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ゲームとことば#47「ジュネスは毎日がお客様感謝デー」

世界最大の小売企業、米ウォルマートが提唱する価格戦略をEDLPという。
「Every Day Low Price(毎日低価格)」の略だ。
特売日だけに一時的な値下げをする「ハイ&ロー戦略」と異なり、EDLPは毎日安い価格を維持し続けるというものだ。
日によって価格差を大きくせずに、お客が何曜日に来ようが平等に安く販売するという姿勢が重要であるとして、日本でも多くの小売業が見本としている。

アトラスの人気ジュブナイルRPG『ペルソナ4』では、作中に登場する総合スーパー(GMS)の「ジュネス」がテレビコマーシャルにて表題の文句を謳う。
「毎日がお客様感謝デー」、まさにEDLPである。
毎日低価格といっても、企業は利益を出さなければ存続できないのはいうまでもないだろう。
なので店舗の運営コストを極力抑えて、商品が低価格でも儲かる仕組みを作らなければならない。
これをローコストオペレーションという。
無理なコストカットは労働環境の悪化を招くので注意が必要だが、ジュネスではいったいどんな工夫がなされているのだろう。
テレビコマーシャルのコピーのリアルさから、ついつい余計なところが気になってしまう。

ところで、ペルソナ4の舞台である八十稲羽(やそいなば)では、このジュネスによって地元商店街が衰退の危機にあるようだ。
こういった話は現実でも、かつてよく耳にした。
大店立地法の制定による出店規制緩和が、結果的に郊外の大型ショッピングセンターを増やし、かつて買い物の中心地であった商店街から客足が遠のく原因の一つとなったといわれている。
八十稲羽の商店街は、ゲーム中でもわかるほどにシャッターが目立つ。
空き家率の上昇は、ただ店がもうかっていないというだけでなく、治安悪化や火災などの外部不経済も引き起こしてしまう。
商店街の衰退とペルソナ4で起きた事件に直接関係はないが、空き家が増える、というのはさまざまな弊害を起こすことは間違いない。
これは嫌なリアリティである。

こうやって考えてみると、細かい設定も現実味を帯びているなと思う。
同社の他作品はぶっ飛んだ悲劇が多い(東京や世界が破滅したり、仲間と殺しあったり)のに対し、雰囲気が明るいと言われるペルソナ4だが、リアルさゆえの悲しさや怖さもあるのではないだろうか。
世界や人々が激しく狂っていく女神転生などの世界観と比べ、(終盤で現実世界に影響を及ぼすものの)平和な八十稲羽で起こる嫌な事件や、モブキャラの心無いことばなどの方が、時として恐怖を感じてしまう。
舞台設定に現実味があって、実感がわきやすいからだろう。

冒頭から徐々に話がそれてしまったが、「ジュネス」は本作のリアリティ演出において大きな役割を果たしていると今回は言いたかった。

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