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今日より明日の方が良い

スリランカには「අදට වැඩිය හෙට හොඳයි」(今日よりも明日の方がいい・良くなる)という言葉がある。私はその言葉を日本でシンハラ語を学んでいる時に知った。
当時は自分が知っているシンハラ語の言葉なんてたかが知れていて、それでもシンハラ文字を使ったシャツをどうしても作りたくて、胸元に「අදට වැඩිය හෙට හොඳයි」と書いたシャツを作った。

このシャツの裏面にはスリランカを漢字で書いたものを印刷して、現地に行った時にちょっとでもスリランカの人に反応してもらえれば良いな~と思って作ったのだ。
実際にこのシャツを職場では何度か着て、周りは面白そうに「どこで買ったの?」と聞いてきたりした。周囲の反応は良い感じだが、見た目が若干カジュアルなので、そこまで日常的に着れるわけではない。

スリランカでは毎年4月の中旬ごろにシンハラタミル正月がある。この国ではメインお正月と言えば4月のシンハラタミル正月のため、この時期は色々とイベントがある。
今回も年末最後の授業が終わった翌日、生徒達が参加するクリケット大会が職場で開催された。前日に同僚から「明日はカジュアルで来てね」と言われたこともあって、久しぶりに「අදට වැඩිය හෙට හොඳයි」Tシャツに袖を通す。

久しぶりに職場に着ていったこともあって、色んな同僚から「なんでඅදට වැඩිය හෙට හොඳයිなの?」と聞かれた。私は咄嗟に「だって明日から正月休みじゃん」と言ったら、その場にいた全員が爆笑した。そりゃそうだ、スリランカ人でも日本人でも休みは大好きなのだ。

クリケット大会の会場で他の同僚にも会う。彼らも漏れなく私の胸元にある「අදට වැඩිය හෙට හොඳයි」に対して突っ込んでくる。そんな中、1人の同僚がその言葉を見て「スリランカはそんなことない」と言ってきた。
確かに、スリランカに住む人たちの生活はどんどん苦しくなるばかりで「今日よりも明日の方良くなる」と言えるような状況ではない。実際に物価は上がり続けているし、税金もどんどん高くなっている。しかし、肝心の給料は全然上がってなかったりして、その話だけ聞くと、どこかの国とも同じかそれよりも深刻な状況とも言える。

だから彼が「スリランカはそんなことない」と言う気持ちも凄く理解できた。しかし、今日は楽しいクリケット大会である。ヘラヘラピヨピヨ外国人の私はニュースで流れているような難しい言葉は分からないけど、ちょっとでも皆が笑う時間が増えたら良いと思っている。だからこそ、彼に対して「明日から休みじゃないの?」と聞いた。すると彼はニヤッと笑って「アンナ ハリ(それはそう)」と言った。

これがよかったのかどうかは、正直分からない。まだまだ周囲の同僚の世間話には付いていけないし、ニュースを見てても難しい言葉が多くて何を言っているのか分からないことも多々ある。それでも現地の人たちが使うシンハラ語で、ちょっとでも誰かが笑顔になれているのなら、まぁそれはそれで良いのかもしれない。世の中や政治を変えることは困難だけど、自分のシンハラ語ギャグセンスを磨くことは出来るから。

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