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サッカー日本代表対ウクライナ代表 キリンチャレンジカップ2018 レビュー

キリンチャレンジカップ2018、サッカー日本代表対ウクライナ代表は1-2でウクライナ代表が勝ちました。

改めてハリルホジッチ監督が知りたかったことを考える

マリ戦とウクライナ戦を観ていて、ハリルホジッチ監督がチェックしたかったポイントは明確でした。それは、「選手たちがチームのプレーモデルを踏まえてどんなプレーが出来るか」です。

ハリルホジッチ監督は、就任してから一貫して、出来るだけ相手ゴール近くでボールを奪い、相手の守備が整わないうちに、素早く相手ゴール近くまでボールを運び、シュートチャンスを作り出すことで、得点を奪うサッカーを志向しています。

マリ戦、ウクライナ戦では、特に、「出来るだけ相手ゴール近くでボールを奪う」というプレーに力点をおいていたと感じました。そう感じた理由は、ウクライナ代表が自陣深くでパスを交換していて、ボールを奪いにいくのが難しい場面でも、ボールを奪いにいく場面が何度も見られたからです。

チームが繰り返し実行するアクションからは、チームが試合を通して実行したい事が分かります。ボールを奪おうとするアクションの成功率は、お世辞にも高いとは言えませんでしたが、試合開始から続けた理由としては、2点考えられます。

どこで、どこまでボールを奪うアクションが続くか把握する

1点目は、「どこで奪えるのかを把握する」。敢えて無理をしてでもボールを奪いにいく事で、アジア予選より強い相手に対して、どのくらいボールが奪えるのか、どうやったらボールを奪えるのか、どんなプレーをしたら失敗するのか、実戦でテストすることで、確認したかったのではないか。そう、感じました。

どこで、どうやったらボールが奪えるのかが分からないと、大会までの準備期間で修正が出来ません。多少無理をしてでも、思い切ってボールを奪いにいく事で、大会中の対戦相手に応じて、どうボールを奪いにいけばよいのか、現在考えているゲームプランと照らし合わせて、機能するのか、確認したかったのではないか。そう感じました。

2点目は、「どこまで続けられるか」。この試合の日本代表は、ゴールキーパーがボールを持ってる場面でもボールを奪いにいってましたが、ゴールキーパーがボールを持っている場面でボールが奪えることは、何度もありません。なぜ、確率が低いと思われるプレーを繰り返し実行していたかというと、どこで奪えるのかだけでなく、どこまでアクションが続くのか、見極めたかったのだと思います。

70分続くのか、80分続くのか、90分続くのか。アクションがどのくらい継続できるかによって、ゲームプランは変わってきます。ハリルホジッチ監督は、どのくらいアクションが継続出来るか、見極めたかったのだと思います。

ウクライナ戦では、選手交代も上手く活用しながら、ある程度、アクションの量と質を継続させることに成功しました。試合終盤に、久保、中島といった選手がシュートチャンスを得たのは、ウクライナ代表が日本のゲームプランに付き合い、ボールを保持するサッカーを続けた結果、選手交代もあって、少しづつ「パスを出して、受ける」動きのタイミングと、アクションが遅くなった事も要因でした。

90分を通じて、素早く、力強いアクションを継続し、相手チームのアクションが、遅く、少なくなり、ミスを利用して、ゴールを奪う。もちろん、対戦相手によって、調整する事はあると思いますが、概ねそんなゲームプランを思い浮かべているのではないかと感じました。

本田に求められているのはボールを保持する時間を増やすプレーではない

マリ戦のレビューにも書きましたが、ハリルホジッチ監督は、相手ゴール方向に最短距離でボールを運ぶことを求める監督です。

ハリルホジッチ監督の考えを、「1本のパスでDFの背後を狙う攻撃だけを好む」と勘違いしている人もいそうですが、僕は違うと思います。ハリルホジッチ監督は、最短距離で、素早く、相手ゴールまでボールを運びたいだけなのです。

