さようなら!別れの時はしめやかに…

葬式に行くのは何年ぶりだろう。

少し前に、俺の職場の利用者の方が亡くなられた。
俺は顔を合わせたことはなかったけれど、職場の名物的なお爺さんだったらしく、スタッフ全員で葬儀に参列することになった。

会場は一階建てのちいさな会館だった。
人数にして100人弱はいたと思う。
家族とも縁が切れて、孤立しがちな西成で、ここまで多くの人が集まるのは珍しいと皆言っていた。
年配の方が多いのはもちろんだが、若い人たちもそれなりにいて、幅広い人たちに愛されていた方なのだなというのが伝わってくる。
演歌と阪神タイガースが大好きで、紙芝居の読み聞かせのボランティアもしていたらしい。
俺も一度お話ししてみたかった。

西成の葬儀の様子は少し変わっていて、参列者のほとんどが私服だ。
理由はなんとなくわかるでしょ。

そう、みんな服をそんなに持っていない。
ましてや喪服なんて、持ってる方が珍しい。

だからといって葬儀の雰囲気が崩れるわけではないし、むしろ街のみんなが駆けつけたような雰囲気があって、その人のつながりがなんとなく見えるような感じがした。

お坊さんもボランティアでやって来ている人で、仏壇もない、椅子はパイプ椅子の、質素な葬儀だ。

遺体との対面も終わって、いよいよ出棺だ。
生前好きだった演歌をバックに、皆で棺を担いで霊柩車……じゃなくてハイエースに載せる。

親族がいない者は、このまま火葬場でお骨になり、他のお骨と一緒にお寺で供養されるか、ふるさとの家という施設に納骨される。
この方はどこへ行くのだろう……。

日本一のスラムと言われるこの街にやって来て、親族もいないまま生涯を終える。
そう書くといかにも不幸な人のように思える。

けれど、たくさんの友人に囲まれて、野球の話に明け暮れ、大好きな演歌を流して送られていったこの方は、不幸でも孤独でもなかったと思う。

#日記  #大阪 #貧困 #西成 #ドヤ街 #釜ヶ崎 #あいりん

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