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2018年4月29日 小沢健二 @大阪城ホール

明かりが消えて、”アルペジオ”の語り部分から幕を開ける。無数のシャボン玉とはち切れんばかりの歓声。

2018年に、ここまで現役感満載のオザケンが見れるなんてこれはちょっとすごい事だな、と思う。

編成的には各所で言われているように、満島ひかり・服部隆之含む36人編成。

今仕様にアップデートされたオザケン。
復活後の3枚のシングルで感じたのは、彼の表現能力がアップデートされた訳じゃなく、彼の人生がアップデートされた結果、表現が変化したのだろうな、という事。

そう、根底的な部分はずっと長い間変わっていない。彼が言わんとしてる事はいつだって、人それぞれにライフがあって、そのライフは人それぞれに尊いんだよって事。
でもそれは、前向きになろうとか肯定的な人生を送ろうよとか、そういう事じゃない。その危うさやあっけなさや儚さなんかも全部一緒にギュッと抱きしめた上で祝福しようよ、という事。

でも彼は例によって相変わらず、僕らのライフの真実について何か具体的なヒントを提示してくれる訳じゃない。(僕たちは彼の歌の中からヒントばかり探しているのにもかかわらず、だ。)
歌の中に何か明確なテーマがある事も、あまりない。
ただただ、歌の中にある日常が、僕たちの日常を、相対的に見直す事を、顧みる事を、促進してくれる。

そして僕らは、小沢健二いうフィルターを通して、自分自身の日常を、いつもとは違った角度で、違った切り口で、違った文脈で、見たり、考えたり、検証したりする事になる。

そんな風にして、オザケンの曲はゆっくりと消化され、発酵され、蓄積されていく。だから多くの人達にとって、オザケンという存在はただの歌手にはとどまらずに、もっとスペシャルものになっていく。それはとてもプライベートでディープな場所にあるもの。聖域である、とも言えるんじゃないだろうか。

うん、でもこの日一番感じたのは、そんな事なんかじゃない。そんな事はどうでもいい。
本当に感動したのは、オザケンの力強さだ。本気度だ。ここまで真剣に自身の表現を信じ切っている人ってそうはいないんじゃないかって事だ。
それは歌が上手いとか下手だとか、そういうレベルじゃない。想いを伝えようとする熱意と、それを受け取ろうとする熱意がバチバチと火花を立てながら渦巻いてる感じなんだ。

例えるなら「1人 vs 数千人」のコミュニケーションじゃなく、「1人 vs 1人」のそれ。タイマンの感じでグイグイ入ってくるんだ。

「本当の心は 本当の心へと 届く」

この日オザケンはこのフレーズを何度か繰り返した。そしてある瞬間にこの言葉が胸にブッ刺さった。なんと言うか魂が震えた。ワナワナと。

そう、オザケンの言葉は、いつだってこんな風にシンプルで何気ない。でもふとした瞬間にそれらの言葉が俄然意味を持ち始める。暗闇の中で仄かに発光し始める。そして次第に僕たちの心を捉えて離さなくなる。1人 vs 1人の言葉として。

「本当の心は 本当の心へと 届く」

今はこの言葉が僕を捉えて離さない。

ちょっと凄い夜だった。
たかだか音楽のライブが、特別なものになる事がある。決定的な夜になる事がある。

日常になんかまだ戻れそうにないや。

#小沢健二 #オザケン #ozkn

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