々で考えても一日中ほぼ動いていませんよね。
しかも、上流域と下流域にそれぞれ移動したイトウではそれぞれ行動パターンが違います。

まず、上流域に比べ下流域の方が移動が活発だったそうで、これはどうも採餌戦略(エサの探し方)に違いに原因があるようです。

下流域から河口付近汽水域にはキュウリウオの仲間、チカやシラウオといったイトウのエサになりうる魚類が豊富で、イトウはその群れを追いかけまわすことでエサを確保しようと考えた可能性があります。

一方で、上流域ではそういった魚類はそこまで多くなく、動き回ってもあまりメリットがないと考えられます。

そこで上流域のイトウは逆に「待ち伏せして」餌となる魚類の他、昆虫などを虎視眈々と狙っていたというのです。

上流域のイトウは深いプールや河畔林がせり出してカバーになっているような場所選んでいる傾向もあったそうで、これは捕食者(ワシなど)を避ける動きとも考えられます。

エサの食べ時は黄昏時

では、一日の中で最も活発に移動するのはどの時間帯なのでしょうか?


やっぱり、薄暮(黄昏時)の時間帯なんですね。これは釣り好きなら皆さんご存じの、朝マズメ&夕マズメにあたりますよね。

この時間帯は夜行性と昼行性の生物どちらのエサも狙える時間帯であり、エサとなる生物が突然の攻撃に気づくのが遅れることから、イトウにとっては最も都合の良い時間帯と言えるのかもしれません。

自動車の運転の際には薄暮時間の交通事故が多くなるというように、やはりエサとなる生物にとっても危険な時間帯なのですね。

さて、今回はイトウの河川上流域から下流の河口(汽水域)までの行動についてみていきました。

このようにみていくと、同じ水系の川の中でもイトウの狙い方も様々かもしれませんね。

それではまた次回お会いしましょう。

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