Ishikan

読書感想/エッセイ/たまに小説 平日は保育士。週末は子ども食堂を開いています。 フェ…

Ishikan

読書感想/エッセイ/たまに小説 平日は保育士。週末は子ども食堂を開いています。 フェミニズムに興味。甘々ベジタリアン生活。

最近の記事

子どもの自由とその責任

雨上がり、園庭に出来た水たまりは、泥遊びの格好のエリアとなる。 砂場用のシャベルとバケツを持ってきて数人が集まって、泥んこ遊びを始める。 近くにいる大人(僕)は微笑ましく見守りつつ、遊び時間が終了する頃には、道具の片付けとともに掘り返した地面を平らにするよう促し、それでも平らにしない場合には、僕自身がスコップを使って綺麗に戻して遊びは終了となる。 保育園の、当たり前の一場面だ。(A) だが、異動してきたばかりの三年前は、ちょっと違った。 そういった遊びを始める子がいたら

    • 子どもと大人のハラスメント

      学童クラブに勤めていた時、子どもとのやりとりで違和感を覚えたことがある。 「あー、内緒話しちゃいけないんだー!」 鬼の首を取ったかのように僕に指摘をした二年生の女の子がいた。 僕は別の子に耳打ちをしていた。 確かその子の誕生日が近くて、その関連で、こっそり伝えたい事があったのだと、思う。 本当は「いや、別にいいじゃん」と思ったが、たぶん学校で内緒話はいけないよ、と指導されているんだろう、と思い、「そっかごめん気をつける」とだけ言った。 「大人なのにそんなことも分かん

      • 生きるものみな食うべき

        僕は大食いだ。 たぶん人の1.5倍〜2倍くらい食べている。 自分で作るときは2食分作るつもりが一回で食べ切ってしまうし、外で食べる時は大盛りを売りにする店を選びがちだ。 大盛りにして、おかわりをして、お腹いっぱい食になる。 それだけのことだけど、それが僕にとってはめちゃくちゃ幸せなことだ。 僕が月に二回開いている子ども食堂では、おかわりが出来る。 これは元々、子どもたちが完食できるよう「基本の盛りを少なめにする」という配慮から始めたやり方だ。 でも、結果として多めがいい

        • コーヒーを飲みながら

          ドトールで飲む熱々のコーヒーが、好きだ。 土曜日の夕方。店内はやや混雑している。 店員はいささか慌ただしい。 前に並ぶ客の対応をしながら、後ろの僕に声をかける。 「少々お待ち下さい。」 滑らかに放たれる言葉は、滑らかすぎるのか言葉以上の意味を持たない。耳に届くのは「少々お待ちください。」という音。それ以下でも以上でもない。 僕が子ども食堂を開いている時、混雑した時にはどんなふうに対応してるっけ、とふと思う。 「ちょっと待ってくださいね。」だったかな。 ばあいによっては

        子どもの自由とその責任

        マガジン

        • ショートショート
          4本
        • フェミニズム関連
          4本

        記事

          また来週、ネパールセットを食べに行く

          昨日、カレー屋に行ってから、もやもやしている。いや正確にはカレー屋で観たテレビのせいなのだが。 インドなのか、どこの国なのか分からないが、本場っぽいカレー屋さんが駅前にある。 “チキンカレーやキーマカレーや、サグカレー等の中から1-2種を選び、ナンとライスの好きな方を選び、ラッシーやらなんやらの中からドリンクを選ぶ。” みたいな、どこの街でも見かけるあのカレー屋さんだ。 そこの「ネパールセット」が好きだ。 ネパールセットはすごい。なんと言っても品数がすごい。 ①普通に美味

          また来週、ネパールセットを食べに行く

          川と鷺

          マスクから鼻を出して、大きく息を吸い込む。吐き出しながら、奥多摩の地を踏んだ。 胸が膨らんだのは、深呼吸のせいか、期待のせいか。 吐き出した息の温かみをマスクで肌に感じながら、リュックを背負い直した。 JRの車内で取り急ぎ検索して、一旦の目的地としていた食事処は案の定「休」であった。 緊急事態宣言の影響の大きさを改めて実感しながら、致し方ないとはいえ、お腹は空いたまま。腹ペコのわたしは、来た道をとぼとぼと戻ることになった。 時刻はもう二時を過ぎている。一般的なお店のL.O

          川と鷺

          あたかも同じ地平に立っているかのように

          共感は大切だ。 だが、それ以上に、相手の個別的状況をふまえて究極的には「分かり合えない」ことを理解することの方が、実は大切なのではないか、と最近思う。 デジタル時代。イラストや、絵も。音楽も。映像も。文字も文章も。 データでいくらでもネットにあげられる。 それを聴いたり見たり、読んだりすることもできるし、感想も言える。言い合える。 「よかった!最高!」 そんな風に。 そして、ぼくたちはそれに共感することもできる。 「この歌が好きだ」と言ってサブスクから流す。 「い

          あたかも同じ地平に立っているかのように

          五輪について~小林賢太郎が好きだった

          オリンピックが盛り上がっている。(ように感じる) 僕はオリンピック否定派だが、いよいよ競技が始まって、盛り上がりを見せる中で、反対の声をあげるのは結構しんどい。 正直言ってスポーツは嫌いじゃない。選手やチームをたくさんの誰かとともに応援し、熱い思いや感動を共有出来る機会なんて、なかなかあるものではない。 まして自国開催となれば、身近で観れる可能性もある。それはそれは貴重な機会だと心から、思う。 連休明けの今日、職場の保育園の子どもたちが興奮しながら言った、「自転車(ロー

