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「川の主」を釣るには?

科学論文を釣り情報へ還元する第30回目の投稿です。

今回は「川の主」を釣るには?というテーマを考えてみたいと思います。

川の主と言えば、レトロゲーム「川のぬし釣り」や「釣りキチ三平」の巨大イワナの回でおなじみですよね。

言ってしまうと味気ないですが、要は「その川に1尾か2尾しかいないような大型のトラウト」はどんな場所に多く存在し、また、どのような川で出現率が高いのか?というのが私たちが知りたいところですよね。

フライフィッシング発祥の地、イギリスの2つの河川でトラウトを含む10種類以上のサカナの生息パターンを同時に調べた研究があります。

Prenda, J. O. S. É., Armitage, P. D., & Grayston, A. L. A. N. (1997). Habitat use by the fish assemblages of two chalk streams. Journal of Fish Biology, 51(1), 64-79.

この研究の結果、大型トラウトと他のサカナたちの生息パターンには明らかに違いがあることが報告されています。

当たり前ではありますが、河川の同じ区間において多くのサカナが他のサカナと一緒に同居しており、今回の調査地となった2つの河川でもだいたい3~6種が同じ場所で捕獲されました。

しかし、唯一の例外はトラウトでした。

というのも、トラウトは河川全体の40%以上の場所で単独で生活しており、そこに生息するトラウトの最大体長と他のサカナの生息密度(バイオマス)は逆相関することがわかったそうです(下記のイラスト参照)。

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つまり、トラウトは他のサカナと同居せず、ある場所(例えば、淵とか)を占有し、大型になるほどその傾向が強まるということを示しています。

こういった特徴の背景には、「競争的排除」と「捕食ー被食関係」があります。

競争的排除とは、いわゆる「縄張り争い」を意味し、エサ場や休憩場所など自分たちにとって都合の良い場所を確保するため、他者を追い出す行動です。

「捕食ー被食関係」は言葉通りですが、この場合はトラウトが捕食者であり、他の魚類は被食者となるわけで、当然、被食者は捕食者から逃げ出さずにはいられないわけです。

そうなると、大型のトラウトほどある場所で単独生活を送っている理由は、もうおわかりですよね?

大型になるほどエサを多く求めるため、(自分の仲間を含め)他のサカナ(自分の仲間を含め)を排除し、エサ場自体も拡大するでしょう。また、休憩場所自体も大きい方が良いのかもしれません。

では、どんな川でヌシのような大型トラウトが生息しやすいのでしょうか?

この研究の結果では、主に淵や落ち込みなどの”プール”の規模が大きく、数も多い川の方が大型のトラウトの生息確率が高いとしています。

一方で、渓流など流れの速い場所では、大型のトラウトが示した「他の種の排除」はみられていないことからも、やはりプールという生息地こそ重要になってくるのでしょう。

考えてみると、釣り人の方なら当然と言えば当然と思われることかもしれませんが、実際の科学的背景はこのようなことだったのかと思います。

ニュージーランドなどでは小川のような場所でも大型のトラウト(ブラウントラウト等)が、良く釣れることが知られています。

この”クリーク”と呼ばれる川は、流量もそこまで多くなく、人間が歩いて渡れるほど本当に小さい川なので、大型のトラウトがバシバシ釣れる理由はとても不思議でした。

以前、現地のガイドに聞いたところ「大型のトラウトがいるのは、(魚影そのものの濃さも影響するが)流れが緩く重いクリーク」と言っていたので、クリーク全体が我々が想像する”プール”のような場所なのかもしれませんね。

また、河川改修によって護岸工事が進み、河川を直線化することでサカナが減っているのでは?と言うことは、近年よく言われることですよね。

生息地の特徴を考えると、まず始めに直接的に被害を受けるのは、こういった大型のトラウトかもしれませんね。

今回もなかなか考えさせられる内容でした。

それでは、また次回お会いしましょう。

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