ただ、今の日本代表には、中央から攻撃をするために必要なパスが出せる選手が少ないのです。長谷部も、山口も、今回選ばれていない井手口も、自信を持ってボールを保持し、中央からボールを運んだり、空いているスペースにパスを出すプレーが苦手です。

ハリルホジッチ監督が大島の起用にこだわるのは、日本代表の選手の中で、最も自信を持ってボールを持ち、相手ゴール方向にボールを運ぶパスやドリブルを実行出来るからなのです。

この試合、ハリルホジッチ監督は本田を右MFで起用しました。ハリルホジッチ監督は本田を基本的には右サイドで起用します。

本田はボールを受けるとき、相手を背負ってボールを受けるプレーを好むため、ハリルホジッチ監督が望んでいる「素早く相手陣内にボールを運ぶ」事が出来ません。サイドだと、背にするのはタッチラインが多くなるので、本田も相手ゴール方向を向いて、プレーしてくれるのではないか。そう考えているのだと思います。

ただ、この試合では、本田は右サイドでも、タッチラインではなく、相手DFを背負ってプレーしていました。本田が相手DFを背負ってプレーすることで、ボールを保持する時間は(若干)長くなりましたが、相手陣内に素早くボールを運ぶという攻撃の回数は減ってしまいました。ハリルホジッチ監督としては、不満だったのではないかと思います。

本田は、必ずしもハリルホジッチ監督の求められるプレーを100%忠実にやる選手ではありませんが、ハリルホジッチ監督は本田を起用し、チャンスを与え続けます。ハリルホジッチ監督が本田に求めているのは、ペナルティエリア付近でシュートチャンスを作り出したり、シュートチャンスを確実に決めるプレーです。

本田もそんなことは百も承知しているはずですが、今のチームではゴールから遠い位置でボールを受けないと、自分が欲しい位置までボールが来ない。そう考えて、ボールを受けに下がったと推測します。

本田を代表に選ぶのか、そして、選んだ場合にどのように起用するのか。確実に言えることがあるとしたら、今の日本代表であれば、本田も監督の与えたタスクを忠実にこなす選手の1人なのです。忠実にタスクをこなしたうえで、自分にしか出来ないプレーが出来るか。それが出来ると判断され、大会中に出番があると判断されたら、代表に選ばれるでしょうし、起用されるでしょう。

ハリルホジッチ監督が、どんな判断を下すのか、楽しみです。

ハリルホジッチ監督としては確認したいことは確認できたのではないか

この2試合を振り返ると、ハリルホジッチ監督としては、概ね確認したい事は、確認出来たのではないのでしょうか。

ハリルホジッチ監督は、相手チームに応じて、対策をきちんと準備する監督ですが、この2試合は、全くといっていいほど、対策を準備しているようには見えませんでした。

フォーメーションは4-4-2を採用し、選手にとって、もっとも慣れ親しんだフォーメーションを採用し、チームのプレーモデルに基づいて、どんなプレーが出来るのかをチェックし、プレーモデルに基づいて、極端なくらいボールを奪う、前に運ぶというアクションを強調して臨み、どこまで出来たのかをチェックする。それは、ある程度出来たと思います。マリ戦と比べると、ボールを相手陣内に運ぶプレーは、格段によくなり、ハリルホジッチ監督は相変わらず修正が上手いなと感じました。

改めて整理すると、ハリルホジッチ監督が確認したかったポイントは、

1.チームのプレーモデルに基づいて、選手がどんなプレーが出来るのか
2.どこまで相手ゴール近くでボールが奪えるのか
3.どこまで素早く相手ゴール近くまでボールが運べるのか
4.ボールを奪う、素早く運ぶアクションが、どれだけ継続出来るのか

この4点だと思います。

ハリルホジッチ監督は、現時点で考えている大会のゲームプランと照らし合わせながら、プランの修正や、選手選考基準の見直し、大会までの準備の見直しを進めるはずです。

結果は1分1敗と伴っていませんが、やりたかった事は出来た2試合だと思います。この試合で得たことを、いかにフィードバックしていくのか。そこを予想する楽しみも出来ました。今後の取組に期待したいと思います。楽しみです。

photo by Ministry of Foreign Affairs of the Republic of Poland


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