見出し画像

アコギ回顧録NEW ⑩「遠くなるヴィンテージ、高くなりすぎ!というジレンマ」「価格の壁、アコギの価格、中古のススメ」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

「遠くなるヴィンテージ、高くなりすぎ!というジレンマ」

2022年12月19日のデジマートから

 いかに世界的なインフレとはいえ、ちょっと信じられない価格上昇です。写真は12月19日のデジマートのものです。1年前はこれらの価格の半額程度であったように思います。「もう、どこまで行くねん!」という感じですね。全体的に上がっているのは確かなんですが、特にハカランダを使ったものはすごいです。あとギブソンのラウンドショルダー(J–45やサザンジャンボなど)、ハミングバードの初期のものは信じられない価格になってきています。おいそれと普段使いができないギターになってしまいました。それどころか、ものによっては外に持っていけない状況になっています。
 これほど短期間に価格が上昇したことは、過去に無かったと思います。世界的なインフレと同時に急激な円安の影響もあるとは思いますが、それにしても・・・。
 少し前まではヴィンテージの魅力を知らない人に、できるだけ伝えていこうと思っていました。普通の社会人ならちょっと頑張ったら買える価格だと思っていたし、そう言っていました。前々回の記事の中で書いた「自分の中のヴィンテージ」を例に言えば、マーチンのD–28なら「1969年までのサイド・バックがハカランダのもの」ということになります。最近では100万円越えが当たり前、モノによっては150万円越え!そうそう簡単に「絶対良いから買っておいた方が・・・。」とは言えません。違う観点から見れば、こんなに価格が上がるのだったら、「投資対象になるよ。」と言ってもおかしくないぐらいです。
 自分にとってのヴィンテージギターは、あくまでも弾くこと、使うことが目的です。が、もうそんなことが言えないフェーズに入ってしまった感じがします。
 これだけ価格が上がってしまったヴィンテージですが、一つだけお勧めできる理由があります。それは「本当に良いものを買っておけば、まず損をすることはない。」ということです。(状態の良くないものを「オリジナルですから。」とか「ヴィンテージって多かれ少なかれ、多少の弾きづらさはあるものです。」等々の説明に惑わされないように気をつけましょう。)価格変動は需要と供給によって決まって行くものですが、ヴィンテージの絶対数は減ることはあっても増えることはありません。時間が経てば経つほど、その価値は上がって行くと考えられます。自分の経験で言いますと、「弾いて楽しんで使っていたら、知らないうちに値段が上がっていた。」という事実があります。自分が何年もの長い間楽しませてもらったのだから、ある程度価格が下がっても仕方がないと思います。というか、それが当たり前でしょう。それが買った時よりも高くなってる!そんなことが何度もありました。もちろん初めからそうなると思って買ったわけではありません。結果的にそうなったということです。
 とは言え、簡単に人に勧めることができない価格になってしまったことは事実です。たとえ買うことができないとしても、そのサウンドを知ることができないのはちょっと寂しいな、なんとかできないかな?と思っています。「ヴィンテージのサウンドを知ったところで、どうせ買えないのだから意味がない!」と言われればそれまでなんですが・・・。

一枚目の写真の一番上に掲載されていたギターです。
4日後の12月23日にはもう商談中、びっくりです。

「価格の壁、アコギの価格、中古のススメ」
 基本的には、初心者ではない方(2本目、3本目のギターを買う時)のお話です。
 過去に友人(ギタ友)とも何度も話題にしていたことです。「ギターを買う時の価格の壁って人それぞれやと思うけど、一般的にはどれぐらいかな?」というところから始まり、人それぞれなのでよくわからないけど概ね10万円、30万円あたりかな?という結論で落ち着きました。(特に根拠はありません。それ以上だったら50万円、100万円。100万円以上。という感じでしょうか。とりあえずの目安みたいなものです。)
 今使っているギターがいくらだったのか?というところも大きなポイントになります。ほとんどの場合、対象となるのは今使っているギターよりも高いギター(グレードの高いギター)でしょう。

