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滞在制作 7日目

いよいよ上演最終日。
今日は奇跡的にラーメン屋さんで上演する事が決まっていたが、朝の1時間半ほどいつもの場所でコタツを出して上演を行った。

朝コタツを出していると、近所のおばちゃんが「何してんの?」と声を掛けてきた。彼女の話によると、娘さんが昨日からコタツが出ている事に対してとても気になっていたらしく、何が起こっているのか聞きに来たそうだ。
昨日は1日中コタツを出していたこともあり、その効果はあったのだな、とおばちゃんの話から感じることが出来た。
おばちゃんは初めて喋った人だったが、気さくに色んな事を話してくれた。ついでに今日行く予定のラーメン屋さんの行き方も教えてくれた。

自転車カゴにお茶や座布団、トイレットペーパーなどを入れてラーメン屋さんに向かう。お茶は計3Lがカゴに入っている為、いつも以上に自転車が重く、前に進まなかった。さらに、一山超えなくてはならないらしく、行きは上り坂が多かったようだ。

ラーメン屋さんに到着する頃にはゼエゼエ言いながら自転車を押していた。そんな私の姿を見たのか、ラーメン屋さんの店主さんが店の中から出てきてくれた。

初めてお店の中に入ったが、すごくアットホームで自らの力で世界を楽しもうとしているインディペンデントさを感じた。
丁度お店はハロウィンが近く、ハロウィンパーティーも行う為、内装がハロウィン仕様になっていた。勿論、飾り付けなどは自らで行ったそうだ。ついでに建物もご家族が建てたものらしく、木を切り開いた店の裏の土地も見せて頂いた。そこでは、毎年筍が沢山取れるらしい。
それだけでもすごく感心して、アートの視点からも勉強になるのではないか?と考えていた。そしてその隣で店長さんとその親戚の方は既に12月のクリスマスパーティーについての日程やケーキの事についてかなり真剣に話している。

前日の営業開始前に「明日行きます!!!」と電話した為、昨日店長さんが常連さんや親戚の方に私の上演の事について話していてくれたようだった。そのお陰か、ラーメン屋さんでは何名か紅茶を振る舞い、実際にお話することが出来た。

お話をした方々のご厚意や店長の計らいもあり、ラーメンや餃子、白ごはんを頂く。あご出汁が効いた美味しいスープに美味しい白ごはん、皮がモチモチした餃子はどれも美味しくて、とても幸せな時間だった。

ラーメン屋さんでの時間は本当に奇跡みたいな時間で、最終的には店の中に入って、常連の人達と一緒に競馬の中継を見ていた。その時、私は既にラーメン屋さんの循環に入り込んでいたように思えた。

私がこの上演を行う中で一番驚いた事は、作品である上演台本を渡した時に、皆素直に「すご〜い!」とか「ええ、これ読めないよ〜」と自分の思うように反応してくれる事だった。私がアーティストです、と言っても大体「何してるの?」とか「絵書いてるの?」と聞かれ、「アートは難しくて分からない」と言う人は一人もいなかった。

この滞在制作ではあまりアートに普段触れていないような人に作品を渡す機会が圧倒的に多かった。当初は「アートは難しくて分からない」と言われる事もあるだろう、と身構えていた。しかし、実際に人に作品を渡すと、皆それぞれに反応して「作品」として持ち帰ってくれた様子だった。むしろ普段触れていないから素直に反応するのだろうか?

本当は今日一日泣いてしまうほどに感動した1日だったのに、興奮のせいかその1/8ほどしか書けていないのではないか?と思うほど、書いても書ききれない。またこれらの滞在制作の事を落ち着いて、振り返りたいと思う。


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