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ペルソナ4に出てくる『ジュネス』の売場は良い売場なのだろうか?

リマスター版絶賛発売中、アトラスが手掛けたジュブナイルRPGの傑作『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』。
作中に何度も登場する「ジュネス」は食品から家電、衣料品も取り扱っているお店で、GMS(※1)のような業態だと思われる。
(※1 GMS:General Merchandise Store ゼネラルマーチャンダイズストアの略で、総合スーパーと訳す場合もある)

ストーリー上重要になるのは家電売場だが、シーンによっては食品売場なども確認できる。
ここでは、そのわずかなシーンから「ジュネス」の売場がチェーンストア理論上、どの程度正しいのか卸・小売業界に15年務めていた筆者が考えてみる。
そう、暇なのである。

堂島親子と買い物する番長、画面には青果売場とお菓子の平台、バックヤードの扉らしきものも

上の画像は、主人公が家族とジュネスの食品売場に買い物に来ているシーンだ。
番長こと主人公は画面中央奥で、従妹の菜々子と青果売場を眺めている。
叔父の堂島は中央手前でジャケットを肩にかけながら、お菓子が置かれた平台の前にいる。(ジャケット置いてくれば?)

青果売場はジュネスのように、メイン通路の壁伝いに配置されているのが普通だ。
このメイン通路壁伝いをチェーンストア理論では「磁石売場」と言い、ここには購買頻度の高い商品を並べることが鉄則である。購買頻度が高くお客さんが引き寄せられるから、「磁石」と呼ばれている。
スーパーなら青果の他、精肉、鮮魚売場でもよい。
ただ、肉や魚は食べない日もあるが、青果物はメインにはならなくても毎日のように買うので、購買頻度は最も高い。
したがって、ジュネスのように青果が通路壁沿いにあるのは理論上正しいと言える。

また、画面右上のように青果売場が角を曲がった先にも少し続いているのがいい。(一番上の女性客が眺めている箇所)
というのも、もし角の手前で売場が途切れていて、画像右上の女性の観ている売場がまったく別の商品だとしたら、青果を見に来たお客さんが必要性を感じず引き返し、そのままレジに直行してしまうかもしれないからだ。

赤い線がお客さんの導線

売場はキッチリ角で区切る必要はない。むしろ連続性を持たせて、奥へ奥へと歩いてもらうことが重要だ。
さらに、その右隣にバックヤードの扉らしきものがあるが、こういったものが突き当りにあったら最悪だ。
通路の突き当りはお客さんを呼び込む売場であるべきで、バックヤードのような後方設備は可能な限り目立たない場所にしたい。ただし、購買頻度が高い商品は、それだけ補充やメンテナンスの必要性も高いので、従業員の作業導線を加味するとあまり遠くにも置けないので、注意が必要。

一番右下のお菓子売場も、常に手前に商品を陳列する「前進立体陳列」がなされていて、商品がとりやすくとても良い。お菓子が陳列台の手前にまできているのがわかるだろうか。
陽介やクマがよくこの辺りで作業しているので、従業員教育もばっちり行き届いているのだろう。シフトで揉めるJKもいたけど。

右下の箱型のお菓子のように、同じ商品は縦に陳列することも基本。
人間の目は横についているので、商品は縦縞に陳列しないと他の商品が目に映りづらくなってしまうが、この配置なら菜々子も好きなお菓子を手に取れるだろう。(ナナコンも安心)
あえて欠点を上げるならば、売れ筋が何かはわからないがもう少し陳列量が欲しいところではある。

人間の目は横についている。上下は死角になりやすいので注意。

床のタイルがネイビーとアイボリーの組み合わせになっているのもポイントが高い。
ネイビー一色なら生鮮売場には暗すぎるし、アイボリーだけだと天井の照明を反射しすぎて眩しい。
売場の主役はあくまで商品だ。このあたりがあまり考慮されていない売場だと、床がキラキラ光を反射しすぎて、かえって商品が目立たなくなる場合がある。
見たところジュネスの青果ものの陳列棚は奥からライトが当たっており、上には反射用の鏡もある。
商品がお客さんの目にボリューム感や新鮮さを持って映り、購買意欲を掻き立てる工夫がなされている。

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以上、ジュネスはチェーンストア理論に基づいたレイアウト、売場構成がきちんと実現できていると考えられる。
ゲーム内のテレビCMに「ジュネスは毎日がお客様感謝デー」という文句があるが、これもEDLP(※2)というチェーンストア理論で最も重要な考えにがっちり合っている。理想があってそれを体現しようとしているのだ。
(※2 EDLP:EveryDay Low Priceの略。不定期な特売日だけでなく、お客さんがいつ来てもいいように、毎日同じ低価格で提供しようという考え)

作中には他にもテレビ売場、フードコート、エントランスが確認できるが、この辺りの解説はまたにしたい。(するのか?)
できれば隅々までジュネスを歩いてみたいので、アトラスさんにはリメイクに期待したいところ。ぜひとも無駄に作りこんでほしい。

『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』リマスターは各プラットフォームで好評発売中!(本記事の画像はすべてSteam版です)
PS4/Nintendo Switch/Xbox One、Xbox SeriesX|S(Xbox Game Pass対応)/Steam


参考文献
『店舗レイアウト(全訂版)』渥美俊一(実務教育出版)
『重点販売』桜井多恵子(実務教育出版)

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