 1年前なら30万円出せばそこそこのギターが変えたのではないかと思います。(あくまでも私自身の感覚です。一般的にはけっこうな金額です。)それが最近では「ちょっと無理!」みたいな気持ちになっています。世界中のアコースティックギターの基本と言われるマーチンのD-28の新品も、ちょっと前なら30万円出せば何とかなったのでは?という価格でした。新品とまでは行かなくとも、ほとんどそれに近い中古ならゲットできたのではと。またギブソンのJ-45も、中古なら「20万円も出せば買えるだろう。」と思っていました。それが今ではほとんど不可能です。そんな価格のものがあったとしても、ほとんどが訳アリです。バーゲンでもない限り、そんな価格で手に入れることは難しくなりました。70年代のD-28でも、30万円の予算でじっくり探せばそこそこ良いものが買えたと思います。
 余談ですが、70年代のD-28やD-35、D-41などは、ここ10年ぐらいほとんど価格は変わっていなかったように思っていました。(ほんの少しずつは上がっていたようですが。)これは、見方を変えると価値がまったく下がっていないというとらえ方もできます。いつも書いていることですが、自分が新品ではなく中古の(ヴィンテージも含みます。)ギターを買うのも、人に勧めるのもこういったことが大きな理由の一つになっています。良いモノを買っておけば、たとえそれが高額だったとしても損をすることは少ないです。時と場合によっては「びっくりするほど高くなっていた。」ということもあります。自分が気にいたものを楽しんで使って(弾いて)、何年も経ったときに価値が上がっている。最高ですね。特にここ最近、そのことを強く感じています。

 誰かに「ギターを買おうと思っているんやけど?」という相談をされたときに最初に確認するのが「予算はいくらぐらい?」ということです。それに答える時にはいつも「30万円ぐらい出せるんやったら、かなりええギターが買えると思う。」と答えていました。その裏付けとなっていたのは(自分の心の中のイメージです。)70年代のD-28やD-35でした。ギブソンに関しては、70年代以降かなりクオリティが落ちたと言われていました。親しくしていたショップの店員さんの何人かに「ギブソンは買わない方が・・・。」とよく言われた覚えがあります。(当時もフェンダーもそう言われていました。最近は70年代のギブソンやフェンダーも、ヴィンテージの範疇に入れられてかなり高騰しているようです。個人的には、この時代のモノにはまったく興味がありませんが。)
 70年代のD-28を例にして考えると、相場は常に68~69年のハカランダものの大体半額程度だったように思います。それが最近は3分の1ぐらいになって来ています。アメリカの相場を考えると、おそらく70年代のDー28もそう遠くない将来、50~70万円ぐらいになってしまうのでは?と思っています。

 予算が10万円でも、国内のメーカーものならオール単板のものが買えます。中古も含めると相当選択肢が増えると思います。このあたりの価格帯のギターも中古なら、価格は上がらないとしても下がることはほぼないと言ってもよいでしょう。

 予算がいくらであれ良いギターを手に入れるということは、買える範囲の中でのベストを探すということです。以前なら、「これだっ!」というものが見つかるまでじっくり時間をかけて探しましょう。と言えましたが、最近ヴィンテージに関しては「そんなに時間をかけていたら、買えるものも買えなくなってしまうかも?」という恐れが出てきました。ホンマに難儀な世の中になってきたものです。この際「価格の壁」は取っ払えるものなら取っ払った方がいいのかも?です。

D-28 1975 

 アコギ回顧録、番外編、NEWと合わせて、今回で78本目の投稿です。昨年の6月15日にスタートして1年半余り、これで一区切りにしようと思っています。投稿するたびに、自身の文章力・語彙力の貧しさを痛感しつつの日々でした。お読みいただいた皆様、本当にありがとうございます。次回からは‟アコギ庵”で、自分にできること、アコギのあれやこれやを考えながら進めて行く予定です。
 今後は‟アコギ庵”を、よろしくお願いいたします。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?