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泣こうがわめこうが幕は上がるし生活は続く

長いあいだ大道具の仕事をしてました。仕事場は劇場やテーマパークです。
数日で終わる舞台もありますが、テーマパークのショーなんかになると数年単位で続きます。ロングラン公演です。

年配の人は覚えていると思いますが、昔うる星やつらにビューティフルドリーマーって話がありました。文化祭の前日がループされ続ける話です。年単位の公演に着くとその話を思い出します。毎日文化祭やっているようなものですから。

毎日やっていると色々な事が起きます。
それでも「ショーマストゴーオン」って言葉があるように正に何が起きても、どんな事があってもショーは終わらせられないって気持ちでやってました。
まあ、でも実際には誰かが怪我をしたら中断しなくたゃいけないし。地震が起きれば中断します。

でもほんとにショーマストゴーオンだなーと実感するのは別の時です。
当たり前ですがスタッフも出演者も生きているし生活しています。
長く公演が続く時は笑顔になれない日があっても不思議ではないです。
裏方は、裏方というぐらいですから変な話泣きながらでも仕事さえやっていれば大丈夫です。
でも出演者はそうはいきません。
特にテーマパークになれば笑顔が基本です。
どんなに悲しい出来事があっても、彼ら彼女らは笑顔で人前に出て行きます。

むごい仕事だな〜と、思う時があります。
でも同時に人生だな〜って胸熱くなります。

別に出演者に限った事ではないです。誰だって失恋しようが誰かが死のうが、生活は続くし働かなければならないから、どんな仕事でも自分の感情にグッと蓋をして働きます。それはもうそれは労働というよりも戦いです。
それこそ「ショーマストゴーオン」です。

ずっと舞台の世界にいた僕は出演者の背中にそれを教えてもらいました。
舞台にもよりますが、裏方は大抵舞台袖にいます。なんだかんだ作業しながら出演者を見送ります。

とても悲しい事があって直前まで泣いていた人。その人が暗い舞台袖でスイッチを入れる瞬間。
その人がカウントをとって暗い舞台袖から飛び出していく瞬間。
舞台袖から見る舞台はとても眩しいです。悲しみや辛さにいったん蓋をして眩しい世界に飛び出していく人の背中にさまざまなモノを感じます。
人生のしんどさ、美しさ、残酷さ、豊穣さ。
そして拍手に送られて帰ってくるその人は、少しだけ微笑みます。少しだけ強くなって戻ってきます。その後ろ姿を見ながらまた胸が熱くなります。

舞台は、人生は、やっぱりとてもしんどいけど素晴らしいもんだと思わせてくれる瞬間でした。


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