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地方で独立する際の有効だった戦略

独立して6年が経ちました。この文章を執筆した時点は44歳なので、38歳のときに独立したことになります。

ライター&フォトグラファーとして活動しています。文章を書いて写真を撮る。この2つは自分の得意なことであり、好きなことでもあります。

もちろん、独立してすぐに順風満帆というわけではなかったです。地元の小さな出版社で約4年くらい働いた後、独立。当初はデザイナーと二人で、デザイン事務所としてのスタートでした。

執筆と撮影が得意で好きなことなのに、どうしてデザイン事務所として独立したのか。そこには自分なりの戦略がありました。


デザインに関して自分は、顧客視点でどのようなトーンを目指せばよいのか論理レベルでわかりますが、非言語情報として形にすることはできません。

なのでクライアントからヒアリングした要望を元にデザイナーとディスカッションをし、実際のデザインに関しては完全に任せるというスタンスを取りました。

実務は、その中で使うボディコピーやテキスト、写真などを担当するという感じですね。

つまり独立当初、デザイン事務所という看板を出しながら自分自身はデザイナーではなかったのです。

ではなぜ最初から、ライター&フォトグラファーとして独立しなかったか。それは単純に、地方の顧客に対しわかりやすさを優先したからでした。


ライター&フォトグラファーとして独立すると考えれば、業種はどのようなものが適しているでしょう。一番近いのは「編集プロダクション」だと思います。

でも東京であればその一言で理解されますが、地方(特に自分が住んでいる石川県)では、そういった職種の会社そのものがおそらく存在しません。

媒体を発行する出版社が少ないですし、そのほとんどは編集業務を内製しています。その中で使う執筆や写真を外注することはあっても、ページ全体を編集プロダクションへ委託することは一般的に行われていません。

編集プロダクションという業種の存在する理由がそもそもないのです。なので編集プロダクションとして独立するという路線は、最初から想定しませんでした。


だったら、「執筆&写真」という看板で最初から活動すればいいではないか。そういう話になるかもしれませんが、この2つの仕事を依頼するときは、そのほとんどが紹介からになります。

特にライターの場合は、「優れた文章を書く」という能力だけでは発注されません。媒体の趣旨と企画に合わせ情報を集め、限られた文字数でまとめるという「収集力と調和力」が必要となります。

媒体を持っているところへ営業へ行き、「自分は文章書けるし写真も撮れます。実際のレベルはブログを見てください」という感じでは、まず仕事はこないと思いました。

発注側にすれば頼んだはいいが、「締め切り間際に企画の趣旨とまったく合っていない文章を提出された」という最悪の事態は避けたいでしょう。

アウトプットの質の読めない人へ頼むリスクより、少々下手でも知っている人もしくは紹介を頼りにすると思います。

ということで独立にあたっては、デザイナーとコンビを組んで「デザイン事務所」という看板でスタートすることにしました。

実際の自分の業務は、クライアントの要望をヒヤリングすること、そして執筆と撮影。これであれば自分の強みも活かせます。


ともかく最初から順風満帆というわけにはいきませんでしたが、デザイン事務所として屋号を立て、ウェブサイトを作ってからは割と早い段階で注文が来るようになりました。

一般企業がデザインを必要とする際、デザイン事務所というキーワードでウェブ検索することが十分考えられます。

デザイン事務所や出版社、広告代理店などとお付き合いのない場合は、とりあえず「金沢市 デザイン事務所」といったワードで探してみるのですね。

「金沢市 ライター」「金沢市 カメラマン」という検索より、よほど需要がありそうです。

競合のありすぎるところへ参入すれば価格競争になってしまい、自分たちのような資金力のない零細企業は勝てるはずがありません。

かといって、そもそも検索されないような業種を打ち出しても、依頼そのものが発生しない。デザイン事務所というのは、地方で独立する際に有利なキーワードになりえました。


ウェブを開設したところで検索から大量に発注が来るというわけではなく、ウェブ経由で仕事になったのは年間で3〜4件くらいだったと記憶しています。

数が少なくとも仕事が来れば、自分たちのサイトへ作例を出すことができます。作例を載せていれば、「ここはちゃんと実績を積んでいるところだ」という認識が生まれ、新しい仕事を呼び寄せてくれます。

正のフィードバックループが生まれるんですね。


デザインの仕事で実績を積んでいくと、執筆や撮影だけの依頼というのもちょくちょくと入るようになりました。

執筆と写真という仕事はこの世に存在していて、発注する側は絶えず頼める人を探しています。でも前述のように、ツテがなければ人材を探し出すことができません。

デザインの仕事からツテができると、執筆や写真が撮れるということで、自分の得意分野の依頼が来るようになりました。

そうして徐々に執筆と写真の領域が広がっていき、自分が得意としていることで一本立ちができるようになっていったという感じです。


ということで、得意なことで独立し生きていくため自分が取った戦略は、ど真ん中から業種を少しずらし、わかりやすさを打ち出したことにあります。

起業や独立を考えている人はたくさんいると思います。

特に地方の場合、自分の得意なこととお金を稼ぐ手段を直結させることが難しいかもしれません。そんなときは、業種を少しずらし顧客にとってわかりやすい切り口を考えてみてはいかがでしょう。


例えばコーヒーが好きで、味と雰囲気で勝負する本格的なカフェで起業したいとします。

地方でも中心部ならその形態に響く顧客はいるかもしれませんが、街中から外れたところで出店するにはピンとこない可能性がある。

だったらまずはわかりやすい切り口として「喫茶店」と看板に書いてしまえばいい。もしくは「コーヒースペースのある雑貨店」のほうがわかりやすいかもしれない。

認知され固定客が付いた後、自分が得意としている本格的なカフェへと徐々にメニューや内装、最終的には店名までも変えていく。自分が話しているのはそういうことになるかと思います。

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