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「この限りある世界で」を読んだ

「この限りある世界で」 小林由香 双葉社 を読んだ。

15歳の少女が同級生に刺殺された。加害者の少女は、ある新人文学賞の最終選考で落選し、哀しくなったので殺したと供述。さらに、その新人文学賞を受賞した作家が自殺。遺書には、新人賞を受賞して申し訳ないと書かれていた。その後、加害少女は犯行の動機を二転三転させ、少年院にやってきた篤志面接委員(少年院などの矯正施設に収容されている者の更生と社会復帰を手助けする民間ボランティア)に「本当の犯行動機を見つけてください」と告げる。『ジャッジメント』で鮮烈なデビューを果たした著者が描く、赦しと再生のミステリー。

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前半、自殺した作家の担当編集者と篤志面接委員の視点の話が交互にあり、なかなか本筋にいかないなぁ…という感じがした。
いや、だって、あらすじを読んだら「本当の犯行動機」を探す謎解きだと思うじゃん。いつ、少女と面談するんだよ…と思う私は浅はか。

「本当の犯行動機」の答え合わせのシーンからは、もうぐっと心を鷲掴み。その迫力たるや!
そして、その後のさらに明かされるからくり。
もう、そういうこと?!
丁寧な前半はそのためにあったのか。もう、先に言ってよ…
って、そんなネタばらしするわけないわな、作者さん。
そのからくりを読んでから面談風景を見返すと、納得の嵐。

さらに、ラスト。最後の最後。
泣いてまうわ。

いや、それにしても、青村信吾(新人賞を受賞した作家)。なんで死んじゃったんだよ…
青村信吾、とっても心優しいやつ。
故に、自分の受賞のせいで事件が起きたと自分を責めた結果の自殺。
まぁ、ネットの誹謗中傷が正常な判断を失くさせるんだろうけど。

やっぱり、「自分のせい」と思ってしまう人はネットを見てはいけないな。
どちらかというと、人は「○○のせい」としがち。無責任に「○○のせい」「○○が悪い」を叫ぶことが何を引き起こすか、それは自分の思いもよらないことを引き起こすかもしれないのだと、つきつけられる。

少女が自分のしたことを、本当に深く見つめたら、その犯行動機の稚拙さ故に、かなり辛い思いをすると思うけど。
でも、未来に明るさがある書き方に、救われる気がする。

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