          五輪について~小林賢太郎が好きだった

          根底の差別意識

          オリンピックの開会式の作曲担当であるコーネリアスの小山田圭吾氏の過去の障害者への壮絶ないじめ告白記事が話題になっている。 内容(当時の誌面をまとめたブログ記事)を読んだ。正直知らなかった。 それなりにコーネリアスは好きだし、「デザインあ」も面白いな、センスいいな、このセンスを小さい時に感じられる子どもたちは羨ましいな、などと思っていた。 彼の行ってきた障害のある同級生へのいじめ。 知ってしまうと、とてもではないけれど、今後コーネリアスを聴く気にはなれないし、言われているよ

          根底の差別意識

          [小説]触覚伝達デバイス(ショートショート)

          電器屋の店頭に踊る怪しい文字に目を奪われた。 “「触覚伝達デバイス」今なら無料お試し実施中!” スーツを着た営業マンらしき男に話を聞いてみた。 どうやら、この装置を身につけると、離れた相手に“触覚”を伝えることが出来るらしい。 赤い色をした手にはめるグローブと、全身スーツ。 それに青色のグローブと全身スーツ。 二組で一セットのようだ。 赤グローブを身につけて赤のスーツを触ると、その感触が、青のスーツに伝達されるということらしい。 これは面白いと思って、さっそくお試しで

          [小説]触覚伝達デバイス(ショートショート)

          [詩]知っている

          僕は知っている 優しいおじいさんを知っている 微笑むおばあさんを知っている マスクをしてもそれと分かる笑顔で 子どもたちに微笑みかけてくれる 「暑いね、がんばれ!」 「どこいくの?いってらっしゃい」 若者がうつす 若者が悪い リフレインするテレビの戯言は彼方 マスクをせず大人数で散歩する子どもたちを優しさで受け入れてくれる その愛を知っているから 僕はまだ平気でいられる

          [詩]知っている

          右手と左手とジェンダーギャップ

          4月に書いて、しばらく眠らせていた文章です。時事がちょっと古いです。 数年前に左腕を怪我した。 スノーボードで、転んで。 恋なのか何なのか分からないままに、欲情に任せての女の子との旅。 前夜の宿での情けない告白の果ての、せめてもの抵抗で、ゲレンデを滑り降りた。 それが仇となり、無理な体制で手をついたため腕から肩にかけて痛めてしまった。 レスキューのモービルに乗って、ゲレンデを滑り降りていく。その時の屈辱的な気持ちは忘れ難い。 さて、どのような形にせよ左腕を怪我した僕で

          右手と左手とジェンダーギャップ

          もたあすに走る稲妻

          その子は障害があるというわけではないのだけれど、知的発達が遅れていて、コミュニケーションが取りにくい。語彙も少なく、発音も不明瞭で聞き取りづらい。 また他の子への噛みつきやひっかきがあるため、目を離すことが出来ない。 思い通りにならなければ大泣きする。ルールの理解が弱く、個別の支援が必要だ。 そのため必然的に他の子に比べて圧倒的に関わる時間が増える。とてもかわいい子で、関わることは嫌ではないのだけれど、目を離さずに常に一緒にいることの心労は大きい。 だが、関わる時間が増え

          もたあすに走る稲妻

          「かわいい」は存在の全肯定

          男性保育士ほど「セクハラ」的なものに気をつけて行動している人たちはいないのではないか、とふと考えた。 この間、保育園の会議で、ある新聞記事が共有された。 その記事は「ある男性保育士の子どもに対する性加害」についての記事だった。 「この保育園にも男性が数名います。どのような行動が周りからどういう風に見られるのか皆で考えて、行動から予防しましょう。」 と園長は全職員に語りかけた。 ぼくは肩をすぼめて、苦笑いしながら、近くの人に「気をつけます」的なメッセージを送った。 なんと

          「かわいい」は存在の全肯定

          コミュニケーションについての考察

          このあいだ、保育園の廊下を掃除しているとき。 「なんでそうじしてるの?」 と子どもに聞かれた。 「きれいにするためだよ。だってきれいな方が気持ちがいいでしょ?」 とぼくは伝えた。 子どもはそれに対して、 「◯◯(その子の名前)はきたないほうがすきー」 と笑って言った。 その時は、 「何言ってるのー、きれいな方がすきでしょー」 と笑いながら冗談として受け流した。 そのあと午睡に入った子どもたちの傍ら、床拭き掃除をしながら、あーでも待てよ。もしかして本当に汚い方が好きな人

          コミュニケーションについての考察

          [詩]星々のかけら

          眼下にきらめく星々のかけらをみつめる 生命の匂いに満ちたそのかけらは 暗闇の中、やがて発酵し消えていく 回転木馬のごとく揺らぎ続ける世界の中で その匂いに朧げな記憶をたぐり寄せる 歓喜と祝祭の記憶 先刻までの夢のような世界はもはやここには無い あるのは後悔と懺悔と反省 額に手をやり、自らの体温を測る 手が冷たいのか額が冷たいのか その両方か   頬が濡れている 意を決して立ち上がる 風呂場の雑巾を目指して 『飲み過ぎの夜明け。』

          [詩]星々のかけら