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ダーサヤにお呼ばれする

「今度の土曜日、うちでダーサヤがあるから来てね」と以前一緒にピアスを開けに行ったビューティーミスからお誘いがあった。

ダーサヤとは、スリランカにおける仏教行事の1つで自宅にお坊さん(ハームドゥルウォー)を招き、ご飯などをお布施する日のこと。

お坊さんにお布施するのはご飯だけでなく、果物、文房具、薬(パナドール)、洗濯用洗剤等もお坊さんに渡す。その時に、お坊さんのちょっとした話もあり、時々お経みたいなものを一緒に唱える。

こんな感じでお坊さんが白い布が掛かってる椅子に座ってご飯を食べる。ちなみに手前に置いてある果物やご飯類はお坊さんと一緒に来る小さいブッタ?の仏像にお布施する食べ物だ。10センチぐらいの小さい仏像なので、果物も小さく切られてる。

お坊さんが帰ったあとに、余ったご飯を家族や友人、近所の人と食べることもあり、この日は大量のご飯があった。

私は朝の10時前ぐらいから、ビューティーミスの家にお邪魔していた。その日はダーサヤということもあり、旦那さんの両親、彼女の妹、妹家族、弟家族などなど…本当に一家総出で準備が行われていた。
しかし、慌ただしいかと言うと、そうでもない。紛れもなく慌ただしそうではあるのだが、みんな手以上に口が動いている感じで、大体の準備は終了しているような様子だった。

私はダーサヤが始まるまで大人しく、お家にいた猫や犬と戯れる。(戯れると言っても狂犬病が怖いので、触らずにただ見てるだけなのだが)

日本でよく見る飼い猫のサイズ感に比べると、スリランカの猫は一回りか二回りほど小さい。本当に片手で軽々持ててしまうサイズ感なので、いかに日本の猫が大きくて太いのか分かる。

さらに、この家には飼い犬もいた。ちゃんと名前もあって(さっきの猫はたぶんない)、堂々と家族の一員として存在している。そのせいもあってか、ちゃんと家の人の言葉を理解し、全然吠えない。めちゃくちゃ(人間にとって)良い犬だった。

同じコロンボだと言うのに、家の周囲は木がいっぱいで、バナナやテンビリの木もあって、自分の住んでいる渋谷区のタワマンとは全く様子が違う。家には隙間がいっぱいあるし、ファンもない。その分、風が通るから涼しいのだが、めちゃくちゃ暑くなった日はどうなるのだろう?と思ったりした。
本当に大通りから1キロも歩いていない場所でこんな様子なのだから、自分の求めてる自然ってスリランカだとかなり近いものなのかもしれない。

逆にそう考えると、給湯器ありエアコンあり、ファンあり、隙間なしの渋谷区のタワマン(自分の家)はほぼ日本みたいなものである。最近、自分のいる環境がスリランカでは割と先端だし、リベラル寄りなことを実感しつつある。だからこそ、こういう伝統的なスリランカの仏教行事に参加できるのは嬉しいことなのだ。

昼の12時を過ぎた頃、お坊さんがバンで10人ほどやって来た。そして家に入ってすぐの場所に設置したお坊さんたちの食事スペースに彼らは座り、最初のお説法のような話を聞く。恐らく家族は大事にしましょう的な話だった。しかし、面白いのが10人もお坊さんがいれば、1人は眠たそうだったり、もう1人はどこを見ているのか分からない表情をしていたりする。彼らも人間だから、そりゃそれぞれ佇まいも変わってくるものだ。

その後、お坊さんたちにお布施をする用のご飯を家族の人たちが1人1品づつ持って、それぞれの皿によそっていく。有難いことに私もご飯をよそうことが出来た。ただひたすらお坊さんの席を回って、ご飯をよそうだけなのだが、このような宗教行事に参加したのは初めてだったので、緊張した。
1つの料理が終われば、また1つ手渡され、「ヤンナヤンナ」(行きな行きな)と言われて、私は何度もお坊さんの皿に料理をよそう。皆、せっかく来た日本人に良い経験をさせようとしてくれているのだろう。
その後も、お坊さんたちに物品類のお布施も渡す役目まで授かってしまった。その時に、ビューティーミスの旦那さんから、「私終わったら、座って手を合わせるんだ」と所作を教えてもらう。

その後、全てのお布施を終えた後に、お坊さんからお説法のような時間があり、白い糸みたいなものを巻いてもらう。何もかもが初めてで、何をするにしてもオロオロ、キョロキョロしていた私。そんな私をビューティーミスの家族や親戚の人たちは「エンナ」(来な)「ヤンナ」(行きな)と言って、色々教えてくれた。

また、お坊さんが帰った後に皆で食事をする時、1人の親戚のおばちゃんが一人で食べようとした私を見て、わざわざ隣に来て「私と一緒に食べよう」と言ってくれた。現地の人に比べて手食に慣れていない為、どうしてもおばちゃんを待たせてしまう。それでもおばちゃんは私の方を見て「ヒミン カンナ」(ゆっくり食べな)と言ってくれた。おばちゃん曰く、外国人が手食で食べていること自体が嬉しいそうだが、私はそれ以上にひたすら私のことを待ってくれるおばちゃんの優しさが嬉しかった。

そのおばちゃんとは、ご飯を食べた後にデザートも一緒に食べて、私が家に帰る瞬間まで隣にいてくれた。ダーサヤは親戚家族だけでなく、近所の人たちや職場の人も来るため、とにかく人が多い。そんな中で日本人1人、だいたい「チーナ?コリア?」と聞かれるか、遠目で私の方をみてヒソヒソ話すかのどちらかが多い状況で、隣におばちゃんがいてくれるだけでも私にとっては心強かった。

コロンボで日常生活を送る中で、中々こういう人の優しさを素直に受け取れない時が多い。しかし、今日1日だけでも現地の人の温かさやダーサヤを真近に触れられて、とても良い経験をした日だったと思う。

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