日曜担当②

 帰りのHR。先生が挨拶をしたあと、生徒たちが一斉に動き出し、静まり返っていた教室にわっと雑音が響く。
「今日部活お休みなんだけど、帰りにmoki寄ってこうよ!」今井もまた雑音を響かせる。
「あー俺も今日部活行かないわ。塾あるし、塾までの時間なら行ける。」と薫が応える。
「お前は?」薫の問いに私はすぐに反応した。
「行ける。塾も部活もずっとない。」
「よし、そしたら決まりだね。行こう!すぐ行こう!」そう言うと今井は私のバッグを勝手に背負って小走りに教室を出た。
 今井友子は私の高一からの友人である。出席番号がとなりだったためか、明るい性格の今井は私に積極的に喋りかけてきてくれた。高校に入る前から陸上部のマネージャーになると決めていたらしく、同じ陸上部に入る予定だった私とは話が弾んだ。程なくして私は陸上部を辞めたが、それからも変わらず仲良くしてくれたので彼女は私の本当の友人だったのかもしれない。
「お前のバック軽いしな。」薫は嫌味たらしく言った。確かに私のバッグは勉強するための道具は一切入ってなかったので非常に軽かった。
 麓薫は中学校からの友人である。中学生のときはケイドロや缶蹴りといった小学生みたいな遊びを朝から晩まで一緒にやっていた仲だったが、高校に入ってからは薫はすっかりガリ勉キャラになっていた。成績優秀で同じクラスの人間からの人望も熱く、所属するサッカー部の練習も忙しかったが、それでも塾や部活のない日は私とよく遊んでくれた。
「今日は重い。お前に借す予定だった漫画が入ってる。」私は応えた。すると薫は一瞬驚いたあと、
「取り返すぞ」と呟き、手で拳銃の形を作りながら、今井を追いかけて教室を出た。
 mokiは学校近くのカフェである。私の通っていた木城高校の生徒御用達のカフェであり、平日夕方は学生が多いが、アンティークな内装から特に文化系の学生に好まれており、落ち着いた空間となっていた。
「やっほー明奈〜来たよ〜」
今井は扉を自分だけが入れるくらいの隙間だけを開けてカフェに入っていった。続く薫は後ろにいる私もゆったり入れるほど扉を開けてmokiに入っていった。
「来てとは頼んでないけど。」明奈はテーブルを拭きながら背中越しに応えた。
 mokiの店員の剛志明奈は私たちと同い年で、立北高校の定時制に通いつつ、mokiでアルバイトをしている。今井とは小学校からの付き合いであり、家族ぐるみでの交流があった。
「でも会いたかったでしょ?」そういいながら今井は勝手に空いてる席につき、私達もそれに続いた。
「注文は?」
「今日部活お休みだったんだよ。だから来ちゃった。」 
「注文は何にするの?」
「最近どう?なんか面白い事あった?」
今井のマイペースさには周りも呆れるばかりであった。よくこれで小学校から剛志明奈との関係が続いていると思う。
 剛志明奈は私の不良仲間でもあった。今井とmokiに来たとき初めて彼女とは知り合ったが、夜中にフラフラとパチンコ屋に行く奇行があった私は、そこで偶然、電子タバコをふかしながらスロットを打つ剛志明奈と出会い、そこから夜遊び仲間となっていった。私と剛志明奈の関係を薫と今井は知らない。彼女はバイト先では真面目キャラで通しているのでmokiでは夜遊びの話はあまりしていなかった。
「で、注文は何にするの?」少し語気を強めた剛志に対して、
「アイスコーヒーを人数分。」と私が代わりに答えた。彼女を怒らせてはいけないことはその場の誰よりも熟知していた…

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日曜日担当です。
登場人物のキャラ設定を考えるのは楽しいけど、
文章でキャラを表現するのは難しい。

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