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バティックのワンピースを買う

バティックとはスリランカやインドネシアなどで作られるろうけつ染めの布地のことだ。南アジア、東南アジアだけでなく、日本でも更紗という名前で生産されている。

日本ではこの手の手工芸品はかなり高いイメージが私にはあった。しかし、スリランカでは紅茶に次いで繊維業が有名なせいか、伝統を重んじる国民性ゆえか、バティックで作られたシャツやサリーを着ている人は街中でよく見る。

スリランカ生活も少しは慣れてきたこともあり、多少のオシャレを楽しむ勇気も出てきた私はバティックのサリーに強い憧れを持っていた。なんというか、カッコよくないですか?ぐらいの語彙力の乏しい理由ではあったが、バティックのサリーなんて着てたら、もうニヤマイ(素晴らしい、超良い)なんて軽く通り越しちゃうレベルだと思ったのだ。

しかし、バティックは1枚づつ手作りであることもあって、サリー生地は他の物と比べても高い。大体6000〜8000ルピーはするので、ピヨピヨ外国人の私には簡単に手が出せない。

それでも全くバティック熱が冷めることのない私はホストマザーにほぼ毎日「バティックいいなぁ~バティックきれいだな~」と言い続けていた。すると、ある日かを境に「あの店に行けばバティックの服が買える」とか「あのショッピングモールはバティックの服が安い」とかホストマザーから色々情報を教えてもらうことができた。

ホストマザー曰く、バティックのサリーは高いが、ワンピースになると、ある程度値段が安いものも出てくるとのこと。私はその情報を頼りに、よく行くショッピングセンターに向かった。そう、前回キラキラした店員さんの笑顔をアクリルスタンドにして持ち歩きたいと思った、あの場所だ。

その後、あのショッピングモールでは1階にいる文房具売り場の女の子とよく喋る仲になってしまった。

今回もいつものショッピングモールに出かけると、すぐに文房具売り場の女の子に会った。彼女はいつも私に会うとニコニコ話しかけてくる。そして「今日は何しに来たの?」と聞かれたので「バティックのワンピースを見に来たんだよ」と言った。すると、彼女は私を2階のレディース服売り場まで案内してくれて、「また(自分の持ち場である文具売り場に)来てね」と言った。

彼女が売り場まで案内してくれたおかげで、バティックのワンピースすぐに見つけることが出来た。いつも見ていたバティックのワンピースは絵本の「わたしのワンピース」みたいな感じの形状なので、オフィスにも着ていけるような、少しキレイめの形を探した。

色々と物色していると、ウエスト部分を紐でくくれるタイプのワンピースがあった。しかも、そのタイプの中でも紫色やピンク色のワンピースがあったのだ。
「ああ、これは可愛い…!」と思った私は、とにかく気になるワンピースを目の前に並べて鏡で合わせる。すると、近くにいた店員さんがおもむろに私の方に近付いてきた。そこで、私は店員さんに「このワンピースはオフィスにも着ていけるか?」と聞いた。すると、店員さんは「紫色の方はオフィスに着ていけると思う」と言ってくれた。

その後、文房具売り場の女の子が再度、私のところにやって来て「どう?決まった?」と聞いてきた。しかし、私は未だにどのワンピースを購入するのか悩んでいたこともあり、彼女に「どれが良いかな?」と聞いた。すると彼女は「ピンクと薄紫がキレイ。もう一つはケタイ(柄が汚い)」と言った。なるほど、そうか…と思いつつも中々決めきることが出来ない。そこで、さっきの店員さんに聞いて試着室でしっかり見てみることにした。

ちなみに一番右のバティックがケタイ(柄がき汚い)って言われたもの

しかし、最後まで薄い紫かピンクか決めきれない。思い切って2着買ってしまえばいいのかもしれないが、こういう時に2着買うとだいたい1着は着なくなるんだよなぁ…と思い始めたのだ。そこで、意を決してピンクのワンピースだけを買い、その日はお店を後にした。

帰宅後、バティックのワンピースを買いに行くと告げていたホストマザーに、どんなワンピースを買ったか早速お披露目した。ホストマザーはピンク色のワンピースを見て、「ラッサナイ(綺麗)」と言った。しかし、その後に「青色(紫色が写真では青に見える)のワンピースも綺麗だった」と言った。なるほど、確かに紫色の方は良い意味でバティック感のない柄だし、薄い色ってスリランカ人とは多少違う着こなしに見えるから、紫の方がキレイって思えるのかもしれない。
しかも、ホストマザーは紫色のワンピースをえらく気に入っていたのか、近所の人が家に来て、会話をするたびに「紫色のワンピースも綺麗だったんだよ」と言っていた。ことあるごとにそんな話題になるから、私も徐々に「やっぱり紫色も買った方が良いのかな?」という気分になっていた。
その気持ちに追い打ちをかけるように、特に何も言わずに写真だけ送った友人からも紫色のワンピースが好評だったこともあり、紫色のワンピースも明日、買いに行こうと決意した。

結局、次の日の朝に悩みに悩んで買わなかった紫色のワンピースを購入する。売り場に行った時には昨日と同じ店員さんがいて、「ピンク色を買ったのに、みんな紫色が良いって言うから、こっちも買いに来ちゃった」と言うと、ほんのり微笑まれた。

ちなみに、今回購入したワンピースの値段は1着3250ルピー(1600円ぐらい)で、現金支払いだったので多少安くなっている。にしても、バティックのワンピースが3000ルピー代で買えるのは、かなり嬉しい。


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